Calvin And Hobbes Volume 1 `A': The Calvin & Hobbes Series: Thereby Hangs a Tail
*用意していた記事が諸事情によりボツとなってしまったので、本日ははるか昔に書いたまま未公開だったレビューをお届けします。
あらすじ
想像力豊かな6歳児カルヴィンはいつもトラのぬいぐるみを持ち歩いている。他の人にはわからないが、実は親友のホッブスなのだ。2人は持ち前の腕白ぶりと悪戯心で今日も至るところで騒ぎを巻き起こす。
感想
『 PEANUTS 』や『 GARFIELD 』など数多くの名作人気作が林立するコミック・ストリップの中でもほぼ不動の頂点の座を確立している名作中の名作。
本国の外でいまいち知名度が劣るのは作者のビル・ウォターソンが徹底してフランチャイズ化を拒否しておりグッズ化や映像化が一切なされていないからかと(ちなみに連載が終了した理由もフランチャイズ化の圧力が1つあったとか)。それでもコアなファンは国内外に多くおり、今でもランキングなどではほぼ必ずトップを飾るし、パロディなどの形であちこちに姿を見出すことができる。
かくいう私にとっても本作はおそらく初めて手にしたコミックであり、現在でもしばしば読み返すこともある作品。
本作が他のコミック・ストリップより抜きん出ている点は何よりまずそのアクションの量だ。比較的低めのテンションで進行するこの手の作品の中、本作はカルヴィンとホッブスが繰り広げるドタバタに満ちている他、夢想家でもあるカルヴィンは時にスペース・レンジャーとして銀河を巡り、時に大怪獣となって街を破壊し尽くす。
やもすれば向かい合った頭が3コマ4コマ会話するだけになりがちなジャンルで、縦横無尽に活躍する2人(1人と1頭)の姿はパネルの外にある広い世界を意識させる。単なる会話劇に留まらないところに本作の大きな魅力があることは間違いない。
コミック・ストリップというジャンルは業界の中でスーパーヒーローからの影響をほとんど受けていない数少ない領域の1つだ。
しかし逆に「救世主」となることなくキャラクターを動かすことは存外難しく、アクションはスポーツなど一部のネタに頼りがちとなる。そんな中、本作は身近なものの中に遊びや冒険を見出し、そこで思い切り動きまわってみせる。そこには単なるギャグという以上の“愉快さ”が漂っており、読む者を楽しませる。
連載終了から既に20年以上経った現在でも頂点に君臨し続けるのも納得の読み応えといえよう。
The Essential Calvin and Hobbes: A Calvin and Hobbes Treasury(最初の2集をまとめた単行本)