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解説『スーパー・クルックス』 - 近日アニメ化の超人犯罪コミック! -

以前からアニメ化すると何度か話題になっていたマーク・ミラーとレイニル・ユーの SUPER CROOKS

しばらく音沙汰ないなーと思っていたら、先日『ジュピターズ・レガシー』のプロモーションインタビューでミラーの口から完成に近づいており、6月に開催されるアヌシー国際アニメーション映画祭で予告がお披露目になることが明かされました。

各30分の全13話という構成。

製作はボンズだそうです。

配信元となるネットフリックスでは既に下記の大まかなシノプシスが記されたサイトが用意されました。

www.netflix.com

In this anime adaptation, small-time crook Johnny Bolt recruits the ultimate crew for one last heist -- for real! From comic book legend, Mark Millar.
(日本語版:最後の大強盗を計画した小悪党のジョニー・ボルト。究極のメンバーを集めて一世一代の勝負に挑む。コミック界のレジェンド、マーク・ミラーの作品のアニメ化。)
- 出典: NETFLIX 『 SUPER CROOKS 』公式サイトより

今日の記事では来るべき予告編公開、そして配信開始に先立ち、原作の基礎情報を解説してみようと思います。

なお、一部ネタバレあるかもなので注意して以下お読み下さい。

あらすじ

多くの超人がひしめき合う世界。

刑務所から仮釈放されたスーパーヴィランのジョニー・ボルトはかつての仲間、ザ・ヒートことカーミンから助けを求められる。

ギャンブルの不正を暴かれた彼はカジノを取り締まる元ヴィランのサラマンダーから見せしめとして1ヶ月以内に1億ドル用意することを要求されていた。

一肌脱ごうと強盗を計画するジョニーだったが、周囲はどうせすぐスーパーヒーローに捕まるだけだと反対する。

「それならスーパーヒーローのいないところで仕事をしよう」

元婚約者ケイシーをはじめとしたクルーを再結集してスペインへやってきたジョニー達。

スーパーヒーローのグラディエーターも仲間に引き入れ、狙うはかつての大ヴィラン”ザ・バスタード”。

果たしてジョニー達の一世一代の犯罪は成功するのか!?

クリエイター

マーク・ミラー

もう本ブログでも何度か扱っているので詳しく説明する必要はないであろう、スコットランド出身のライター。

『キック・アス』『キングスマン』の他、最近ネットフリックスで配信開始した『ジュピターズ・レガシー』などの原作も手がけた人物です。


彼がライティングを手がけたミラーワールド作品群は共通した(?)世界観の物語だということは以前も書きましたが、本作も例外ではありません。

本作 SUPER CROOKS JUPITER'S LEGACY 同様、 KICK-ASS の世界で封切られた映画という設定です。

こうした映画はかつて WANTED でヴィラン達が世界中からヒーロー達の痕跡を消した際に人々の記憶に残った残滓だと言われています。

作品でクロスオーバーすることはあまりないものの、あるいは今後派手にキャラクターが入り乱れることもあるかもしれません。


...というか、この記事書いてる最中に調べてみたらちょうど一週間ほど前にミラーのツイートから JUPITER'S LEGACY と同一の世界観であることが言及されてました。

レイニル・フランシス・ユー

フィリピン出身のアーティスト。

90年代の中頃にデビューした後、主にマーベルで数多くの仕事をこなすようになり、08年の大型クロスオーバー SECRET INVASION などのアートを担当。

近年はジョナサン・ヒックマンがライターを手がけた X-MEN の新シリーズでメインアーティストを務めました。

本人によると自らの作風は”ダイナミック疑似リアリズム”だそうで、ノワールコミックのような黒いベタ塗りによる陰影と、細いペンさばきから作り出す独特の質感が特徴的。

絵も大変魅力的ですが、よくよく見ると構図などからも学べるところは多く、創作を行う人であれば一度は分析しておいて損はない絵師といえます。

ミラーワールド作品としては他に SUPERIOR も手がけています。

キャラクター

ジョニー・ボルト

ヴィラン。

5年前にガーディアンに捕まり強盗の罪で収監されていた。

刑務所から仮釈放したところをカーミンから助けを乞われる。

米国はヒーローだらけですぐに捕まってしまうからことから、スペインで仕事をする計画を思いつく。

ケイシーとは婚約までした仲。

結婚式当日に強盗をするどころかあっさり捕まったことで愛想を尽かされるものの、本人は諦めていない。

電気を操る能力を持つものの、戦闘力は決して高くない。

ただし機転が利き頭の回転が速く、今回の計画もほぼ彼が1人で立案した。

ケイシー

ジョニーの元仕事仲間にして(元)婚約者。

現在はダイナーで働いている。

計画に加担したくはないものの、カーミンのため助力に同意。

結婚式の当日に(自分達の将来のためとは謂え)強盗を働いたどころかあっさり捕まって5年間刑務所にぶち込まれたジョニーに愛想を尽かしたと言っているが・・・?

テレパシーを使い、周囲の人間に思い通りの幻覚を見せることができる。

ザ・ヒート

ジョニーの元仲間にして今回計画を立てるきっかけとなった人物。

ギャンブルに目がなく別の超人とカジノで不正を働いていたところをサラマンダーに見つかり、見せしめとして1ヶ月以内に1億ドルの慰謝料を用意することを要求される。

困窮した挙げ句、出所したてのジョニーのもとを訪れた。

若い頃は面倒見が良く、様々な駆け出しヴィランに業界のいろはを教えた。

ジョニーをはじめ、ケイシーやゴーストなど恩義を感じているものも少なくない。

レイガンから放つ熱線で壁などを溶かすことが可能。

ザ・ゴースト

ジョニーの元仲間。

現在はヴィランを引退し、建築業で成功を収めている。

当初は計画に参加することを渋っていたものの、若い頃世話になったカーミンのため協力に同意する。

肉体を透過させる能力の持ち主。

TKマッケイブ

テレキネシスを使うジョニーの元仲間。

通称TK。

妻子がおり運送業で生計を立てているものの、元スーパーヴィランという理由で様々な制限を受けており暮らしは楽ではない。

フォーキャスト

ジョニーの元仲間。

天気を操ることができるが、頭の中で具体的に思い描く必要がありややコントロールが悪い。

ディーゼル兄弟

ジョニーの元仲間で高い肉体治癒能力を持つロディー&サミー兄弟。

現在は地下闘技場で行われる元スーパーヴィラン同士のデスマッチで生計を立てているが、その能力から相手に敬遠されており稼ぎは多くない。

最後の試合で勝ち取ったパワーグローブとロボティックアームを使う。

ザ・グラディエーター

5年前にジョニーをたたきのめして捕まえたスーパーヒーロー。

数いる超人達の中でもトップクラスのヒーローで、プラエトリアンのような悪徳ヒーローからさえ一目置かれている。

妻子を持つが実は同性愛者で、そのことを知ったジョニーに脅され彼の計画に加担することに。

ヒーローとしての能力は作中で明言されていないものの、身体能力が高くジョニー程度のヴィランでは束になっても敵わない。

ザ・プレトリアン

スーパーヒーローという立場を利用して裏では数多くの悪事をなしていたグラディエーターの元同僚。

起訴されたものの無罪を言い渡され、その後バスタードのボディガードとなった。

ザ・バスタード

ジョニーが今回の強奪計画で標的として選んだ元スーパーヴィラン。

一流のテレパスであり、思念波を送り込んで相手の頭を破裂させる。

かつては誰もを震え上がらせるほどだった極悪人だったが(今は違うとは誰もいっていない)、現在は過去を恥じ、投資ビジネスで巨額の富を築いている。

ボディーガードとして悪徳ヒーローであるプラエトリアンを雇っている。


ネットフリックスの公式ツイッターからアニメ版のデザインが上がっていたので参考までに。

作品の魅力

ダサさとカッコよさが絶妙

リーニル・ユーのデザインはいつ見ても惚れ惚れします。

まずはヴィラン達がコスチュームに身を包んだこの姿を見て下さい。

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出典: SUPER CROOKS #4 by Leinil Yu, Mark Millar et al, MILLARWORLD

いかにもな全身タイツや作業着といった衣装。


スポーツウェアのような衣装を着た下のグラディエーターと比べると差は歴然。

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出典: SUPER CROOKS #1 by Leinil Yu, Mark Millar et al, MILLARWORLD

単純な格好良さどちらがヒーローでどちらがヴィランであるかはもちろん、その力量差も一目瞭然。


けれど、ダサさと格好良さのバランスが絶妙なジョニー達の衣装は逆に好感が持てます。

実際に動き回っているアクション・シーンも格好いい。

活躍している時はもちろんのこと、ぼこぼこにされている姿でさえ様になります。

三流ヴィラン達”クルックス”の活躍

ヒーロー物のファンで一度もヴィランの勝利を願ったことない人っていませんよね(偏見)?

特に小物臭のするヴィランがいかにも正義面したヒーローに一杯食わせるのって、独特のカタルシスがあると思うんです。

そういうのが好きな方に本作は断然おすすめ。


本作 SUPER CROOKS というタイトルにある”クルックス( CROOKS )”とは、大まかに詐欺師をはじめとした犯罪者(の複数形)のことを指し、いわゆる悪役のことを指す”ヴィラン”よりはやや小物感のあるニュアンスです。

ミラーの作品だと同じヴィランをメインに扱った作品として WANTED があるんですが、あちらに登場するのは基本的にトップクラスの文字通り”スーパーヴィラン”。

対する本作で大物ヴィランの金庫に押し入るのは”スーパー”とは名ばかりの中途半端なヴィランばかり。

まさに”クルックス”なジョニー・ボルト率いる連中が知恵を働かせて”ヴィラン”や”ヒーロー”といった大物にぎゃふんと言わせる姿には独特の痛快感があります。

ジョニー達ももちろん痛い目を見ますが、一方で相手にもちゃんと一杯食わせており。

”倍返し”とか好きな方はかなりツボではないかと思われます。

アイデア

マーク・ミラーが手がける作品は、そのアイデアが大きな魅力の1つです。

ただのオタク青年がヒーロー活動を始めたら( KICK-ASS )、ヴィランがヒーローに勝ったら( WANTED )、もしも現代米国にイエス・キリストが再誕したら( AMERICAN JESUS )…等々。

本作で言えばニューヨークのような大都市でばかり活躍するスーパーヒーローに「もしヴィラン達がヒーローのいないところに行ったら」という、ある意味皮肉めいた発想が本作の原点となっています。

ジャンル物、特にスーパーヒーロー物の常識に敢えて疑いの目を向けてそこを捻ってみせるという、コロンブスの卵みたいな発想力がミラーの大きな魅力です。


その一方でミラーの作品はストーリー面でアイデアを活かしきれてないな、と思うこともしばしば。

どれとは言いませんが、折角のいいアイデアが勿体無いな、と思ったことも私自身あります。


本作はそんなミラーの作品でも成功例といえるでしょう。

一発ネタのアイデアで終わることなく、驚愕の事実やプロットツイストで読む者の興味を惹き続け、最後の最後まで飽きさせないエンターテイメントに仕上がっています。

ストーリーのテンポも良いし、普段はややイキった言動がやや鼻につくミラーのキャラクターも、本作では窃盗物と相性が良い。

ヒーロー物が好きな方のみならず、映画『オーシャンズ』シリーズのような窃盗物が好きな方にもおすすめできます。

また、ミラーの作品はショッキングな展開を求めるあまりややドン引きするような描写も多く見受けられますが、本作はそのあたりもあんまないですね。

R-15な残酷描写もないではないものの、ユーのアートのおかげかあんまグロくないです。


読み方

実はこの作品、何らかの権利問題が発生しているのか現在に至るまで紙の書籍でしか刊行されておらず、電子版は未刊行。

今後電子化される可能性もあるかもですが、今は紙一択です。

ただし単行本一冊なので読みやすくはあると思います。

また、今後 SUPERCROOKS: BOUNTY HUNTERS という続編の刊行も(一応)予定されています(延期され現在まで続報ありませんが・・・)。
www.hollywoodreporter.com


注意点

この記事を書いていてわかったんですが、本作はややこしいことに”SUPER”と”CROOKS”との間にスペースを挿れない”SUPERCROOKS”と表記する場合と、スペースを挿れる”SUPER CROOKS”と表記する場合あり、サイトなどによって対応がまちまちになっています。

アマゾンだと前者でヒットします。ネットフリックスでは後者の表記になっています。

ミラーは”SUPERCROOKS”でツイートしてますね。

検索などかけた時に片方の表記でしかヒットしない場合があるので情報収集の際はご注意を・・・。

なお、本サイトでは単行本の表記に合わせて”SUPER CROOKS”としました(今後変更するかも)。




以上、スーパークルックスに関する基礎情報でした。

興味が湧いた方はアニメ版の配信に合わせ、この機会に是非読んでみて下さい。


では、本日もよいコミックライフを。

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