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HOWARD THE DUCK: THE COMPLETE COLLECTION: VOL.1 (MARVEL, 1973)


Howard The Duck: The Complete Collection Vol. 1 (Howard the Duck (1976-1979))

 アヒルによる毛無し猿の観察記。

 ひょんなことから時空のねじれに巻き込まれ、毛無し猿だらけの世界に迷い込んでしまったHoward the Duck。行く先々で喋るアヒルだと驚かれるのにうんざりしながらも、彼は持ち前の反骨精神で邁進していく。巨大カエル、牛の吸血鬼、さらには会計魔術師と次々遭遇するトラブルを跳ね返す中、彼は騒動の渦中で出会った人間の女性Beverlyと行動を共にするようになるが…。

 IT社長が空を飛び、星条旗を全身タイツにした男が跋扈するマーベル・ユニバースでもとりわけ異彩を放つ青チョッキのアヒルHoward the Duck。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーでのゲスト出演をきっかけにここ数年再び注目を集めるようになった彼の初期傑作集を今回はご紹介。

 そもそも彼の初登場は沼の怪物Man-Thingが主役のADVENTURE INTO FEARのゲストキャラとして。時空が歪んで様々なタイプのキャラクターが入り交じるストーリー内でファニーアニマル枠として登場した彼が、その号のライティングを担当していたSteve Gerberの手により自らのシリーズを持つに至ったという経緯がある。

 この奇特なキャラクターが活躍する本シリーズの興味深い点は、物語が終始Howardの視点から描かれているという点だ。彼が主役なのだから当然と思われる人もいるかもしれないが、実はこういった不思議キャラが我々の世界に迷い込むようなストーリーではむしろ相棒となる人間がいて、その人物の視点から主役キャラの巻き起こす珍騒動を描くというパターンがむしろ多い。
 しかし本作はその限りではない。HowardにはBeverlyといういかにもなアメリカン・ガールが彼の相棒として登場するものの、視点はあくまでHowardのもの。
 つまり通常喋ったり服を着たりするのはアヒルで、服を着た毛無し猿(人間)が我が物顔で世界を闊歩していることこそ異常なのだという先入観がベースになっているということだ。
 故に絵面的にはHowardが際立っているものの、物語的にはむしろ人間の奇抜さ不可解さが強調されるような演出が施されており、「猿の惑星」の逆パターンとでもいうべき状況が生まれている。
 
 故にHowardは基本的に巻き込まれ型ヒーローだし、注意して読むと彼の言動はかなりリアリスティック。数話に跨ってノイローゼに陥った彼が精神病棟に収容されるエピソードなど、通常のファニーアニマルでは目にできないものだ。 
 
 とどのつまり本作はある種のフォト・ジャーナリズムとして成立しており、Howardの目は人間を写し取るカメラのレンズとなっている。人間は彼の前でただ騒ぎ回るだけで自身を戯画化しており、Howardの感想は社会批評にもなっている。

 本作をコメディと取るか、シリアスと取るかは人次第だろう。




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