VISUAL BULLETS

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WONDER WOMAN #36 (DC, 2015)

NEW52時代に(一部描写に賛否ありつつも)好評だったブライアン・アザレロとクリフ・チャンらによる連載が終了し、それを引き継ぐ形で始まったメレディス&デヴィッド・フィンチらによる連載。

人として神としてアマゾンの女王として様々な責任を負うことになったワンダーウーマンが、ジャスティス・リーグと謎の災害に見舞われた村を訪れるというあらすじ。


この界隈ではよくある話なものの、チャンからフィンチへのアーティスト交代による絵柄のギャップが中々エグい。

ややデフォルメがかっていたチャンのアートから一転、セクシー系雑誌のモデルみたいなプロポーションのキャラクターが立ち並ぶ2000年代風の作画になります。

なんというか原作準拠なアンパンマンから急に中学生が落書きで描くようなゴリゴリマッチョになった感じといえば伝わるか。

しかもデヴィッド・フィンチ、マーベルで活躍していた頃に比べて女性の描き方がちょっと変わったのか、ベイビーフェイス気味なダイアナは見ててややきついかも。

カバーのダイアナはいい感じなのに何故・・・。


アートがそんなんならいっそストーリーもリセットしてしまえば良いと思うんですが(褒められた手法ではないもののよくあることではあるので)、何故かそっちは前号までの連載を色濃く引き継いでおり。

ダイアナは母ヒッポリタの後を継いでセミスキラの女王として、また戦の神アレスの後継者としても君臨。追放されていたアマゾン男児達をパラダイス・アイランドに迎え入れて配下から反発を喰らっているという状態。


さて、そんなあちらを立てればこちらが立たずな重責から来るストレスに頭を悩ませている中、村が丸ごと消失する大規模災害が発生。

原因を調査しに行った先で被害の大きさに怒り心頭するのは良いんですが、同じく調査に来ていたスワンプシングに八つ当たりアタックを仕掛けてしまうのはいかがなものか。

顔面から肩にかけて吹っ飛ばされたのに大人な対応のスワンピー、本号のMVPはあんただよ。

ちなみに次点でダイアナを宥めたアクアマン。

ジェットの中でダイアナに語りかける姿は校長先生に呼び出されて車で子供を迎えに行ったお父さんです。


マイナスなことばかり書いてしまった気がして恐縮なんですが、1冊目は種蒔き段階だしこんなもんといえばこんなもん。

細かいところに目を瞑ればつまらないなどということは決してなく、今後の波乱を予感させる緊張感漂うストーリーとなっています。

あと、デヴィッド・フィンチの描くスワンプ・シングはかなり見応えがあるのでワンダーウーマンVS.スワンプシングを堪能してみたい方にはおすすめ。

DCがまだ$2.99を保っていた時代なのでお手頃価格だし、少しでも気になったら是非。