北極圏に位置する架空の英国領を舞台に、前任者の失踪を機に新しく赴任してきた高等弁務官がその地に秘められた歴史の暗部をあぶり出す物語。
オーウェン・D・ポメリーによるオリジナル作品。120ページほどの短めな作品ながら非常に密度が濃く、過去の植民地政策がもたらした社会問題をベースにした高クオリティのミステリーが成立している。こーゆーの、私好きよ。
ポメリーは建築家でもあり、荒涼とした場所が舞台なため登場する建物の数は限られているが、随所に登場するシンプルな家屋にむしろこだわりが感じられる。雪の中にぽつんと佇む家が描かれたページはコピーして壁に飾っておきたいくらいだ。
静謐な北極圏を舞台にしているというだけあってか絵はあまり込み入った印象がない。話もその淡々とした進行が小刻みにサスペンスを高めていくよう、緻密に計算されている。
まだ始まったばかりの2020年。今のところ本作がベストです。