大人達よりよっぽど大人な子供達。
分冊キンドル版(Amazon): Runaways (2005-2008) #18
NYでの1件以来、関係がギクシャクしてしまったNicoとChase。彼らのやり取りからチームにかつて裏切り者として死亡したAlex Wilderという少年がいたことを知ったVictorは、同時に他のメンバーが未だ彼の死から立ち直りきれずいることを悟る。
一方その頃、Alexが過去にオンライン・ゲームで知り合った仲間達は、彼とかつて彼の両親らが率いていた組織Prideのことを知り、その遺品を使ってAlexを蘇らせようと試みる。しかし儀式によって出現したのは別の人物で……。
これまでの伏線がまとめて回収されると共に、チームが後戻りできない領域へ突入するシーズン2の山場。全部読み終えた後でMarcos Martinによる#18のカバーを改めて見ると目頭が熱くなる。
今回の合本に含まれるのはチームとはぐれたMollyが独壇場の活躍を見せる一話完結の#13と、表題作の#14−18に分かれる。前者は最年少ながら実は何気にチームの中で一番大人かもしれないMollyの本領発揮と言おうか。彼女が持ち前の機転とミュータント能力の怪力を使って小狡い大人達に一泡吹かせる様はいつ見てもカタルシス。
で、その後に続く『PARENTAL GUIDANCE』編。今回はチームの裏切り者Alexの父ちゃんで息子と同じく第1シリーズで死亡したGeoffrey Wilderが若い頃バージョンで復活。彼が率いるAlexの元オンライン・ゲーム仲間がチームを罠に陥れる。
一方でNicoとChaseがキスを交わしたことがGertにバレて三角関係(?)戦争が勃発したり、Victorが体を乗っ取られて暴走してしまったのを機に彼に対する疑心暗鬼が再燃したり。今回チームは外からも中からも追いかけてきた”過去”と対決することとなる。
いずれどこかでチームに亀裂が入るのはそれまでの展開からわかっていたので、いつ昼メロ状態になってしまうか戦々恐々としながら当初読み進めていたものの、蓋を開けてみたら想像以上にあっさり。後腐れもなければ非常に建設的で、同じ頃派手に喧嘩していたどこかの鉄人と星条旗大尉に爪の垢を煎じて呑ませたいレベル。
でも、だからだろう。
Gertの死は悲しすぎる。
Brian K. Vaughanは基本的に死をドラマチックに演出しない。彼の作品で登場人物が命を落とす瞬間は唐突のないものがほとんどだ。敵陣に特攻する死ではなく、流れ弾に貫かれるような突然の死。むしろ盛り上げないからこそ、感情が昂らずにはいられない。
久々に応えるアメコミの死だった。
最近新シリーズの刊行が発表されたRunaways。ライターのRainbow Rowellはインタビューで本作に携わる条件としてGertを蘇らせることを提示したと豪語しているのを見た時、思わず我が目を疑った。
結果的にアメコミの世界では生死の境が回転扉のような現状になってしまっているものの、最初からそれを当てにしては本末転倒だろう。
私には少々ハードルの高い新シリーズとなりそうだ。
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