この合本を選んだのは別に日本が舞台になっているからとかそんな理由じゃございやせん。単に Frank Quitely のアートが見たかったからです。
かつて”ニホン”と呼ばれていたかもしれない場所に位置する Hondo City — Mega-City One にも勝るとも劣らないこの東アジアの超大都市へやって来た Judge Dredd 。両都市間における司法条約の交渉役というのは表向きの話。彼がやって来た本当の目的は MCO が Hondo City にスパイとして潜入させたアンドロイドの暴走を秘密裏に処理するためだった。しかし事件の捜査を担当する Judge の Inspector Totaro Sadu は Hondo City でも筋金入りのキレ者で……。
久々のブリコミ。かなり前からいつか手を出したいと思っていた 2000A.D. 。けれど他のアメコミ達と並行して週間コミック誌を購読するのは金銭的にも収納的にも中々きつく。細々と合本を購入している次第。
記事の題にある通り本合本は1989年から2011年にかけて Hondo City が舞台となった Judge Dredd 系エピソードを連作と一話完結併せて5話ほど掲載。ライターには Robbie Morrison や John Wagner といった 2000A.D. ではおなじみのライター陣。アーティストも Quitely の他に有名どころで言えば BATMAN AND ROBIN など DC での活躍が知られる Andy Clarke などが参加している。
Judge Dredd が登場するのは彼が初めて Inspector Totaro Sadu と対峙する上記あらすじの1話のみとなっており、その他の話では別の Judge Inspector である Shimura と、彼の新たなパートナーで数少ない女性 JI の Aiko Inaba を中心とした物語が展開される。
Quitely がアートを担当するのは主に後者の物語。デビューして間もない頃の貴重なアートを見ることができるが、既にそのリアリスティックな描写とコミカルな表現の融和というスタイルは確立されており見応えがある。とりわけ武器/ファッションのショーを襲撃する5人のスーパーモデル達にInabaが立ち向かう BABES WITH BIG BAZOOKAS ではほんの9ページの中に Quitely の才能が凝縮されたようなアクションが展開される。彼の躍動感溢れるアクション・シーンは本当に見ていて飽きない。褒めることしかできませんわい。
Judge Dredd 並びに 2000A.D. の大きな魅力はそのアンソロジーたる故に連作であっても1話1話の中にかなりの濃さがあるということ。20と数ページの中でついつい冗長な展開になってしまうことも少なくない有象無象のコミック(のみならず日本の漫画でもよくあるが)に対し、今号から次号にかけて読者を作品へ繋ぎ止めようとするクリエイターの工夫や熱意が伝わってくるものが相当数ある
そのあたりが Quitely 含め、多数の有能な才能を輩出した 2000A.D. の創作の秘密なのかもしれない。
来年の今頃には購読できるだけの財力と家屋を手にしている、うん。
原書版合本(Amazon)(Amazonの画像、バックカバーだったりインテリア・アートだったりもう少しどうにかならんのかね……): Hondo-City Law (Judge Dredd)