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『スイート・トゥース』予告編が公開!異色の最新終末系作品の原作を徹底解説!

以前からネットフリックスで製作が進んでいると噂されていた実写版『スイート・トゥース:鹿の角を持つ少年』

本日、遂にそのティーザー予告編が公開されシーズン1の配信開始も6月4日であることが判明しました。

youtu.be


原作は今はなき DC コミックスの VERTIGO というレーベルから刊行されたジェフ・レミーアのオリジナル作品。

しかし、 DC コミックスの作品とはいってもいわゆる” DC ユニバース”に含まれる作品ではないのでどんな作品かわからないと戸惑っている方も多いハズ・・・。


スーパーヒーロー物じゃないから興味ない?

いえいえ、それは勿体無い!


そんなわけで本日はジェフ・レミーア原作によるコミック SWEET TOOTH について徹底解説してみたいと思います。

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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, Pat Brosseau, DC Comics_1

あらすじ

森の奥にある小屋に父親と住む少年ガス。

彼の頭には鹿のような角が生えていた。

善良な子として育った彼は父の言いつけを守り、9歳になるまで一歩も森から外へ出たことがない。

だが、やがて長らく病に臥せっていた父親が命を落としてしまう。


途方に暮れるガスの前に現れたのは大男、ジェパード。

自分のような人獣のハイブリッドが他にもいること、彼らが”保護区”で暮らしていることを聞かされたガスは、ジェパードと共に生まれてこのかた一度も出たことのない森を後にすることを決意する。


だが、外の世界は彼の想像を遥かに凌駕していた。


謎のウイルスにより崩壊した世界。

衰退する人類。

自分と似て非なるハイブリッド達。


ジェパードの目的とは?

人類を滅ぼそうとするウイルスの正体は?

そして、ガスの存在は世界の滅亡とどう関係しているのか?

終末へ向け、男と少年は歩を進める。

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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_2

概要

原作は DC コミックスの大人向けレーベル VERTIGO から刊行されたジェフ・レミーアのオリジナル作品。

2009年に刊行開始し、2013年の#40まで連載されました。

2020年にはスピンオフ SWEET TOOTH: THE RETURN が刊行され、2021年4月に終わりを迎えたばかり。


誰が言い始めたかコンセプトは「バンビ + マッドマックス」(個人的には『ザ・ロード』とかの方が近い気がします)。

様々なポストアポカリプス系作品からインスパイアされているということです。


ネットフリックスで6月に配信されるというドラマ版は現在第1シーズン全8話を予定。

映像版のプロデューサーにはロバート・ダウニーJrと彼の妻であるスーザン・ダウニーが就任。


主人公の少年ガス役はカナダ出身の子役クリスチャン・コンヴェリーが演じます。

マーベルのドラマ『レギオン』で主人公デヴィッドの子供時代を演じたことなどで知られている他、『ヴェノム』にもちらっと出演しているとか。


また、ガスを森の外へ誘うジェパード役は『ゲーム・オブ・スローンズ』などの作品に出演したことで知られるノンソー・アノジー

他にもナレーション役として名優ジェームズ・ブローリン( MCU でサノスを演じたジョシュ・ブローリンは息子)などの出演が現時点で明らかとなっています。


クリエイター

ジェフ・レミーア

本作のライティングとアートを手がけるカナダ出身のカートゥニスト。

元は映像学校出身だったものの、後にコミックの方が性に合っていると転向。

2005年に出版した LOST DOGS でプロデビューしました(当初は自費出版だったものの、後にトップ・シェルフから刊行された)。

自分の故郷を舞台にして幻想的な群像劇を描いた ESSEX COUNTY 三部作で大きな注目を浴びるようになり、以来活躍の場を広げます。


筆を主に使った独特な絵柄と、人間ドラマに比重を置いたストーリーに定評あり。


現在はマーベルや DC で数多くのスーパーヒーロー作品を手がけるかたわら、 ASCENDER のようなオリジナル作品も発表。

ライターとしてもアーティストとしてもジャンルを問わず精力的に活動を続けており、本作 SWEET TOOTH はレミーアのメジャーデビュー作としてしばしば代表作に挙げられます。


ホセ・ヴィラルビア

本作のカラーを担当するスペイン出身のアーティスト。

これまで数多くのコミックの彩色を手がけおり、 DC やマーベルはもちろん様々な出版社の作品に関わっています。

過去にはアラン・ムーア、ビル・シンケヴィッチ、ポール・ポープといったクリエイターともタッグを組みました。

レミーアからも信頼されており、 TRILLIUM という作品でもカラーを担当しています。

キャラクター

一部ネタバレになる箇所もあるので注意してお読み下さい。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_3

ガス

ネブラスカに位置する森の中で育った9歳の少年。

鹿のような角と耳を持つ。

父親により男手一つで育てられ、信心深い子に成長した。


森の外へ出てはいけないと厳しくたしなめられていたものの、父親の死後、侵入してきた暴漢に襲われていたところをジェパードに助けられ、彼と共に森を出る決意を固めた。

当初はジェパードを警戒していたものの、徐々に心を開くようになる。


母親は生まれる前に死亡したと聞かされており、顔は知らない。

へそがない、パンデミック発生前に生まれているなど、他のハイブリッドと異なる特徴を備える。


なお、本作のタイトルである”スイート・トゥース”とは英語で『甘い物好き』という意味があり、板チョコレートに強い関心を示すガスを見てジェパードがつけたあだ名に由来する。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, Pat Brosseau, DC Comics_4

トミー・ジェパード

父を喪ったガスの前に現れた男。

疫病発生前はホッケー選手だったが、既にピークは過ぎ、暴力沙汰を起こすなど問題視されていた。

頭に血が上りやすく、怒ると誰も手がつけられない。


ガスを”保護区”へ連れて行くという名目で森から誘い出した。

最初は幼いガスを疎んじていたものの、徐々に親子のような慈しみを覚えていく。

だが、彼がガスを連れて行った場所は・・・。


アウトブレイク直後は妊娠する妻と共に行動していた。

ガース・エニスとリチャード・コーベンが発表した PUNISHER: THE END に登場する老いたフランク・キャッスルをモデルとしているとか。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, Pat Brosseau, DC Comics_6

アボット

生き残った人類からなる私兵を指揮する。

ハイブリッドの子供やハイブリッドを身ごもった妊婦らを集め、ウイルスとの関連を掴むべくシングに研究を行わせた。

残忍で容赦ない性格をしており、特にハイブリッドは人と見做していない。

弟のジョニーに対してはわずかに甘さが残っている模様。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, Pat Brosseau, DC Comics_7

シング

アボットのもとで働く医師。

ガスの体を調べるうちに彼が他のハイブリッドと異なることに気付き、興味を抱く。

今回の実写版では女性として描かれる模様。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, Pat Brosseau, DC Comics_8

ウェンディ

アボットの管理する施設内でガスが出会った豚のハイブリッドの少女。

母子家庭で育ったものの、母と別れてひとりぼっちになっていたところを捕らえられる。

施設内でハイブリッド達のほとんどが言葉を喋られない中、ガスと心を通わせる。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, Pat Brosseau, DC Comics_9

ジョニー

アボットの施設でガスらハイブリッドを世話していた男性。

アボットの弟。

施設内で冷遇されているものの、ハイブリッド達に優しく接する。

兄がまだどこかに人間性を残していると信じている。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_10

ルーシー

ガスとジェパードが旅の途中で立ち寄ったモーテルに住んでいた。

銃を持った夫婦に娼婦として働かされていたが、ジェパードらに救われる。

その後、一旦は別れるも後に戻ってきたジェパードと再会。

行動を共にするようになる。

かつて妊娠していたが、アボットらにより胎児を摘出されてしまう。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_11

ベッキー

モーテルの娼館で働かされていた少女。

ルーシーに懐いており、基本彼女と行動をともにする。

娼婦の身から解放された後もしばらくモーテルに留まっていたが、再会したジェパードと共に建物を後にする。

アウトブレイク前はごく普通の家庭に生まれた女の子だったものの、両親をウイルスで喪った後、色んなグループと行動を共にしてきた。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_12

ガスの父

ガスの父・・・と称される人物。

ガスを一人で育て上げ、彼が森から出ないよう厳しく命じていた。

ウイルスに罹患し命を落とす。

過去に何かしたことを隠しており、その記憶に死の直前まで苛まれた。


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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_13

ハイブリッド

疫病発生と時を同じくして世界各地で生まれるようになった、人以外の動物の特徴を併せ持つ子供達。

変化が角や耳に限定されているものもいれば、ほぼ獣のような姿をした者もいる。

出現した時期や、ウイルスに罹患しないことなどから、何らかの関わりがあるものと目され、アボットはじめ生き残った人類の一部から敵視される。

生まれた時には文明が崩壊しつつあったため、まともな教育を受けていない者が多く、ガスやウェンディのように言葉を操れる者は少数派。


見どころ

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Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_14

秀逸なポストアポカリプスドラマ

この記事を書く前に日本語でどう紹介されているのか検索してみたんですが、とあるエンタメニュースサイトで本作を指して「ファミリー向けアドベンチャー」と書かれていたので驚きました。

とんでもない誤解です。

今回公開された予告編を観てもやや明るめな印象を受けるかもしれませんが、基本的に本作は終末もの。

裏切りあり。

バイオレンスあり。

究極の選択に苦渋の決断もあり。

少なくとも原作はまったくファミリー向けなどではなく、むしろ R-15 に近い作風です。

カルトや私兵や謎の研究施設といったこのジャンルならではの要素もふんだんに盛り込まれており、ポストアポカリプス系作品の代表作 THE WALKING DEAD に負けるとも劣らない勢いで人間の暗い性をあぶり出してきます。

加えて、ウイルスの正体はもちろんのこと、ハイブリッド達の存在や、主人公であるガスの出自など本作ならではの謎もあちこちに散りばめられており、一見変化球に見えますが、中身はかなり直球な終末ものに仕上がっています。


独特の絵柄で展開されるドラマ

ジェフ・レミーアといえばその独特の絵柄がまず目を引きます。

日本はもちろん、海外でもあまり類を見ない彼ならではのスタイルに最初はややハードルの高さを感じる人もいるかもしれません。

・・・が!

逆にこのリアルでもカートゥーンでもないこの絵柄だからこそ物語のドラマ性を際立たせます。

レミーアのラフなデッサンと陰影巧みな構図から描き出されるシーンは緊張感たっぷり。

読み始めれば案外すぐに慣れてしまうどころか、あっという間に病みつきになってはまってしまうこと間違いなしです。

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Emi Lenox, Jeff Lemire, Jose Villarrubia, DC Comics_15


豪華なゲスト・アーティスト

本作では過去の回想シーンなどでレミーア以外のアーティストによる作画を見ることができます。

具体的な名前を挙げるなら、後にレミーアと PLUTONA で再タッグを組むエミ・レノックス

MIND MGMT などのオリジナル作品で数多くのヒットを飛ばすマット・キント

それに MARCH などの作品で業界内外で高く評価されているネイト・パウエル

そうそうたる顔ぶれが本作にアートを提供し、作品にメリハリをもたらします。


読む順番

本作は基本的に一本道なので容易に読み進めることができます(一部単行本に含まれていない短編あり)。

各号

シンプルに#1から#40まで読み進めれば大丈夫です。

単行本

おそらく値段的にも分量的にも一番お求めやすいサイズかと。

書籍版はやや品薄なのでご注意下さい。



デラックス・エディション

単行本二冊ぶんほどの内容を収めた豪華版。

設定資料なども見たい方はこちらです。

コンペンディウム・エディション

全部一冊まとめて読みたいという方はこちらを。

ただし刊行時期は6月なのでご注意を。

THE RETURN

本編の主人公ガスにそっくりの容姿や同じ名前を持つ少年を主人公にした最新スピンオフ。

地下施設でカルトに育てられた彼が外の世界へ出ていこうとすることに端を発し、陰謀が動き出します。

本編を読んでから読むのがベストですが、単体でも読めないことはないので、本作から試してみるというのもありかと。

クリエイター陣は基本的に同じです。

なお、単行本の発売は8月なので今すぐ読みたいという方は#1から#6まで各号単位でお求め下さい。



徐々にスーパーヒーロー系以外も登場するようになってきたコミック実写化作品。

本作も予告編を観る限りではかなり見応えのある内容になる予感。


しかし、原作コミックにはコミックならではの持ち味があります。

予告を観て実写版に興味が湧いてきた方も、単純に面白いコミックが読みたいという方も。

是非是非 SWEET TOOTH を読んでみて下さい!


それでは本日も良いコミックライフを。