VISUAL BULLETS ー今日もアメコミ三昧ー

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バットマンと黄色のエンブレム

突然ですが質問です。

”バットマンの胸のロゴマーク”と言われた時にあなたはどのような形を想像するでしょうか?


ナナナナナナナナ、ナナナナナナナナ、バッマーン!(シンキングタイムのBGM)


おそらく大半の方は大きなコウモリのシルエットのみのタイプ、もしくは小さなコウモリのシルエットのバックに黄色いプレートがあるタイプを想像するでしょう。

あるいは一部、大きなコウモリのシルエットを黄色で縁取りしたものなどを想像する方や、真っ赤なコウモリのシルエットを想像する方なんてのもいるかもしれません。


多くの方がご存知のとおり、バットマンのコスチュームは長年の歴史の中で何度も変更されています。

中でも大きな特徴として変わる度に注目されるのが胸のロゴマークです。

今日はそんなバットマンの胸のロゴマークついて、ざっくりとその変遷を辿ってみたいと思います。

1939年 初登場時

バットマンは1939年に DETECTIVE COMICS #27 にてデビューしました。

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Bob Kane, DC Comics


最初に登場した際のコスチュームでは、手のひら大のコウモリシルエットが胸にあしらわれたシンプルなデザインとなっています。

この時点ではまだ黄色いプレートはどこにもありません。


たまに不定期でシルエットの形が変わるものの、概ねこの状態で推移していきます。


1964年 黄色いエンブレム登場

黄色いエンブレムのデビューは1964年。

DC としては DETECTIVE COMCIS #327 で新コスチュームのお披露目を想定していたようですが、何らかの事情で刊行時期が前後してしまったのか最初に登場したのは、WORLD' FINEST #141 においてだといわれています(ただし、こちらのカバーに描かれているのは元のコス)。

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これは BATMAN 誌における初登場時 Joe Giella, Sheldon Moldoff, DC Comics


バットマン映画ファンサイトの最古参 BATMAN ON FILM によると、胸のロゴを変更したのには、クリエイティブ面より版権面の理由があったそうです。

batman-on-film.com

1960年代といえば、ちょうどかの有名なアダム・ウェスト版バットマンの実写ドラマ版が製作された時期と重なります。

実際にドラマを放送開始したのは66年ですが、61年頃には既に企画は進んでいたそうです。


そのこともあってか以前から自社で抱えているキャラクターの版権の重要性に気づきつつあった DC はバットマンのロゴマークについても、その商標登録を急ピッチで進めることになります。

ところがスーパーマンなどのシンボルと違い、コウモリのシルエットのみというバットマンのシンボルでは「形がややシンプルすぎる」、「ありふれたデザインとして扱われる可能性がある」という意見が出ます。


そこで DC はもう少し特徴的なロゴになるよう、黄色いプレートをバックにあしらえるようになったということです。

なお、黄色は夜空に光るバットシグナルを意識しているとか。


ちなみにこの黄色いプレートについては、作中の解釈もあります。

例えば DARK KNIGHT RETURNS ではプレートの裏は防弾アーマーになっており、敢えて心臓を狙わせることを銃撃から頭などを守る目的であるいう説明がなされました。

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Frank Miller, Klaus Janson, Lynn Varley, DC Comics

さらに DETECTIVE COMICS #1000 において、このプレートはブルースが両親を殺害した銃を溶かして鋳造したことが明かされます。

かつて自分の心を壊した銃を、敢えて今度は自分の心(臓)を守る鎧にしたというわけです。

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Kevin Smith, Jim Lee, et al, DC Comics

2000年 大きなシルエット

さて、一部例外を除いて、以後36年近くに渡りバットマンの胸を飾ることになった黄色いプレートにコウモリマークのロゴ。

しかし、ノーマンズ・ランドのストーリーが終了したあたりで DC 内部から「バットマンの絵柄を大きく変えよう」という意見が出ます。

それにより2000年からはゴシック・ノワールとしての作風を強調するかのように大きなコウモリが胸を飾るようになりました。

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Brian Stelfreeze, DC Comics


なお、大きなコウモリのシルエット自体は過去を舞台にした YEAR ONE や未来を舞台にした DARK KNIGHTS RETURN などで既に登場していますが、あるいはそういった名作を意識しているのかもしれません。


また、これに先んじてカートゥーンや映画などでは90年代後半から既に黄色いプレートが廃される傾向にありました。

こうした他メディアの影響もあったのかもしれません。

あ、ちなみに最初の方で言及した赤いコウモリのロゴはカートゥーン BATMAN BEYOND で使われていたものです。


2011年前半 黄色いエンブレム再び

2000年の変更以後、10年近くバットマンの胸には大きなコウモリのシルエットが飾られていましたが、2011年に再びコスチュームが変更します。

ファイナルクライシス事件以降、時空を漂って行方不明だったブルース・ウェインが帰還。

バットマンとして復帰するのに併せ、当時バットマン関連のタイトル群を統括していたライターのグラント・モリスンはアーティストのデヴィッド・フィンチと共にバットマンのコスチュームデザインを一新。

その胸に10年近く失われていた黄色いプレートが再び宿ることになります。

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David Finch, Gene Ha, DC Comics


この時、ブルースはバットマンを世界展開する”バットマン・インコーポレイテッド”というプロジェクトを推進しており、ゴッサムの治安を自分が不在だった間代わりを務めてくれたディック・グレイソンに引き続き託すことにしました。

胸部が黄色いプレートのブルース版と、大きなバットシルエットのディック版とでコスチュームの差異化を狙ったところもあるのかもしれません。

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左がディック、右がブルース David Finch et al, DC Comics


ちなみに時間がやや前後しますが、ブルースが不在となった当初歴代ロビン達の間で誰がバットマンの座を受け継ぐかで揉めた(?)時期があり、その際にティム・ドレイクが黄色いプレートのあしらわれたコスチュームを身に着けてファンを沸かせました。


2011年後半 NEW52

さて、バットマンのコスチュームに再び黄色いプレートが戻ったのも束の間、程なくして DC ユニバースは世界観を全体をリブートしてしまいます。

そしてリブート版 DC ユニバース NEW52 の開始に併せ、バットマンは新調したばかりのコスチュームをお蔵入り。

ジム・リーとカリー・ハムナーが手がけた新たなデザインからは黄色いプレートが廃され、バットマンの胸部は以前のように大きなコウモリシルエットに覆われてしまいます。

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Jim Lee, Scott Williams, DC Comics

黄色いプレートが一時復帰したのが2011年の1月、 NEW 52 の開始が同年9月なので実質黄色いプレートは1年も満たないうちに消え去ってしまったというわけです。


リブートのせいでシリーズの中断を余儀なくされていた BATMAN INCORPORATED も NEW52 の世界観に沿うよう諸々の変更を余儀なくされます。

2012年にようやく刊行されたワンショット LEVIATHAN STRIKES! では黄色いエンブレムが躍っているものの。

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Chris Burnham, DC Comics

再開したシリーズでは NEW52 版のコスチュームになっており、黄色いエンブレムはありません。

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Chris Burnham, DC Comics

2016年 REBIRTH

賛否両論あった NEW52 はその後4年半近く続いた後、2016年に終わりを迎えます。

新たに始まった DC REBIRTH に伴い、バットマンのコスチュームは再び変更(正確には直前の BATMAN #50 で新コスチューム登場)。

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Greg Capullo et al, DC Comics

今度の変更では久々に胸のデザインに大きな変更が施されます。

新たにあしらわれたのは、これまでのハイブリッドとでもいうべき大きなコウモリのシルエットを黄色で縁取りしたようなロゴ。

そうか、しばらくこれでいくのかと思っていたのですが・・・。



BATMAN #53を最後に消えます。

実はこの直前、ブルースはキャットウーマンことセリーナ・カイルにフラれてしまい、結婚式をほっぽりだされてしまっています。

そのため、彼女と一緒に過ごした時に着ていたコスチュームは嫌ということでお着替えしてしまいました。


・・・え、そんな理由で?


・・・まあ、何はともあれこうして胸のロゴは大きなコウモリのシルエットがあしらわれたものとなり、現在に至るわけですが。


????年 あり得たかもしれない未来


現行の DC ユニバースより少し先の未来という舞台を想定していたのが DC REBIRTH 以来の謎に答える形で2018年から20年にかけて連載された DOOMSDAY CLOCK

ここでのバットマンの胸を見ると、黄色いプレートがあります。

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DOOMSDAY CLOCK #3 より Gary Frank, Brad Anderson, DC Comics

こうしたことからファンの間では近い将来、具体的には当時連載されていたスコット・スナイダー版の JUSTICE LEAGUE の連載が終了するまでにブルースは再びバットマンの衣装を変更し、黄色いプレートを再び用いるのではないかと目されていました。


ところが、実際にスナイダー版の連載が終わり、 DOOMSDAY CLOCK 以降の新時代 INFINITE FRONTIER に突入した DC ユニバースでもバットマンのコスチュームに明確な変更はなし。


実はこの時期、 DC コミックス内では親会社のワーナーメディアが AT&T に買収されたことをきっかけに大規模な人事異動や本拠地移転に伴い若干ごたつきまして。

DOOMSDAY CLOCK のライターを務めていたジェフ・ジョーンズも DC の代表の座を下りてしまい、 DC ユニバース全体が大きな路線変更を迫られます。

その結果、当初は正史内のできごととして設定されていた DOOMSDAY CLOCK も連載が遅れ気味で他誌と足並みが揃わなくなっていたことなどを理由にその位置づけがあやふやになっていきました。


それを反映するかのように作中でもバットマンのコスチュームがコウモリのシルエットのみのバージョンだったり、黄色いプレートがあるバージョンだったり。

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DOOMSDAY CLOCK #12 より Gary Frank, Brad Anderson, DC Comics


最終的に黄色いプレートは採用されない運びとなったらしく、とりあえず現在は大きなシルエットのみというコスチュームに落ち着いたようです。

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Jorge Jimenez, DC Comics

そう、また再び変わるまで・・・。



という感じで、以上がバットマンの胸のロゴに関するざっくりとした変遷となります。


スーパーヒーローにとってコスチュームは欠かせないもの。

長い歴史を持つキャラクターほど、興味深い変更を経ている場合があります。


www.visbul.com


・・・そう、スーパーマンのトランクスとかもですね!


是非、好きなキャラクターのコスチュームにも注目してみて下さい。

それでは本日もよいコミックライフを!


追伸:あの、注目してね!的なこと書いといてなんですが、スーパーヒーローのコスチュームについてお調べになる時は是非お気を付け下さい。

やっぱり、その、全身タイツとかラバースーツは、なんというか”別の方面”とも相性が良いわけででして・・・何も知らないで検索するとなんというか、変なサイトがちょいちょいヒットしますんで。

何卒、お気をつけ下さい。