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HELLBOY IN HELL VOL.1: THE DESCENT (Dark Horse, 2012-14)

 文句なしの傑作シリーズ、新章突入。


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy in Hell #1

 竜を殺し世界を滅亡から救ったHellboyだったが、直後Nimue(さる英国の騎士王に聖剣を授けた池の乙女)の霊に心臓を引き抜かれ殺害されてしまう。地獄に堕ちた彼はそこで旧敵と遭遇するも19世紀のオカルティストEdward卿の助力により危機を脱する。彷徨い続ける彼はやがて空席となっている玉座の前へ辿り着く。故郷である地獄に帰ってきた彼を出迎えるものとは……。

 シリーズ最初から記事を作ろうか迷ったものの、これから正篇シリーズ前12巻やるのは中々かったるいし、邦訳版も長く出てれば実写化もされてるくらいの有名キャラだしここからで良いだろうと。前作群は今後気が向いた時にでもゆっくりやるかもやらないかも。

 まあ、出来に関してはHELLBOYだし?一般的なコミックとは比べようがないくらい良いわけで。読んでいるこちらとしては一切文句はありません。今までのシリーズを読んでいる人なら十分満足できるだろうと。

 いよいよ物語の終焉も示唆された本シリーズだが、Mignolaは本作を制作している最中もそれを意識していたのか、静かに — だが確実に — 何か”終わり”のようなものが近づいてくるのがひしひしと伝わってくる。同時にHellboyの出生に関する情報もかなり明かされるなどこれまで謎だったものの答えが開示されたり、さらには家族が登場するなど、前巻までほどの派手な展開こそないものの、情報量はかなり多い。

 クリエイターはストーリー・アート共にMike Mignola。この一目で彼のものとわかるゴツゴツしたアートは堪らん。地上にいた頃のHellboyが遭遇する霊やクリーチャーにはやれクトゥルフだの各国の怪奇譚だのと何らかのモチーフがあり、それが制限になることもあったものの、今回は全くのオリジナルで地獄を作り上げることが出来たので好き放題できたとどこかのインタビューで語っていた。
 その言葉通り本作に登場するクリーチャーの多くは(一部サタンみたいな有名人は除いて)どこか既視感がありつつも、これまでシリーズに登場してきた輩とはかなり趣を異にしている。
 また、本作ではスピンオフシリーズWITCHFINDERから主人公であるSir Edward Greyが地獄に堕ちたHellboyの水先案内人として登場しており、絶妙なキャラを立てている。機会があれば是非そちらにも手を出してみたい(でもその前にB.P.R.D.やらLOBSTER JOHNSONやらもあるんだよなあ……)。

 どちらかと言えばファンタジーである実写映画と違い、ホラーとしての側面が強い原作だが、本巻ではとりわけおどろおどろしさが際立っている。悪魔達がどこかへ去ってしまった地獄はただひたすら閑散としており、澱のような空気の肌にまとわりつく感じがページ越しに伝わってくるよう。

 地獄に堕ちた彼が今後どこへ向かうのかしかと見届けたい。



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