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PUNISHER: SOVIET (MARVEL)


Punisher: Soviet (Punisher: Soviet (2019-)) (English Edition)

 舌の根も乾かぬうちに連載終了した作品を取り上げる当ブログでごめんなさい。
 でもガース・エニスパニッシャーは語らずにはいられない。
 ましてアートが NEONOMICON ジェイセン・バロウズ。取り上げないわけにはいかないのです。

 #6までのミニシリーズなのでご容赦を・・・。



 とある冬、ニューヨークで勢力を拡大しつつあるロシア系マフィア、プロンチェンコ・ファミリーの拠点が何者かの襲撃を受けた。綿密な計画、的確な射撃、確実な死・・・だがそれはパニッシャーの所業ではなかった。かつてソ連のアフガン侵攻で男が見た地獄とは。

 直近でエニスが手がけた PUNISHER: THE PLATOON はまだ兵士だった頃のフランク・キャッスルを描いていたんで、面白くはあったものの、正直「こりゃパニッシャーじゃねえな」という感じだったんですが、今回は都会のインフラから人間関係まで使えるものはなんでも使えるアーバン・ゲリラ。皆が期待する通りのフランクです。

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 かつて伝説的な連載を手がけた人物でも久々に同じキャラや世界観を扱うとどうもしっくりこないってのはコミックのみならず漫画や小説でもよくある話なんですが、ことエニスに関しては全くそんなことなく。むしろキャラクターの動かし方に磨きがかかっているとさえ思われます。

 追い詰められても眉一つ動かさず事務処理的にコトをこなしていくパニッシャーの一挙一投足がしびれる。なんだろうね、この「絶対追い詰められたフリして罠張ってんだろうな」と分かってても、いざ罠が炸裂するとぞくぞくするカタルシス。

 今回パニッシャーと共闘してマフィアを相手にするヴァレリー・ステパノヴィッチもいい味出してます。パニッシャーよりやや軽めな性格ながら戦闘では勝るとも劣らない動き。ダンディズムが滲み出てるけれど小洒落た感じはしない。
 いいおじさん。とてもいいおじさんです。


Punisher: Soviet (2019-) #2 (of 6) (English Edition)

 
 あとエニスのライティングは戦争ものが絡むと一際冴えます。
 今回はタイトルにソビエトとあるとおり、ソビエトのアフガン侵攻が物語に大きく絡んできます。
 戦争ものは下手な人が描くと、なんとなく人情ドラマがあってキャラクターがバタバタと死ぬ醜悪なデス・ポルノみたくなりがちなんですが、エニスはあくまで自身の詳細な下調べに基づく描写で戦場の恐ろしさと不毛さを伝えてきます。
 
 バロウズのアートもこれに一役買っていて、彼の絵ってぱっと見、華がないんですよ。アクションが派手だとか、キャラの造形が美しいとか、そういう特徴はない。かなり淡々と描くタイプの絵師だと思うんです。けれど、だからこそというか、そういった大仰な武器を持たないからこそ描ける対象の幅が広い。
 これができる人って実はかなり少なくて、例えばアクションを得意とする人だと会話シーンを描かせるとかなり退屈な絵になっちゃうなんてことは結構あるんですけれど、バロウズの場合はアクションも会話も均等な面白さで読みこなせるんですよ。こういう絵柄はこと必ずしも派手なアクションが求められないパニッシャーのような地に足の着いたキャラクターを手がける際には必須スキルとさえ言えるかと。


 そして極めつけはラスト。単なる人殺しではないパニッシャーの真骨頂が見られる。

 ガース・エニスのパニッシャーは MAX 時代の連載が象徴的過ぎて最近の作品は話題に上りにくいのですが、作品のクオリティは今も上がり続けています。
 ぜひご一読あれ。