ニューミュータンツのベストエピソードとして語り継がれている名作。
New Mutants: Demon Bear (New Mutants (1983-1991)) (English Edition)
X-MENが自分の手を離れた後、プロフェッサーXが新たに若い世代のミュータントを教育する目的で集めた青年たちからなるチーム、ニューミュータンツ。その中の1人でネイティブ・アメリカンのダニ・ムーンスターは、かつて悪魔の熊”デーモン・ベア”と呼ばれる存在に両親を殺害され、自身も夢の中で苦しめられ続けていた。やがてデーモン・ベアの魔の手がすぐそこまで近づいていることを悟った彼女は、悪魔に1人立ち向かうことを決意するが・・・。
ニューミュータンツといえばこれといわれるほど、このチームを代表する名エピソードの1つであり、今度公開される映画の原作にもなっている作品。
脚本はX-MENの黄金時代を築き上げたクリス・クレアモント、そしてアートはそれまでカバーで頭角を示しつつあったビル・シンケヴィッチが初めて中身も担当。
当時、スーパーヒーロー系コミックはジャック・カービー風のくっきりとした輪郭線の絵柄が大勢を占めていた中、印象派系のアートなどから影響を受けたシンケヴィッチのラフでシャープなアートは業界に衝撃を走らせた。実際、今見ても中々類を見ないオリジナリティが保たれており、新鮮さは失われていない。濃い陰影やガリガリと描き殴るような線からなる絵柄は、デーモン・ベアとそれに侵された者達の狂気を如実に浮かび上がらせており、ホラーとしてかなり見ごたえのある作品に仕上がっている。
また、数多くのX-MEN系タイトルを手がけたクレアモント。彼の脚本は時としてメロドラマ、ソープオペラなどと揶揄されることもあるが、その多少オーバーな演出こそがむしろキャラクターの魅力を引き出しており、その手腕は本作でも存分に発揮されている。それぞれ全く異なるバックグラウンドを持つ5人のミュータント達が、友人ひいては世界全体を脅かす悪魔を前に協力し合う過程がダイナミックに描かれている。
ストーリーでもアート面でも申し分ない名作だ。
本サーガを含むNEW MUTANTS誌#13−31とANNUAL #1を収録した合本。
New Mutants Epic Collection: The Demon Bear Saga (New Mutants: Epic Collection)