Frank Choのデビュー作にして問題作な傑作コメディ。
Liberty Meadows: Sundays - Book One (Liberty Meadows: Sundays Vol. 1)
動物保護兼更正施設 Liberty Meadows で働く若き心理士の Brandy は、小熊の Ralph や心気症の蛙 Lesley 、可愛いアヒルの Truman らを相手に今日も珍騒動を繰り広げる。
セクシーダイナマイトなお姉さんのイラストを描く度に世間の一部敏感な方達を怒り心頭させるアーティスト Frank Cho 。本作は彼が大学在籍時に作り始めたコミック・ストリップを元にした作品だ。コミック・ストリップとは日本の漫画でいうところの新聞4コマ(ただしコマ数は必ずしも4ではない)で、とりわけ米国の日曜版では平日と異なる作品が掲載され、形式もカラーだったり割かれるスペースも大きかったりとやや豪華になる傾向がある。本作はそんな新聞日曜版に掲載されていた最初3年分の LIBERTY MEADOWS 、その無修正版。
無修正版なんて言い方をするとかなりきわどいネタが盛り沢山かと思われるかもしれないが、蓋を開けてみれば別にどうということもなく。日本人(というか私個人)の感覚では精々ちょいエロ程度なのでご安心を。
逆を返すとこの程度の内容でいちいち勝手に編集カットされたり編集に目くじらを立てられたりしていたのなら、現在の Cho が MARVEL や DC ヒロインのイラストをアップして誰ぞの逆鱗に触れてもどこ吹く風なのも納得。でもまあそういう内容に対する考えは人それぞれなので。
じゃあそういった諸々を度外視した上で肝心の内容はどうなのかと問われれば、いや普通に面白い。アーティストとして活躍している Cho だから絵に関しては問題ないだろうとは読む前から思っていたものの、実際に読んでみるとリアル調で描かれた Brandy とカートゥーン調で描かれた擬人化アニマル達とが予想以上にコマの中で共存できていることにまず驚かされた。
ギャグに関しても一般的なストリップよりも遥かにハイテンションでコミカル(ただし一部インタビューによるとネタが思いつかなかったりした時などはアヒルの Truman と犬の Oscar とのキュートなやり取りで誤魔化していたとか)。怪獣ネタや Star Wars ネタなど Cho が好きなものをふんだんに取り入れているのも楽しい。
これまでも Cho についてはアーティストとして一目置いていたものの、本作を読んでカートゥニストとしての彼に改めて心を奪われた。
媒体を変えたり版元を変えたりしながら細々と継続している本シリーズ。久しく新作は出ていないものの、過去作を少しずつ集めながら気長に待つことにしよう。