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ヘルボーイを深く読むための解説 作品編

 だいぶ前からやりたいやりたいと言い続けながらずっと放置し続けてきた「ヘルボーイを深く読むための解説」シリーズ第2弾です。
 前回の記事から1年以上音沙汰ないからやらないんじゃないかと思っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか?正直、自分も「多分やんねえな」と思っていました!

 前回はヘルボーイや B.P.R.D. を取り巻く世界の成り立ちを解説しましたが、それを踏まえて今回は HELLBOY シリーズ& B.P.R.D. シリーズ を中心に形成される作品群を私見を交えながら紹介してみたいと思います。
 なお、私自身未読の作品も少なからずあります(主に WITCHFINDER と LOBSTER JOHNSON 界隈)。全作網羅してから記事を書けば良かったのですが、それだといつまで経っても書けなさそうだし、未だに作品は刊行され続けている以上不完全になるのは避けられないし・・・。そんなわけで紹介がいやにあっさりめだと思ったら察してご容赦頂ければ幸いです。

 あと、一部クロスオーバー物とか小説とかは省きます。悪しからず。

 また、サーガが終了して1年以上が経過しており、また作品同士の繋がりを語る上でどうしても言及する必要がある場合もあるため、ネタバレを多く含むので注意して以下お読みください。

そもそも『ミニョーラバース』とは?


Hellboy: 25 Years of Covers

 それまでマーベルや DC で主にアーティストとして活躍してきたマイク・ミニョーラ。彼がダークホースで94年に手がけたオリジナル作品 HELLBOY: SEED OF DESTRUCTION に始まり、続くシリーズやスピンオフなどを通して描かれた世界観のことをファン達の間では彼の名を冠して『ミニョーラバース』と呼んでます。

 いわゆるメインシナリオは次の項目で紹介する HELLBOY & HELLBOY IN HELL 、 それに B.P.R.D. 3サイクルで描かれる部分で、時系列で言えば94年の HELLBOY: SEED OF DESTRUCTION から2019年に終了した B.P.R.D. THE DEVIL YOU KNOW: RAGNA ROK まで。既にひとまず完結しており、現在は補完的内容のスピンオフが主に刊行されています。

 大きな特徴としては様々なオカルト現象が起こったりモンスターが跋扈していたりといった怪奇色の強い世界で、ジャンル的にはホラー、あるいはダークファンタジーに分類されます。

 詳しい世界観に関しては以前書いたこちらの記事を参照して頂ければと思います。
www.visbul.com

 必ずしもメインライターとして脚本を書いているわけではないものの、基本全ての作品に関してミニョーラはサブライターとして携わっており、話の方向性やクリーチャーのデザインといった部分を監修しています(スピンオフは基本的にサブとしてクレジットされている場合が多い)。

 一応注釈を付けておくと正式な名称ではなく公には『ヘルボーイ・ユニバース』と呼ばれることもあります。ウィキペディアなんかではこちらの名称で記事ができていますね。
 本記事では以下「ミニョーラバース」で統一したいと思います。

HELLBOY シリーズと B.P.R.D. シリーズ

HELLBOY & HELLBOY IN HELL シリーズ


Hellboy Omnibus Volume 1: Seed of Destruction

 ご存知、サーガの中核をなすシリーズ。  
 世界の成り立ちや地獄の構造など、ミニョーラバースを理解する上で欠かせない基礎的知識は大体ここで語られています。言うまでもなく必読。

 個人的にはヘルボーイが B.P.R.D. を離れる CONQUERER WORM 編までを第1部、イングランドでニムエと戦い死亡する THE STORM AND THE FURY 編までが第2部、そして地獄を徘徊し安住の地を見つける HELLBOY IN HELL: THE DEATH CARD 編までが第3部といった感覚です。

 基本的にライティングは全てミニョーラが担当しており( ただし一部作品については他のライターと組むことも )、アートも第1部と第3部はおよそ彼が手がけています。第2部のアートのみ本筋をダンカン・フェグレードが、その他のサイドストーリーをリチャード・コーベンはじめ様々なゲストアーティストが手がけています。


Hellboy: Into the Silent Sea

 大部分は現在複数の単行本をまとめたオムニバス・エディションとして刊行されているものの、 リーフを経ずに最初から単行本の形で刊行した THE MIDNIGHT CIRCUS INTO THE SILENT SEA 、 それにヘルボーイのメキシコでの活躍を集めた HELLBOY IN MEXICO はどのオムニバスにも含まれていません。
 どれもサイドストーリー的な話なので後回しにして構わないものの、クオリティはお墨付きなので是非読んでほしい作品達です。

 また、様々なクリエイターがヘルボーイ達を題材にした作品を集めたHELLBOY: WIERD TALES という作品集もありますがこちらもメインシナリオとはやや距離を置いています。

B.P.R.D. シリーズ


B.P.R.D. Plague of Frogs Volume 1 (B.P.R.D.: Plague of Frogs) (English Edition)

  HELLBOY シリーズと共にミニョーラバースの中核をなすのがこの B.P.R.D. シリーズとなります。

 ヘルボーイが CONQUERER WORM 編で B.P.R.D. を離れた後、残されたチームの面々や新たに加わったメンバーの活躍を描く本シリーズ。
 定義上スピンオフというカテゴリではあるものの、ヘルボーイが自らの出自を探る放浪をしている間、彼の預かり知らぬところで起こっている世界の異変がこちらで描かれており、単純なサブタイトルとして片付けることはできません。最終的に HELLBOY IN HELL で起こったことも B.P.R.D. に収束(スピンオン?)することからも、この2つは互いに連動したいわばミニョーラバースの両輪といえるでしょう。

  B.P.R.D. シリーズは大きく3つの”サイクル”に分かれており、全米各地に出現するカエル型の怪物( HELLBOY: SEED OF DESTRUCTION に登場した奴ら)に立ち向かう PLAGUE OF FROGS 編、太古の異形オグドゥル・ヘムの復活により世界が混沌としていく中、新たに国際機関となった B.P.R.D. が過酷な戦いに身を投じる HELL ON EARTH 編、そして崩壊した世界で人類の存亡を掛け B.P.R.D. が最後の戦いを挑む THE DEVIL YOU KNOW 編の三部編成になっています。


B.P.R.D. The Devil You Know Omnibus

 特に第3部の THE DEVIL YOU KNOW 編では HELLBOY IN HELL で地獄に堕ちたヘルボーイが現世に帰還し、死後の世界である地獄さえ滅ぼしてしまった彼の真の”終わり”が描かれるという意味でそれまで描かれてきたミニョーラバース作品群の集大成と位置づけることができます。

 第1部、第2部のメインライターであるジョン・アルクーディをはじめ、現在は映像業界へ進出しギレルモ・デル・トロ監督と数多くの作品を手がけているガイ・デーヴィスなどトップクラスのクリエイターが制作陣として参加しており、幻想的な雰囲気の漂う HELLBOY シリーズとは違う、派手なモンスターアクションが展開されます。
 その一方でミニョーラがサブライターとしてしっかり作品を監修しており、また HELLBOY シリーズと同じデイヴ・スチュアートがカラーを担当しているため、趣は異なるもそれほどシリーズ間の隔たりを感じさせない作りとなっています。

 はっきりとした区別はできないものの、個人的にはヘルボーイのパートでは世界の成り立ちや地獄の誕生といった古代に関する情報が、 B.P.R.D. のパートでは近代から現在までの世界を取り巻く状況に関する情報が多いように感じます。

 こちらも大部分は複数の単行本をまとめたオムニバス・エディションとしてまとめられているものの、唯一細々したエピソードを集めた BEING HUMAN 編のみどれにも収録されていないようです。


その他のスピンオフ

LOBSTER JOHNSON


Lobster Johnson Volume 1: The Iron Prometheus

 1930年代にニューヨークで活躍していた謎のヴィジランテ、ロブスター・ジョンソン(単に”ザ・ロブスター”とも)。世間一般には都市伝説かパルプヒーローと思われていた彼が様々な怪事件に立ち向かう姿を描きます。

 ロブスター・ジョンソン自身はメインシナリオ開始前に死亡(?)しており、その経緯などもさっくり語られているので必読というほどではないにせよ、後に SLEDGEHAMMER 44 B.P.R.D. HELL ON EARTH で登場する戦闘スーツ「プロジェクト・エピメテウス」のプロトタイプ的なものが登場するなど、キーアイテムを扱った事件もあるので読んでおいて損はないかもしれません。

B.P.R.D. 1946-48


B.P.R.D.: 1946-1948 (B.p.r.d. 1946-1948)

  B.P.R.D. シリーズメインシナリオの合間合間に刊行されたのを後にまとめたこちらのシリーズ。ラグナロク計画を阻止した後、トレヴァー・ブルーム教授の指揮下で本格的に発足した B.P.R.D. の初期の活躍を年ごとに描きます。まだ任務に参加することはありませんが、少年時代のヘルボーイも登場。

 一見するとラグナロク計画とあまり関係がない事件の捜査が多いものの、どのような変遷を辿って B.P.R.D. が現在のような組織に発展してきたかや、ヘルボーイが何故頭の角を失うに至ったのかといった経緯が描かれていたり、また B.P.R.D. の第2部以降でキーパーソンとなる少女ヴァルヴァラが登場するなどメインシナリオに多かれ少なかれ関わってくる要素がちらほら出てきます。
 本シリーズ自体が後述の HELLBOY AND THE B.P.R.D. を始めとした別のスピンオフ群を生み出しているという意味でも、スピンオフの中ではとりわけ読んでおきたいシリーズです。

SIR EDWARD GREY, WITCHFINDER


Witchfinder Omnibus Volume 1 (Sir Edward Grey Witchfinder)

 19世紀にヴィクトリア女王の密命を受け様々な超常現象関連の事件に立ち向かったエドワード・グレイ卿 HELLBOY IN HELL ではヘルボーイを導く地獄の案内役も務めた彼の生前の活躍を描いた作品です。
 メインシナリオとはだいぶ時間の隔たりがあるため、それほど物語に関わってはこないものの、グレイ卿自身がここぞという場面で登場する重要人物なので彼のことを知る上では読んでおくのもありかもしれません。

SLEDGEHAMMER 44


Sledgehammer 44 Volume 1 (English Edition)

 第二次大戦時に米軍が”ヴリル”(かつてアナムがオグドゥル・ジャハドを作り出すのに使用した”火”と同じもの)というエネルギーを動力にして動く戦闘スーツを極秘裏に開発した「プロジェクト・エピメテウス」
 後に「スレッジハンマー」と呼ばれる1人の青年がこれを装着することになった経緯を描く前半と、彼が長い沈黙を破りナチスと手を組むブラックフレイムと死闘を繰り広げる後半の2つのミニシリーズから構成された作品。

 前半部分については、第二次世界大戦を舞台にした本作は往年の EC やマーベルで活躍した名アーティスト、ジョン・セヴリンとタッグを組んだ企画だったものの、2012年に彼が他界したことから新たにジェイソン・ラトゥを迎えて完成させたという経緯があります。

 本作に登場するエピメテウス・スーツは後に B.P.R.D. HELL ON EARTH のクライマックスにおける最重要アイテムとなるため、あらすじだけでも目を通しておきたい1作です。

B.P.R.D. VAMPIRE


B.P.R.D.: Vampire (Second Edition)

  DAYTRIPPER UMBRELLA ACADEMY などの作品で知られるクリエイター兄弟、ファビオ・ムーンガブリエル・バー
彼らをゲストクリエイターとして招いたミニョーラが B.P.R.D. 1946-48 直後を舞台に B.P.R.D. と吸血鬼との戦いを描いた作品。

 数冊かけて1つの物語を、という触れ込みではあるものの、2020年現在のところ刊行されているのはこの1冊のみ。クリエイター陣が揃いも揃って著名になってしまってスケジュールの都合がつかないのかもしれないものの、続編が待ち望まれます。

ABE SAPIEN: DARK AND TERRIBLE


Abe Sapien: Dark and Terrible Volume 1 (English Edition)

  B.P.R.D. HELL ON EARTH の途中で撃たれ、生死の境を彷徨った水棲人エイブ・サピエン。本シリーズでは目を覚ました彼が B.P.R.D. を脱走し、放浪する様子を描きます。

 ミニョーラバースではヘルボーイのような存在が普通に社会に溶け込んでおり、良くも悪くも”異形の苦悩”みたいのが描かれない傾向にあるのですが、本シリーズではエイブが元人間だったということもあってか、そういった面にも焦点が置いてあります。またメインシナリオではあまり描かれない「崩壊する日常」とでもいうべき市井の暮らしなども描かれていたりして、他シリーズとは少々切り口が異なる作りとなっています。

 正直、本シリーズは「そこまで重要な要素ないかなー」と思ってたんですが、記事を書くにあたって読み直してると B.P.R.D. 第3部の THE DEVIL YOU KNOW で人類救済の鍵となる少女マギーもここで初登場したり、ヘルボーイとニムエの戦いで崩壊した後、精霊達の聖域と化したイングランドの様子なんかもちょい描写されてたりであながち軽く扱えないなと考えを改めさせられました。
 忙しないメインシナリオ内ではエイブの失踪と復帰がかなり唐突な感じで片付けられているので、こちらもサーガをきちんと理解しておくなら是非とも読んでおきたいところです。

 あと単純に B.P.R.D. の第1部で主役ばりに大活躍したエイブが撃たれて以降ベンチ入りしていたので、彼の活躍がたっぷり見られるのが嬉しい。

 メインシナリオと同時進行なのは DARK AND TERRIBLE 編ですが、それ以外の細々したエピソードもまとめて THE DROWNING AND OTHER STORIES というオムニバスに収録されています。

HELLBOY AND THE B.P.R.D.


Hellboy and the B.P.R.D: 1952 (Hellboy and the B.P.R.D.)

  B.P.R.D. 1946-48 の続編的位置づけで、50年代を舞台に青年並(既に現在とほぼ同じ姿)にまで成長したヘルボーイが B.P.R.D. の面々と様々な事件に立ち向かっていく様子が描かれます。
 1946-48 同様、本編との事件的な繋がりは比較的緩いものの、まだ単独で任務を遂行するほど手慣れていないルーキー時代のヘルボーイの活躍はやや新鮮。話が進んでスケールが大きくなるにつれ重厚になっていく本編と異なり、サクサクと読み進められるのも好印象です。

 本シリーズはサーガ本編が終了した後も巻を重ねており、今後もう少し続いていくのかもしれません。

FRANKENSTEIN UNDERGROUND


Frankenstein Underground

 HELLBOY: HOUSE OF THE LIVING DEAD (単行本 HELLBOY IN MEXICO に収録)にてヘルボーイと一線交えたフランケンシュタインの怪物の”その後”を描いた作品。
 世間の目を逃れる内に地底世界へやって来てしまった彼が、そこで”最初の人類”によって築かれた都に辿り着くという内容。

 メインシナリオなどでは断片的かつぼんやりと語られがちだった世界の成り立ちハイパーボリア文明、それにアナムの火”ヴリル”のことなど、ミニョーラバースの世界観に関する情報が比較的まとまった形で語られます。他作と繋がっている要素も多く、フランケンシュタイン自身もメインシナリオ終盤にちょろっと登場します。

 読むタイミングとしては他のスピンオフをある程度網羅した上で、 B.P.R.D. 第3部 THE DEVIL YOU KNOW を読む前あたりで読んでおくと良いかも。
 
 最近新たに本作の前日譚となる新作 FRANKENSTEIN UNDONE の刊行が発表されました。

RISE OF THE BLACK FLAME


Rise of the Black Flame (English Edition)

 B.P.R.D. シリーズ全編に渡り登場するヴィラン、ブラックフレイムのオリジンを描いたスピンオフ。1923年の英国領ビルマを舞台に、相次ぐ少女の行方不明事件を捜査する一行が密林の奥に潜む邪教に迫るという冒険活劇的要素も含む作品です。
 
 ブラックフレイムとはいうものの本作に登場するのはメインシナリオに登場する人物とは別人です。先に述べた SLEDGEHAMMER 44 や後述の RASPUTIN: THE VOICE OF THE DRAGON などに関連する要素があるのでスピンオフのスピンオフみたいな位置づけかもしれません。

THE VISITOR: HOW & WHY HE STAYED


The Visitor: How and Why He Stayed

 ヘルボーイに宇宙人が登場することを覚えている人ってどれほどいますかね?

  HELLBOY シリーズの1作目 SEED OF DESTRUCTION に突拍子もなく描写された連中の1人にして、5作目の CONQUERER WORM にてヘルボーイに手を貸し最期は撃たれて死亡してしまった彼のバックグラウンドを15年以上の時を経て解き明かすのがこのスピンオフ。

 ラグナロク計画によりヘルボーイが召喚されることを知った銀河のとある種族は、彼を危険視し災厄を未然に防ぐべく1人の暗殺者を地球へ送り込む。だが召喚されたのが子供だと知った暗殺者は命令を拒否、ヘルボーイが本当に抹殺スべき存在か見極めるべく地球にとどまりその成長を見守ることにする。やがて任務を遂行する中で1人の地球人女性と親しくなった彼は・・・という SF ロマンスの要素も含む作品で、他タイトルと毛色こそ異なるものの、個人的に結構気に入ってる作品です。
(記憶を頼りにあらすじ書いてたら結構間違ってたので読み直した上で修正しました。ごめんなさい)

RASPUTIN: THE VOICE OF THE DRAGON


Rasputin: The Voice of the Dragon

 ラスプーチンの名を冠したタイトルではあるものの、ぶっちゃけ黒幕である本人はあんま活躍しません。
 暗躍する彼の陰謀に立ち向かう若きトレヴァー・ブルームが主人公で、オックスフォード大学を卒業したばかりの彼がオカルト任務に足を踏み込んでいくこととなったきっかけとなる事件を描いています。
 
 情報的にも既に他タイトルで出揃っているものが多く、他作との繋がりも精々 RISE OF THE BLACK FLAME に登場したキャラクターが再登板する程度です。正直「なんで今さらラスプーチン・・・?」と刊行当時は思いましたが、なんというか今では納得です(含みをもたせた言い方)。

KOSHCHEI THE DEATHLESS


Koshchei the Deathless (English Edition)

HELLBOY: DARKNESS CALLS にてヘルボーイを散々苦しめたバーバ・ヤーガの刺客にして、ロシアの伝承にその名を轟かせる不死身の戦士コシチェイ。彼がいかに不死身となり、いかにしてバーバ・ヤーガに心臓を盗まれてしまったかの顛末を描く作品。
 
 メインシナリオを読み解くのに必要な新情報の類はなく完全なサイドストーリーという扱いですが、スピンオフでは珍しくミニョーラがメインライターとして携わっており、彼らしい寓話めいた物語です。

  HELLBOY IN HELL の終わりで安息の地を見つけたヘルボーイに対し、同じくそこに辿り着いたコシチェイが自分の過去話を聞かせるという体裁を取っており、命のやり取りをした両者の軽口が小気味よい笑いを誘います。

CRIMSON LOTUS


Crimson Lotus (English Edition)

 ロブスター・ジョンソンと敵対するクリムゾン・ロータスというヴィランのオリジンを描いた物語。幼い頃日露戦争に巻き込まれた彼女が成長して復讐を画策する中、2人のスパイが彼女の計画を阻止しようと奔走します。
 
 クリムゾン・ロータスはその本名をユミコ・ダイミョーといい、 B.P.R.D. シリーズのメインキャストの1人であるベン・ダイミョーの祖母にあたります。 B.P.R.D. シリーズでは語られないままに終わった彼女がどのような人物だったか気になる方は是非。


非ミニョーラバース作品

 以下の作品は一応ミニョーラヴァースと異なる世界観という位置づけですが、後述のように意匠などで一部共通する要素があることや、あるいは後に組み込まれる可能性も考慮してここでもさっくりと紹介しておきます。

BALTIMORE


Baltimore Omnibus Volume 1 (English Edition)

 ミニョーラがライターのクリストファー・ゴールデンと共に手がけるシリーズ。元々は挿絵付きの小説として始まったシリーズで、第一次世界大戦の戦場で吸血鬼と遭遇してしまったことから数奇な運命に巻き込まれるヘンリー・バルチモア卿の足取りを辿ります。

JOE GOLEM


Joe Golem: Occult Detective Volume 1--The Rat Catcher and the Sunken Dead (English Edition)

 上の BALTIMORE と世界観を同じくするシリーズでこれまた同じようにクリストファー・ゴールデンと共に手がけ、小説という形でスタートした作品です。様々なオカルト事件に巻き込まれる私立探偵ジョー・ゴーレムの活躍を描きます。

THE AMAZING SCREW-ON HEAD and Other Curious Objects


The Amazing Screw-On Head and Other Curious Objects

 ネジ式の頭部を持つ機械人間が大統領からの密命で怪人の陰謀を食い止めようとする冒険活劇の表題作をはじめ、クリーチャーやらゴシック建造物やらミニョーラの好きな要素をふんだんに詰め込んだ短編を5作収録した1冊。
 ミニョーラバースに含まれてはいないものの、収録作 THE MAGICIAN AND THE SNAKE に登場する蛇を手にした魔法使いの像は B.P.R.D. THE DEVIL YOU KNOW とかにちょろっと描かれています。

Mr. HIGGINS COMES HOME


Mr. Higgins Comes Home

 吸血鬼ハンターのコンビ、メインハンター教授ノックス氏がバルト海に位置する修道院を舞台に活躍するゴシックホラーアドベンチャー。
 ミニョーラが独特の絵柄で高い評価を得ているアーティストのウォーウィック・ジョンソン・キャドウェルとタッグを組んだ作品です。

OUR ENCOUNTERS WITH EVIL


Our Encounters with Evil: Adventures of Professor J.T. Meinhardt and His Assistant Mr. Knox

 上記 Mr. HIGGINS COMES HOME の続編。メインハンター教授とノックス氏が本作では吸血鬼のみならず狼男など闇に蠢く様々なクリーチャーに立ち向かいます。

読む順番

 究極的にはスピンオフはスピンオフだし、各々細かいことを気にしなければ単体として十分楽しめるので「読む順番など気にせず読む」のが正しいのですが、一部メインシナリオと同時進行で展開するものについてはやや扱いが難しかったり、またメインシナリオではだいぶ説明を省いているためスピンオフを読んでいるのと読んでいないのとで理解度に差が出る場合もあったりするので特に言及しておいた方が良いかなというところだけ以下記載します。


 まず同時展開するメインシナリオ+ α の扱い。大体の目安ですが

 ① HELLBOY: SEED OF DESTRUCTION ~ CONQUERER WORM
 ↓
 ② HELLBOY: STRANGE PLACES ~ THE STORM AND THE FURYB.P.R.D. PLAGUE OF FROGS が同時進行
 ↓
 ③ HELLBOY IN HELL B.P.R.D. HELL ON EARTHが同時進行
 +
 ④ B.P.R.D. HELL ON EARTH: A COLD DAY IN HELL ~ B.P.R.D. HELL ON EARTH: COMETH THE HOUR ABE SAPIEN: DARK AND TERRIBLE が同時進行
 ↓
 ⑤ B.P.R.D. : THE DEVIL YOU KNOW
 
 若干のずれはあるものの、大体こんな具合です。

 
 あと作品を楽しむ上でいくつか挙げるとするならば、あくまで私見ですが・・・

B.P.R.D. 1946-48 はヴァルヴァラ登場の都合上 B.P.R.D. HELL ON EARTH 開始前までに読んでおく。

KOSHCHEI THE DEATHLESS HELLBOY IN HELL を読み終えてから。

SLEDGEHAMMER 44 B.P.R.D. : HELL ON EARTH: MODERN PROMETHEUS に辿り着く前に読んでおく


 なお、”その他のスピンオフ”の項目は刊行開始順に作品を記載してますが、時系列順に並べるとだいたい以下のようになります。

SIR EDWARD GREY, WITCHFINDER

RISE OF THE BLACK FLAME

CRIMSON LOTUS

LOBSTER JOHNSON

RASPUTIN: THE VOICE OF THE DRAGON

SLEDGEHAMMER 44

B.P.R.D. 1946-48

B.P.R.D. VAMPIRE

HELLBOY AND THE B.P.R.D.

THE VISITOR: HOW & WHY HE STAYED

FRANKENSTEIN UNDERGROUND

ABE SAPIEN

KOSHCHEI THE DEATHLESS



 
 言うまでもなく、 HELLBOY シリーズを始めミニョーラバース作品はどれもクオリティが高い作品ばかりです。
 
 しかし、ラグナロク計画に端を発するヘルボーイの物語は彼の足取りだけを辿っていては全体像が掴めないところもあります。ヘルボーイが気に入った読者には是非とも他のスピンオフ、 B.P.R.D. シリーズだけでも手を出してみてほしいところ。
 ミニョーラバース作品は数も多く網羅するのが中々大変ですが、ダークホースから刊行されている作品は比較的良心的な価格帯(特に電子)なのでお求めやすいかと思います。

 適当に手を取った作品を読んでそこを足がかりにするのもよし、それでは少々心もとないという方には本記事がなんらかの指標になれば幸いです。

 以上、「ヘルボーイを深く読むための解説」作品編でした!