VISUAL BULLETS

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

CROWDED VOL.1: SOFT APOCALYPSE (IMAGE)

 SNSを中心とした文化が著しく発展した近未来。クラウドファンディングで賞金を募る人気暗殺アプリの新たな標的となったチャーリーが、☆1.4だが(これまた別のアプリで雇った)腕利きのボディーガード、ヴィータと共に次から次へと出現する殺し屋(アマチュア・プロ含む)をかわしながら、自身が何故狙われる羽目に陥ったのかを探るSFアクション。


Crowded Vol. 1 (English Edition)

 ジャンルに囚われない多様な作風で知られるライターのクリストファー・セベラが、新進気鋭のアーティストコンビ、ロー・スタイン&テッド・ブラントらとチームを組んで送る”5分先の未来”系SF。
 2020年2月現在#11まで刊行されており、本刊には#1から#6までが収録されている。

 暗殺アプリとか下手したらブラックミラーのエピソードになりそうなダークなネタだけれど、ユーモアの効いた台詞やカートゥーン調のアートが良い具合にそれを回避し、物語は終始アップビートなものとなっている。個人的にVOL.1では#5の序盤がいわゆる”底”なんだと思うんだが、それもすぐにジョークで霧消する(MCU流のユーモアとでもいえば分かる人には分かるかと・・・)。

 他方、それでありながらソーシャルメディアで炎上案件に殺到するユーザーを”暗殺対象に殺到するバズーカ集団”として表現するなど、この手のジャンルの醍醐味といってもいい現代社会への皮肉も練り込まれていてとっても楽しい。

 また、SFコミックは設定を解説するために説明が冗長になり話がたるみがちになるところ、コマを増やして(平均的なアメコミが4から6コマだとするとその1.5〜2倍くらいか)1つ1つの台詞を小分けすることなど派手なアクションで気づきにくい細かな演出の工夫もあちこちに施されている。

 今後さらに大きな話題を呼びそうな作品。