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PUNISHER: THE PLATOON (MARVEL, 2017)

 初めて戦場に降り立った彼が見たもの。そして、そんな彼を見た者達。


Punisher: The Platoon

 とあるバーで再開する4人の男達。彼らはかつてベトナム戦争で同じ部隊に所属していた仲間同士。ノンフィクション作家に招かれてやって来た彼らは、その場にいないもう1人の男について語り始める — 男の名は Frank Castle 。これは彼がまだ処刑人になる前、1人の兵士だった頃の物語である。

  Frank Castle が Punisher になる以前のベトナム戦争兵時代を描いた、2003年作品 BORN の続編にして前日譚。 BORN が彼の3度目にして最後の遠征を描いていたのに対して、本作では最初の遠征における彼とそこで出会った仲間達の姿を描く。
 本作の存在自体は何年か前から度々言及されてきており、首を長くして待っていたところ昨年ようやく刊行。待った甲斐がある出来といえる。

 クリエイター陣はライターに BORN のみならず MAX シリーズなどでもお馴染み Garth Ennis と、アーティストに彼と PUNISHER MAX シリーズで度々タッグを組んだ Goran Parlov 。カラーは今をときめく彩色師 Jordie Bellaire 。時にベタッと単色で攻め、また時にやんわりと色調を変える彼女の色使いは Parlov のようなラフな線を使うアーティストとよく合う( MOON KNIGHT などで組んだ Declan Shalvey とかもこのタイプ)。
 
 全体的な雰囲気としては前作と似た感じで Punisher を読むというよりは Frank Castle が登場する戦記物を読んでいるという趣で、 PUNISHER が登場する他のコミックや(私は観ていないのではっきりとは言えないが)去年 NETFLIX で配信開始となったドラマ版などのノリで読み始めるとやや肩透かしを食らうかもしれない。

 一方でベトナム戦争のリアルな肌触りについては流石戦史マニアの Ennis といったところ。幻想を抱いて戦場へやって来た若者達の現実に対する疲弊感と緊張感とが綯い交ぜになった独特の空気が作品全体に漂っている。

 そしてそんなリアルなベトナム兵達の中にいるからこそ、存在感が一際増す我らが Frank 。従軍経験こそないものの、 Ennis の描く兵士は帰還兵のクリエイターが数多くいた50年代、60年代の戦争物に匹敵するクオリティだ。
 兵士である Frank が Punisher として本格的な戦闘についてはド素人なギャング連中をバッタバッタとなぎ倒していくのとは違い、リアルな戦場において有能な敵よりもさらに有能に描くということは実のところかなり難しい。だが、訓練を終えただけで未だ実践を1度も積んでいない状態で戦地に足を踏み入れるにも関わらず、既に纏う空気はベテランのそれだ。
 現在よりも人間味を残しつつ、だが任務を必ず遂行する態度は既に一貫している。

 本作はストーリー的にもアート的にもかなり地味な作品だ。 Punisher という存在に至っていない Frank Castle という人物を描いているからそこは仕様がない。しかし、原点を知らなければ理解できない結果というのもある。
  Punisher が殺していなければ、犯罪に巻き込まれていた者がいたかもしれない。
  Frank が殺していなければ、敵に殺されていた仲間がいたかもしれない。
 そういう戦い方しかできない彼は、間違いなく兵士なのだろう。


Punisher: The Platoon (2017-2018) #1 (of 6)


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Punisher: The Platoon (2017-2018) #4 (of 6)


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