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NORTH 40 (DC/Vertigo, 2009-10)

 田舎町のホラーとくればショットガンぶっ放す保安官はデフォルトで。タンクトップ姿のレッドネックとご一緒に。


原書合本版(Amazon): North 40 (New Edition)


 国道沿いに位置する田舎町。怖いもの知らずの少年と少女が大学の図書館から持ち出した奇妙な書 — それを開くと時を同じくして町中の人間が意識を失ってしまう。
 翌日、町の者達の多くが悪夢のような能力と共に目を覚ます。怪力を手に入れた者、下半身が触手と化したもの、ポスターの肖像画を通して千里眼が使えるようになった者……混乱する町で保安官のMorganは心優しき青年Wyattと共に事態の収拾に務めるが、その頃町の外れに生じた穴からは何かが通り抜けようとしていた……。

 久々に隠れた逸品を発見できてホクホクしとります。Amazonのレビューなんかを見るとみんなFiona Staplesのアートばかり褒めてるけれど、これライティングもかなりレベル高いです。

 そのライターはAaron Williams。本作を読んで他の作品も読んでみたいと検索してみたものの、DCやMarvelでメジャーな仕事をしている人ではないみたい。超人の学校を舞台にした『PS238』という作品をネットで公開しているようなのでこれをこれを書き終えたら読んでみようかと思ってる次第。

 アーティストは先にも挙げた通り『SAGA』で今やすっかり1流アーティストとなったFiona Staples。猫を描かせたら右に出る者はいないと言われている彼女ですが、本作でも邪神の棲まう穴の中に放り込まれてシェーのポーズを取るニャンコが大変キュートでございます。個人的に『SAGA』が終わったら彼女はライターに転身してしまいそうな(そうでなくともカバー専門とか)予感がしてるので、こうしてインテリアで彼女のアートを堪能できるのは嬉しい(ゾンビのディープキスのアップは堪らんかったけど……)。

 内容は『MIST』+『X-MEN』とでも言ったところか。ヴァンパイアやゾンビみたいのは勿論のこと、スパイダーベビィやら土と一体化したおっさんやら(息子が定期的に水を散布)、色んなホラー超人が登場します。
 一応ホラーパニックのジャンルには含まれるのだろうけど、そんなに怖くはありません(くず鉄と死体で組み立てられた巨大ロボがその組み込まれた人間の断末魔を無限ループしながら迫ってくるのはちょっと寒気したけど)。何しろ登場人物のほとんどが全然パニックしてないんだもの(笑)。
 いや、そりゃダイナーのおばちゃんは聖書唱えながらナイフとフォークで十字架作っちゃってるけどさ。その目の前で顔が目々連みたいになった客は落ち着いてコーヒー飲んでるし、子供達は普通にプロムとか行っちゃってるし……これが田舎の順応力というやつか。
 
 あと、町に古くから住み着く老婆に見出された新米魔女の生意気っぷりが最高です。大鎌を携え「これが終わったらアタシの金像建てさせてやる。噴水付きの。」などと曰いながら町を練り歩く様とかがいかにも”田舎の救世主”って感じがして惚れ惚れしちゃいます。

 
 これだけ面白い上にいかにも続きがありそうな終わり方をするのに続かなかったのは非常に残念。Staplesが雲の上の人になってしまったため望みが薄いことは重々承知の上で、何かきっかけでもあっていつか続編ができることを期待したい。