PUNISHER が半分超えたのでちょっと休憩がてら別の Ennis 作品をば。
分冊キンドル版(Amazon): Ghost Rider: Trail of Tears (2007) #1 (of 6)
南北戦争時代。北軍の兵士 Travis Parham は戦闘で負傷して死にかけていたところを黒人の Caleb に助けられる。自分の力で土地と身分を買い戻したという Caleb が家族と共に暮らす土地で手伝いをするうち、徐々に彼との友情を深めていく Travis 。やがて戦争が終結すると新天地を求めて旅立った彼はだが、数年を経て友人の土地へ戻ってきたところ、暴漢に焼き払われ荒れ果てた大地を目にする。 Caleb とその家族を殺害した白人至上主義者 Reagan らを追い始めた Travis は、やがて同じく一味を追い求める”復讐の精霊”と邂逅する。
現代の Ghost Rider である Johnny Blaze らの遥か前に”復讐の精霊”として根無し草の転がる西部をブイブイ言わせていた乗馬系燃えるガイコツさん。彼の姿を第3者の目から描いたスピンオフ的な追跡劇。
南北戦争時代を舞台にしていることとか、 GR 自身ではなく傍観者を語り部としているあたりは Frank Castle のベトナム戦争時代を描いた BORN なんかが思い出されて、いかにも Ennis 的な作品といえる。
Garth Ennis の手がける作品、特にスーパーヒーロー系作品に関して特徴を1つ挙げるとするならば、彼はヒーローそのものよりもむしろその周囲の世界であるとか人間であるとかにより注目する点だ。もっと言うなら Ennis の作品群はもっぱら変化よりも不変的なものにスポットライトを当てようとする傾向が強い。
同じように超人や超常的存在が実在すると仮定して世界や個人を描写する作品は他にも少なからずあるものの、 Ennis が他と一線を画すのはそういった要素を何らかのカタリストとしてではなく、あくまでフィルターとして人間の普遍的な性質を浮き彫りにさせるべく利用している。
本作の例を取ってみても、確かに Ghost Rider を始めとした超常的要素はそれなりに登場するものの、一般的なスーパーヒーロー作品と違い序盤にはほとんどその姿は見当たらないし、また Clayton Crane による鮮烈なアートの割にストーリーだけ考えると何だか印象が薄い感が否めない(これは上記 BORN でも Punisher のシンボリックなスカルマークがほとんど描かれなかったことなんかからも窺える)。
だがだからと言って” Spirit of Vengeance ”が全く必要なかったかと言われれば、無論そうではない。最後のページで Travis が辿り着く結論は間違いなく、文字通り地の果てまで相手を追い詰めるこの超常的な存在の影響下になければ至ることはできなかったものだ。
そう考えると本作に登場する Ghost Rider のキャラクターではなく、舞台装置 — つまり Ennis が作品に盛り込もうとするテーマを際立たせる無人格なツール — としての性質が露わになる。
キャラクターの人格を敢えて否定し、ストイックにシンボル性だけを追求したのが本作だ。
これもまた Ennis らしい創作といえるかもしれない。
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