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FRIDAY (PANEL SYNDICATE)

 しばらく閑古鳥が鳴いていたパネル・シンディケートからの新作はトップ・クリエイター陣による意欲作。




 クリスマス休暇を利用して故郷のキングス・ヒルに帰ってきたフライデー・フィッツュー。しかし、駅に着くや否や、彼女は幼馴染で警察の捜査を手伝うランスロット・ジョーンズと共に近くの遺跡から出土した石刃を盗んだ犯人を追跡することに。森のなかで下手人を発見した一行だったが、その錯乱した様子にフライデーは尋常でない気配を感じ取る。地域に言い伝えられる生贄との関連はあるのか。そしてかつて少年探偵とその助手として活躍したランスロットとフライデーとの間に溝を生んだ過去の出来事とは・・・。


 本日突如パネル・シンディケートから発表されたできたてほやほやの新作です。脚本は CAPTAIN AMERICACRIMINAL といったクライムサスペンスを数多く手がけてきた、エド・ブルベイカー。アートは AMAZING SPIDER-MAN なども手がけ、サイトの発起人でもあるマーティン・マルコス。カラーにはマルコスと頻繁にタッグを組むムンツァ・ヴィセンテ


 パネル・シンディケートについては以前何度かこのサイトでも取り上げましたが、マルコスが SAGA などで知られるブライアン・K・ヴォーンらと共に2013年に設立した電子コミックサイトで、最大の特徴はコミックの購入価格を0円から自由に設定できるという点。1ドルからとかなら結構やってるところ多いんですが、完全無料でもOKという方針のサイトは他では未だにこのサイトくらいかと。
 それでも多くのクリエイターがかなりの額の収益が挙げられているということなので、思わず投げ銭したくなる作品のクオリティは推して知るべし。

 そんな PS でしたが2019年はほとんど更新がなく、久々の新作となった今回の FRIDAY ですが、少し前からツイッターや他のクリエイターからのニュースレターなどで新作が出ることは察知していたものの、まさかブルベイカーが出てくるとは思いもよりませんでした。
 この勢いで PS には再びデジタルコミック界に大きな波を引き起こしてもらいたいところです。

 さてさて。
 本作を制作した背景に関して、ブルベイカーが#1の巻末コラムでちょろっと解説しています。それによると、かつて彼がカートゥニストとして活動していた頃にしばらくはまっていたヤングアダルトノベル(日本の感覚だとラノベよりも青い鳥文庫とかそっちらへん)から強く影響を受けているというらしく、本人の中でかなり長い間温めてきた企画なのだそう。
 本作の少年探偵とその助手という設定からは確かにナンシー・ドリューなど YA ミステリーの雰囲気が感じられます。

 また、サスペンスの第一人者としてのブルベイカーらしい導入ではあるものの、他方で人身御供の伝承にまつわるオカルトちっくな気配もあり、また同コラムでも本作はここからぐいグイぐいっと面舵いっぱいするような話があったので、2018年に完結した KILL OR BE KILLED みたいに軽く斜め上の展開は期待できそう。

 少なくともヤングアダルト物から着想を得たからといって本作もそうかと問われれば決してそんなことはないのでご安心を。


 アートについては、マーティンムセンテのアートは相変わらずいい味出してますね。
 クライム物ではフランク・ミラーダーウィン・クック、あるいはショーン・フィリップスなんかが有名で、そういった方達は重量感ある絵柄であることが多いのに対して、本作のアートはややシャープな印象を受けます。かといって雰囲気が損なわれているなんてことは決してなく、ノワール物としては中々新しい絵柄かもです。


  PS の作品は結構気まぐれな刊行ペースなので#2以降がどのくらいのペースで出るのか正直まだ判然としないのですが、今みたいに新作が枯渇している時期にこうした話題作が出ることは嬉しい限り。
 

 今回の騒動でウェブコミック界は大きな変化を遂げるかも。今後も見逃せません。


パネル・シンディケートのウェブサイト
panelsyndicate.com