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ダン・ディディオ退任によせて

今朝、エンタメ情報サイトの BLEEDING COOL が報じたところによると、DCの編集部トップからダン・ディディオが退くという。まだ本人や DC からの公式発表はないものの、内外の動向を窺うとどうやら事実らしい。

元々、テレビ業界にいたディディオは2002年に DC 編集部に招かれた。2010年にはジム・リーと共に編集トップの座である”パブリッシャー”という役職へ就任し、以来今日まで勤め上げてきた。

退任の理由についてはまだ定かでないものの、2018年に DC を擁するタイム・ワーナーが通信会社 AT&T に買収されたことに起因する人事異動、また編集方針におけるスタッフや上層部との意見の相違などが原因で解雇されたのではないかとみられている。


ファンの反応は様々だ。
長年の労を労う声が多い一方、これを機に DC コミックス編集部内の環境が良くなるという見方を示す者も散見される。


スーパーマンやバットマンといった往年のヒーローで直球のヒーロー物をやるのではなく、むしろ新しいキャラクターや読者の度肝を抜く展開を積極的に推す彼の方針は、革新的-- 時に急進的 -- と評されることが多い。彼の肝いりの企画だったという NEW52 でみられたような、過去の歴史を否定するかのような大々的な方針転換が周囲の怒りを買うこともしばしばだった。


最近も彼の主導で進められていた GENERATION FIVE という企画を巡り、ライターのスコット・スナイダーらと対立しているなどと噂されていた。

私自身、彼が主導したとされるストーリー展開に首を傾げたことがないといえば嘘になる。


だが一方でディディオが心の底から DC、ひいてはコミックを愛し、その行く末を憂いていたことは間違いないように思う。
次から次へと新しい企画や展開を打ち出す彼の積極的な姿勢こそ、その何よりの証左といえるだろう。

ゴールデンエイジやシルバーエイジに生み出されたキャラクターにいつまでもおんぶにだっこではなく、新規読者を歓迎できるようなキャラクターやストーリーを -- それは、常に新たな刺激を求められる映像業界に当初身を置いていた彼なりの危機意識の現れだったとも考えられる。


だが、とりわけDC ユニバースのように息の長い世界観だと、多かれ少なかれクリエイターもファンも保守的になりがちだ。

彼の企画は必ずしも芳しい結果を残さなかった。
時としてキャラクターの処遇などを巡ってファンから激しく糾弾されることもあった。

そういったバッシングの中には憶測に過ぎない的はずれなものもあったが、難しい舵取りを任される中、彼は決して他のスタッフへ責任を転嫁せず、常に矢面に立ち続けた。その真摯な姿勢は、必ずしも意見が合わない相手からもやがて敬意を得るようになった。

彼が長年に渡ってファンやクリエイターとまっすぐ向き合っていたことは、 SNS などを通じて各方面から寄せられる称賛の言葉が物語っている。


ダン・ディディオが DC コミックス、そして業界全体に及ぼした影響は計り知れない。ましてその好悪など、どれだけ議論を尽くしたところで結論は出ないだろう。


DC コミックスについては、彼が主導していた GENERATION FIVE も含め、今後どうなるかまだわかっていない。本件を報道した BLEEDING COOL に続報が掲載されているものの、それらはまだゴシップの域を出ないものばかりだ。


確かなことは、彼が私達と同じようにコミックを愛する1人であるということだけだ。

今は彼が DC にもたらしてくれたものに思いを馳せつつ、1人のファンとして謝意と労いの言葉を送りたい。