死の回転ドアに一石を投じる巻。
B.P.R.D.: The Universal Machine #1
蛙達と攻防を繰り広げる中、ホムンクルスの Roger を失った B.P.R.D. 。皆が悲嘆に暮れる中、かつて霊媒師として名を馳せた Johann はその死を頑として受け入れず、何とか彼を蘇生しようと尽力していた。そんなある日、ひょんなことからメンバーは各々の死生観を決定づけたエピソードを順に披露することに。一方その頃、組織の民間伝承コンサルタントである Kate Corrigan 博士はホムンクルス再生の手がかりを求めて、フランスのとある小村を訪れていた……。
前回の大きな山場を越えて蛙たちとの死闘こそやや沈静化したものの、面白さは全く衰えていないシリーズ7冊目。 Corrigan が遠く離れたフランスで怪しげな蒐集家から危険な取引をもちかけられていることなど露知らず、本部ではこれまで語られなかった Daimio の黄泉返りに関する件を皮切りに Liz 、 Johann 、 Abe らが順に過去話を披露。どれも短いながらぐっと心に突き刺さるものばかりな一方で、 Abe が披露する過去の事件に Hellboy がゲスト出演したりと嬉しい要素も。既に WAR ON FROGS サーガを読み終えちまった(そういやこの辺りから既に一気読みモードに入ってたか)身からすると、単なる幕間のエピソードに見えて実はしっかり話が前進しているため読んだ直後よりむしろ後々になってからボディブロウのように効いてくる巻。
今回のストーリーは結果として昨今のコミック業界における安易な死と復活の風潮に対して正面から挑む形となった。
Damian Wayne に Barry Allen 、 Ben Reiley に Bucky Barnes — 過去に死亡したキャラクターが戦線復帰する(一応ここでは異世界からの同一人物という形は除外するがそういった形の”復活”も数えれば更に数は増える)ようなことが常体化し、キャラクターが死亡したところで読者のみならず作中のキャラクターまでもが「そのうち生き返るんだろ?」と揶揄する現在の状況は改めて考えてみるまでもなく異常だ。
こうした傾向が2000年代のいわゆるルネサンス・エイジをスーパーヒーロー業界にもたらした功績は認めるものの、その結果として本来なら一方通行である死が非聖域化されてしまえば復活のありがたみも薄れて本末転倒であると言わざるを得ない。
本作はそのオカルティックな世界観の設定上、キャラクターが死から逃げ切れる可能性は十分にあるとした上で(事実エクトプラズム体の Johann も黄泉返りの Daimio もその類だ)、敢えて Roger を死んだままにすることにより無制限な復活を阻止し、死と肉薄する物語における緊張感を維持することに成功している。
そしてこうやって死の回転ドア化を阻止した結果として、 Roger は読者の心の中に残り続けるキャラクターとなったのだ。
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B.P.R.D. Volume 6: The Universal Machine (B.P.R.D Graphic Novel)