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JUSTICE LEAGUE ELITE (DC, 2004, #1-4)

 正義だってきれいごとばかりじゃない。


本記事で紹介する内容を含む原書合本版(Amazon): Justice League Elite: VOL 01

 公式には存在しない Justice League の隠密部隊として活動を始めたElite。兄の犯した罪を償おうとする Vera Black a.k.a Sister Superior に率いられ、チームは手始めにテロリスト・グループへの潜入を試みる。作戦は順調に進んでいるかのように思えたが……。果たして Vera は1人も死人を出すことなく虐殺計画を食い止めることができるのか?

  ACTION COMICS #775 “WHAT’S SO FUNNY ABOUT TRUTH, JUSTICE, & THE AMERICAN WAY?” に始まり、 JUSTICE LEAGUE #!00 ELITISM と来て、辿り着いた本作。正直合本を手に入れた際は Superman の名作と謳われる最初の AC#775 だけを狙っていたのだけれど、ここまで全部面白いっす。 AUTHORITY を始めとした90年代から2000年代の尖ったスーパーヒーロー像に対するカウンターパンチとしてのみ産み落とされたコンセプトのチームがこれほどの昇華を遂げるものとは思いもよらなかった。

 クリエイター陣は引き続きライターの Joe Kelly とアーティスト Doug Mahnke 。 Mahnke は FINAL CRISIS などを読んだ頃から好きだったけれど Kelly については AC #775 から本作にかけてを読んでようやくその作品のレベルの高さに気付き Wiki してみたところ、意外にも自分が AMAZING SPIDER-MAN で最も好きなエピソードの1つである RAGE OF THE RHINO とかもこの方が書いていると知り。他にも、それまで Deathstroke のパロディでしかなかった Deadpool を現在のようなキャラクターに仕立てた立役者なんかとしても有名らしく。これまでノーマークだったけれど今後はちょっと追ってみたいと思った次第。

 新生 Elite の面白い点は何と言ってもその境界性かと思われる。 Superman らの JLA には中々手を出せない汚れ仕事にも手を染める一方で頑なに殺人を固辞したり、 Kasumi のような暗殺者や元スーパーヴィランの Major Disaster みたいな前科持ちもいれば DC ユニバースきっての良心的存在な Flash もメンバー入りしていたりと、組織自体は STORMWATCH BLACK みたいにかなり影があるのに、各々の志は本家 JL に負けず劣らず。組織のコンセプトとメンバーの思考ベクトルとがマッチしている作品は多いが、逆にそこがちぐはぐなチームというのはありそうでない。
 考えてみれば当然で、ただでさえ1人のキャラクターに殺人など一線を越えさせるというのは難しいのに、それをチームで行わせるというのは演出的に至極の業だ。

 しかし本作で Kelly らは逆にそのミスマッチをてこにトラブルを呼び込み、その糸口を開いた。
 いつオリジナルの Elite と同様の方向へ進んでしまいかねないこの危ういチームが今後どうなっていくのか。
 リアルタイムで読みたかったなと思わされる作品だ。