英国秘密諜報部 MI-X の敏腕エージェント、トーマス・コード。
持ち前の機転と卓越した身体能力を駆使し、彼は今日も困難な任務を遂行する。世界的犯罪組織ゴールドメイズから謎のペーパーバックを奪取した彼だが、その直後・・・。
ところ変わって MI-X の本部。トーマス・コードという名の凄腕エージェントが新たな任務を与えられる。それはとあるエージェントが命を賭して回収した謎のペーパーバック、その作者を確保しろというものだった。
同じ名前のエージェント、ありえない筈の記憶、拭いきれない違和感・・・現実と虚構の境界が曖昧になったコードの前に、著者フィリップ・ヴァーブが姿を現す。
MING MGMT や DEPT.H などで知られるカナダ出身のクリエイター、マット・キントがウィルフレド・トーレスらのアートと共にダークホースから送る最新作。発表当初はジェームズ・ボンド+タンタンのような冒険活劇という触れ込みだったのですが、蓋を開けてみればボンド的スパイをはじめとした様々なテンプレキャラメタな陰謀に巻き込まれていくサスペンス・アクションでした。
こういうメタな視点が交じる物語は苦手な方もいるようですが、個人的には大好物です。
伊藤計劃の短編『女王陛下の所有物 On Her Majesty's Secret Property 』&『 From the Nothing with Love 』なんかを思い出しますね。
謎のペーペーバックの著者として登場するフィリップ・ヴァーブという人物にしても、キントがこれまで手がけてきたオリジナル作品に必ずと言ってよいほど登場している謎のキャラクター。本作でも物語の鍵を握る存在として重要な位置を占めるようです。
アーティストでもあるキントの絵柄がすごくツボなので本作でも彼の絵を堪能したかったため、ウィルフレド・トーレスの絵については正直最初「うーん・・・」と首を傾げたのですが、読み進めるにつれてこれはこれでありかと思い直すようになりました。キントとはかなり違う作風ではあるものの、小気味よいアクションなどが中々上手。
#2ではまた別の人物に焦点が当てられ、『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンや『スピード』のジャック・トラヴェンといったアクション映画に出てきそうな活劇野郎系キャラ、ジョン・ショーが登場します。
こうしたテンプレキャラ同士が今後どう関わり合っていくのか。そして彼らが立ち向かうべき陰謀とは一体どのようなものなのか、今後が気になる作品です。