既にオリジン語るのは何度目になるかわからない我らが姐さん。
邦訳合本版(Amazon): ワンダーウーマン:アースワン (ShoPro Books)
3000年前。野蛮な神Hercules率いるギリシャの男どもに隷従を迫られたHippolyta、それにAmazonsの女達はしかし、愛の神Aphroditeらの恩寵により反旗を翻す機を得、勝利する。
そして時は経ち、現在。外界との接触を断ったAmazon達はバミューダ海域の中に位置するParadise Islandに女だけの発達した社会を築き上げ、永遠の生を享受していた。
そんな中、ただ1人変化のない毎日に憂鬱な思いを抱いていたHippolytaの愛娘Dianaは毎年恒例の祭事でいたずらをして逃げる最中、海岸に打ち上げられた無粋な機械の残骸、そしてそれに搭乗していたと思われる人物を発見する。それは彼女にとって初めて見る”男”という存在だった……。
良くも悪くもBatmanにとってのYEAR ONEに当たるような決定版がないのでRebirthといい、(DCとクリエイターとの間のいざこざが話題となった)『THE LEGEND OF WW』といい、ここ最近はとりわけ手を変え品を変えリサイクルされております。
あまりやり過ぎると読む方として食傷気味になることは否めないものの、そこはほれ、こっちも長年コミック読んでて慣れっこだから。それに同じ話でもクリエイターは違うので色んなライターやアーティストによる色んなフレーバーが楽しめるという面白さはあるかと。
私としては本作のライティングにGrant Morrison、アートにYanick Paquetteと大好きなクリエイター2人が揃い踏みしているとあって読む前から期待を膨らませてました。
インタビューでMorrisonは本作を制作するにあたってフェミニズム系の資料を沢山読み込んだと語っていますが、そのアプローチも含めて多分本作は最も原点に近いWWなんじゃなかろか。
そもそもWWを生み出したとしてクレジットされるWilliam Moulton Marstonは、元々ライターでなく心理学者でフェミニズム活動家。女の子向けのコミックをとDCから打診された彼が妻のElizabeth Holloway Marstonや当時の同居人だったOlive Byrneら(ちなみにこの3人は多重恋愛関係にあったそうで)と共にボンデージやら女性向け小説などから影響を受けて生み出したのがWonder Womanだ。本作ではその辺りをモチーフにしていると思える描写がちらほら。
Paquetteは見る度に絵が魅力的になっていく不思議なアーティスト。とりわけ今回は色んなところで色んな女性の笑顔が登場するが、Dianaのそれはもちろんのこと、彼女が外の世界に対する認識を改めるきっかけとなったCandyさん(つい最近Rebirth版で登場するソフトAmanda Wallerと同一人物だと気付いてびびった)の陽気な表情が堪らなく魅力的。誰もがモデルのような容姿を備えるAmazonsの面々とは別の”美”を燦々と放っている。こういうキャラクターはもっといて良い。
男らしさだとか女らしさだとか最近やたらと新聞で取り沙汰されているものの、個人的に思うのは多くの人がそういった”らしさ”そのものに対する嫌悪と、そういったイメージを他者から強いられることに対する嫌悪をごっちゃにしているのではないかというところ。
女らしくしようが男らしくしようがそれが自分の好きでやっていることであればさして問題じゃないし、他人からとやかく言われる筋合いもない。
本作でもDianaが外の世界から持ち帰ったボンデージ風の衣装やCandyの太った体型はAmazonの女達から蔑まれるものの、彼女らはそんなのをまるで意に介さない。これこそ好きな”自分”なのだからとむしろ誇らしげに破天荒に振る舞う。
極端に言ってしまえば”らしさ”なんて服みたいなもの。女子力だとかマッチョだとか、そんなものは性別などに関わらず好きな時に好きな物を身に着けたり脱ぎ捨てたりすれば良いと私はなんかは思います。
そして他人に”好きな自分”を選ばせる社会こそが誰にとっても”寛容な社会”と言えるんじゃないでしょうか。
続きが大変楽しみな1冊です。