VISUAL BULLETS

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

パワーインフレのない男

昼の記事を書いてから、バットマンと同様にスパイダーマンも J.マイケル・ストラジンスキーによる連載のあたりからパワーインフレが始まり、ダン・スロット時代になるといよいよ”スパイダーバース”なる概念が導入され「何でもあり」になったなあ……などと考えていたんですが。

冷静になって考えてみるとマーベルはスパイダーマン以外も割とパワーインフレ起こしているヤツが多いような気がしないでもないというか。

ヴェノム然り X-MEN 然り、どいつもこいつもちょっと汗かけば世界をひっくり返せるくらいのレベルに至った雰囲気があります。


じゃあ、逆に昔からずっと変わらない奴っていたっけ?

……。

……そういや恐れを知らない男はパワーインフレも知らんな。

ということで”マン・ウィズアウト・フィアー”ことデアデビルさん。

マーベル・ユニバースから常に一歩身を退いてヘルズキッチンに引きこもるスタイルは常に変わらず。

並行世界を股にかけることもなければヴィランもずっとチンピラ忍者が中心。

MARVEL KNIGHTS 時にアートは見栄えが良くなったものの、やってることは相変わらず。

世界観広げようとする試みで定着したのって、よくてフランク・ミラーが忍者導入したことくらいじゃないですかね。

下手な要素を追加するよりマットが逮捕されたり弁護士資格失ったりこっぴどくやられたり正体暴露されたりボコられたり生活ぶっ壊されたり死にかけたり……と痛い目みることの方が多い気がします。

何度も実写化されて高い人気を誇るにも関わらず、ここまで変わらぬ味を貫き続けるキャラクターというのも珍しいかと。

異論は認める。

BC のトッド・マクファーレン インタビュー

そういやバットマンといえば今度グレッグ・カプロらとともに BATMAN/SPAWN のワンショットを手掛けるトッド・マクファーレンが最近 BLEEDING COOL のインタビューを受けたそうで、その記事が掲載されています。

以下の2リンクは BLEEDING COOL からの記事。

bleedingcool.com
bleedingcool.com

インタビューはマクファーレンが D23 から帰ってきてしばらく経った頃に行われたみたいなんですが、D23 についてはあんまどういうイベントなんだかよく知らないで出向いたみたいで。

やっぱりみんな「なんで2022年なのに D"23" なんだ?」って思いますよね……。


インタビューの中心は当然 BATMAN/SPAWN のことが中心となり、カプロに「どんなイラストが描きたいか」と尋ねるアーティスト重視の創作メソッドの話や DC 側から金銭的な交渉で圧力をかけられたとかいう生々しい話まで盛り沢山なので気になる人は読んでみると良いと思います。

相変わらずの歯に衣着せぬ物言いが痛快です。

ちなみにマクファーレンといえばスパイダーマンということで BATMAN/SPAWN がありうるのであれば SPIDER-MAN/SPAWN (+VENOM) もいつかありうるのではないかと尋ねられたところ「その場合自分が絵を描かなくなり、時間的余裕がないので(少なくとも今は)難しい」だそう。

少なくともスポーンが普通に連載しているうちは無理ですね……。

本インタビューがお気に召した方は youtube とかに上げられているマクファーレンのインタビュー動画とかもおすすめです。

モリソンとバットマン

昨日のぐだぐだから今日のこれで恐縮なんですが、バットマンとグラント・モリソンの話が出たからついでに。

以前どこかで「バットマンのパワーインフレはモリソンが引き起こした」みたいな言説を目にしたことがありまして。

詳しい説明を読まずにスルーして、後から見直そうと思ったら既にどこで見たのかわからなくなってしまって、以来ずっと自分の中でもやもやした議題となっています。


確かにある時点までのバットマンって他のヒーローから一目置かれている存在ではあるものの、他の特殊能力を持った超人たちよりは活躍が地味というかあくまでストリートヴィジランテなんですよね。

モリソンが JLA を手掛ける直前の JUSTICE LEAGUE INTERNATIONAL とか読んでも積極的に戦闘に参加するよりは参謀役か裏方的な役割が主だし。

DARK KNIGHT RETURNS とかでは確かにスーパーマンとタイマン張れる存在として描かれているものの、そのメソッドはだまし討ちに戦車からの狙撃にとかなり泥臭く乱暴。

使ってるガジェットとかも割と常識的なものが多く(一部例外あり)、 SF に腰まで浸かった今とはかなり様相が異なる印象があります。

今みたいな忍者性(?)を著しく帯びてワンダーウーマンやフラッシュと比べても遜色ない戦闘力を帯びたのがモリソンの JLA からだと言われたらそんな気がしなくもない。


……とぐだぐだ論じたところで自分はそこまでバットマンに詳しいわけでもないので未だに真偽はよくわからないのというのが正直なところです。

なんならモリソンより続く JLA の連載で TOWER OF BABEL やったマーク・ウェイドも容疑者だし。


わかったから何?というわけじゃないんですが、ずっと気になっている話題です。

モリソンのバットマン

FINAL CRISIS をわかりにくくしている要素の1つとして、当時モリソンが並行して連載していたバットマン・サーガが挙げられます。

FC の表紙にも描かれているのでネタバレも何もないと思って書くんですが、御存知の通りブルース・ウェイン=バットマンは FINAL CRISIS でダークサイドのオメガビームを食らって死亡……というかお骨になってしまうんですが、このあたり BATMAN R.I.P. との絡み方が一部面倒くさくなってて、 FINAL CRISIS の単行本ではこのへん話の筋が通るように( SUPERMAN BEYOND 含め)まとめてくれてるんですが当時リアルタイムの連載で追っていた人はかなりきつかったんじゃなかったかと思います。


そもそもモリソンのバットマン・サーガは彼が ALL-STAR SUPERMAN でやったことをバットマンにも適用しようという試みだと思われ、その最大の目的は「なんでもあり」状態で現在の姿から大きく乖離していたシルバーエイジの活躍を正史に取り込み直すことにありました。

結果から言えば”バルバトス”という舞台装置を導入することで( FC なども活用しつつ)”ズー=エン=アー”から世界各地のバットマン、終いには日本の死神男ことロード・デス・マンみたいなのまで正史に組み込むことができたものの、他方でバットマンがややコズミックな存在になってしまったところも。

ただの人間のはずなのに超人も真っ青な大活躍をするような、別の意味で「なんでもあり」なキャラクターになってしまったようなところも否めなかったりします。


……この記事、思いつきであんま考えないで書き始めたんですが。

案の定なんか文章まとまらんな。

モリソンのバットマン・サーガについては、頭上の本棚から冒頭だけ読んで放置したままの副読本が睨んでくるので本編とそれ読んでそのうちまた語り直したいと思います。

FINAL CRISIS

そういえばニューゴッズの話で思い出したんですが、この間 Reddit か SNS で「これまで読んだ中で一番面白くなかった作品は?」というスレを見かけまして。

そこに FINAL CRISIS が挙げられてて割とショックだったというか。

いや、個人の好みなんで別に文句があるわけではなく、むしろそうかそういう見方もあるのかと目からウロコだったんですが、それはそうとショックなことに変わりはないという。

確かにところどころメタ的だったりハイ・コンセプトだったりなところがあってわかりにくいし、 SEVEN SOLDIERS とか JLA みたいなモリスンの過去作を読んでないととっつきにくいところもあるし、面白くないと思う意見もわかるというか書きながら「あれこれ面白くないと思われるのも当然じゃないか」みたいな気分にさえなるんですが。

一方で刺さる人にはとことん刺さります。

私は好きですよ、あれ。

メタ的なところも含めてかなり好きだし、なんなら近年のメガクロスオーバーの中では最高の作品だと思ってるくらいです。

アートもダグ・マンキの魅力に気付かされたのはこの作品があったからだと思います。

スーパーヒーロー作品が全部全部ああいう風になってほしいとは思わないものの、グラント・モリスンによるスーパーヒーローのメガクロスオーバー作品としては期待通りの期待以上だったと思います。

つまり何が言いたいかっていうともっと色んな人に読んでほしいというのと、書いてる内に SEVEN SOLDIERS 読みたくなってきたぞということ、そして FINAL CRISIS で描かれたトーキー・トーニーの勇姿はコミック史の歴史に残る名シーンとして認定して良いということです。


......待て、14年前の作品は最早「近年」とは言わないな?


(追記)
記事を投稿後、本作に携わったアーティストのカルロス・パチェコが自身の SNS アカウントで筋萎縮性側索硬化症( ALS )の診断を受けたと公表したことを知りました。

ご養生下さい。