VISUAL BULLETS

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FROGCATCHERS ( GALLERY 13 )

現在と、過去と、想像と。

あらすじ

水に囲まれた無人のホテルで目を覚ました男。

個室を出た彼は、ロビーで1人の少年と出会う。

”蛙の王”に見つかってはならない、という少年に従い、男は地下室に避難する。

だが、何か腑に落ちない。

錯綜する記憶。

やがて、ホテルの中で唯一入ってはならないという部屋の扉を開けた2人が見たものとは・・・。

感想

SWEET TOOTH GIDEON'S FALL などで知られるヒットメーカー、ジェフ・レミーアが2019年に刊行した単行本作品。

レミーアといえば独特のアートが印象として先立ってしまうかもしれませんが、ストーリー的には代表作 ESSEX COUNTY のように魔術的リアリズムの要素を加えた人間ドラマが特徴的だと思います。

本作もあらすじからホラーやサスペンスといった印象を受けてしまった方もいるかもしれませんが、むしろ文学的といった感じの作品です。

個人的にはマルクス・ガブリエルや村上春樹といった作家の小説と読んでいる時の感覚が似ているかも。

そして現実と想像の境界が曖昧になっていく展開を得意とする彼の魅力がみっちりと凝縮されているのが本作。

長めの話だと徐々に溶け合う現実と想像が、最初から綯い交ぜになっています。

幼い頃の記憶と、現在の記憶と、想像の世界と。

序盤では絡まりあっていた3つの世界が徐々に解け、溶け合っていくのが本作の大きな魅力です。


アートについてはいつものレミーアの絵柄とはやや変化しており、ホテルのシーンなどは通常よりラフな印象を受けます(これもしかして鉛筆で線画描いてる?)。

レミーアの絵柄の不思議なところは、一歩間違えると”下手”と言われてしまいかねないほど独特でラフなアートを、演出で上手に見せているところです。

本作でも現実と想像の部分で書き込む度合いなどを微妙に調節していて、場面転換がある度に心を鷲掴みにされます。

作品を読み重ねるにつれ、どんどん好きになっていくアーティストです。


実は当初、これまでレミーアの作品、例えば ROYAL CITY ESSEX COUNTY などを読んでいない方にとって本作はややハードルの高い作品かも、と思っていました。

上でも述べた通りレミーアの”味”を凝縮させたような作品ですので、彼の作風を知らないと戸惑ってしまう可能性があるかもしれないと思ったからです。

ただ後になって考えを改めました。

敢えて本作からレミーアの作品を試してみるというのも十分ありかもしれません。

私自身はレミーアの作品をそこそこ読んでいるのでそう思いましたが、初めての方には初めての方なりの楽しみ方があるかも。

そういった懐の深さも彼の作品ならではの魅力ですので。

ページ数にして110ページくらいというのは単行本としてはやや短い程度の長さですし、思い切って手に入れてみるのも十分ありかと思います。

もちろん、彼の他の作品を少しでも面白いと感じたことのある人であれば本作はきっと面白く読めることでしょう。


生と死とか、現実と想像とか。

そういったテーマ的なことを探すことも可能な作品です。

ただ最初に読む時はそういうことをあまり深く考えずに読み進めることをおすすめします。

ゆったりと物語に浸って下さい。


それでは本日も良いコミックライフを。