何気に社会派な作品。
分冊キンドル版(Amazon): Spider-Man/Black Cat: Evil That Men Do (2002-2006) #1 (of 6)
かつて世間を賑わせた女怪盗 Felicia Hardy a.k.a Black Cat 。現在は真っ当な(?)セレブとして身を立てている彼女だったがある日、友人から行方不明になった女性を探してほしいと頼まれ、その調査を進めるうちにかつて住んでいた NY へ戻ってくる。一方、そんな彼女と昔は恋仲にあったこともある(現在は既婚者) Peter Parker a.k.a Spider-man も、勤めている学校の生徒が注射痕もないのに薬物中毒で死亡したという不可解な事件を耳にし、その謎を解明すべく捜査に乗り出していた。やがて2つの捜査線は Mr. Brownstone なる売人の上で交錯するが……。
ずっと読んでいるのに中々語る機会に恵まれない Spider-man から、 Marvel の Cat Woman こと Black Cat との共演エピソード。正直 Black Cat って今まで Ultimate 版とかすっかり悪者になってる現在とか、しっちゃかめっちゃかな彼女しか読んでないのでキャラクターとしての魅力はあまり感じられず。期待値もやや低めの設定で本作を読み始めたのだけれど、蓋を空けてみるとこれが案外面白かった。
ライターは GUARDIAN DEVIL で Daredevil に新時代の幕開けをもたらし、また QUIVER で Green Arrow を死から蘇らせた Kevin Smith 。映画監督としても名を馳せている彼のストーリーテリングは控えめに言っても秀逸。ただ本作を手がけるに当たっては#3まで書き終えたのに諸事情で数年間中断したり、書類ミスで Marvel からお金を中々払って貰えなかったりと色々あったとかなかったとか。
アートはペンシルに Terry Dodson 、インクに Rachel Dodson という以前 MARVEL KNIGHTS SPIDER-MAN でも見たことのある夫婦タッグ。この2人のアートはちょっと愛嬌というか柔らかみがあって Spider-man を描かせるといかにも” Friendly Neighborhood ”としての彼らしい絵になるから結構好き。女性キャラにも定評があるので Black Cat もグッド……ってそういや、 MK: SM の時も Black Cat 出てきてたっけ。
ストーリーに関して、こちらは出来云々ではなく扱っているテーマで評価が分かれそう。つまり、今回は作品のテーマとして性暴力被害が大きく絡んでくるのだが、一般にコミックのみならず映画にしろ小説にしろこの問題に正面から向き合おうとする作品は広く受け入れられづらい傾向がある。特にエンターテイメントを逃避としてしか認識できない甘ちゃんの中には話題に持ち出すだけでも拒否反応を示すものさえいる。
そんな馬鹿ちんのことをここでとやかく言うつもりはない。
だから、ここではもし娯楽を単なる現実からの逃げ場以上のものとして認識する勇気があるのであれば、本作はそれに答えるだけの質を提供していると保証しよう。スーパーヒーローのエンターテイメントに社会的問題をひっくるめてドラマに仕上げる Smith の手腕は見事だ。考えさせながらも飽きさせない1作に仕上がっている。
引き込まれるような体験を通して、外の世界に気付かされる。 — これもコミックの立派な読み方の1つだ。
分冊キンドル版(Amazon): Spider-Man/Black Cat: Evil That Men Do (2002-2006) #2 (of 6)
分冊キンドル版(Amazon): Spider-Man/Black Cat: Evil That Men Do (2002-2006) #3 (of 6)
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