実にSpider-manらしい、ファンなら必読の傑作。
分冊キンドル版(Amazon): Marvel Knights Spider-Man (2004-2006) #9
遂に正体を明らかにしたMay叔母さんの誘拐犯、そしてその人物を背後で操っていた事件の黒幕。怒りを滾らせるPeterに対し、だが彼は叔母の命と引き換えにある条件を提示する。だがそれはSpider-manとして、Peter Parkerとして到底度し難いものだった……。
スーパーヒーローの黎明期にまで遡る陰謀とは一体何なのか?そしてPeterは叔母の命を救うことができるのか?(ついでに家計の危機を乗り越えることはできるのか?)
張り巡らされた線が遂に一点に結集する。
いやあ、本当に面白いSpider-manだった。これまで読んできた彼のストーリーラインの中でも一、二を争うほどの出来。これまでの記事でMark Millarを毛嫌いしてきたことに全力で猛省したいレベルの面白さ(とは言ってもAUTHORITYにだけは手は出さんが)。彼にこんなストレートなスーパーヒーロー物が生み出せるとは思ってもいなかった。
初心者から玄人まで誰でも楽しめる門戸の広さもさることながら、見事に事件のほぼ全てをPeterの目が届く範囲で展開させ、あくまで個人的な問題に留めたことで、Peterの情動が事件の緩急と直結し、実にドラマチックな物語となった。ほんと、久々に手放しで楽しめる作品です。
今でこそAvengersの一員であると同時に企業のトップとして全宇宙の危機だの次元レベルの陰謀だのに立ち向かうのが日常になっているSpider-manだけれど、正直彼は「世界を救う」ヒーローじゃないと個人的には思うんですよ。何ていうか、世界征服を企む諸悪の根源みたいのに立ち向かうのではなく、むしろそういうのばかりを相手にするヒーローに見過ごされがちな輩共を一所懸命に捌いている感じ。彼のローグ・ギャラリーにしてもテロリスト系よりも泥棒系がが多い印象だし(今でこそMarvelのトップ・ヴィランであるNorman Osbornにしても、そういう扱いを受けるようになったのは比較的最近かと)。
Spider-manというヒーローの最もオリジナルな点は彼がどこにでもいそうな人物であるということだ。その点からすると「悪の首領を倒して世界に平和を云々」ではなく、「まずは目の届く範囲から安全安心」というのが”Your Friendly Neighborhood”な彼らしいと思う。
本作は誰もが愛することのできるSpider-manを見事に描ききった作品と言えよう。
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本記事で紹介した内容含む新装版合本(Amazon): Spider-Man by Mark Millar Ultimate Collection