VISUAL BULLETS ー今日もアメコミ三昧ー

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完全版・サブスタックを巡る動きについて

(一回ボツにしたけれどやっぱ上げてみることにしました。すぐに引っ込めるかもです)

ここ数日業界を賑わせているサブスタックについて軽く。

愚痴です。

以下、それを承知で寛大な心の方だけお読み下さい。


全く知らない人向けに自分の認識してる範囲で少し解説するとサブスタック(SUBSTACK)というのは2017年に創設されたニュースレター配信ウェブサービスのことです。

クリエイターが購読者を有償(無償も可能な模様)で募り、プランに応じた内容でメールマガジンを配信します。

日本でいう note とか pixivFANBOX とか ファンティアとかあのへんのニュースレター版と考えて頂ければイメージしやすいかな、と思います。

んで、このサブスタックがここ最近各業界のクリエイターやジャーナリストに声をかけて利用者を募っており。

アメリカのコミック業界も例外ではなく、現在 AMAZING SPIDER-MAN のライターを担当しているニック・スペンサーであるとか、 BATMAN のライターを担当したスコット・スナイダーとかジェームズ・タイノンとかが参加を表明。

新作のデジタル版をはじめコラムや創作講座なんかを配信するプランもあるという中々の充実した内容となる模様。

ただ、現行の X-MEN 関連タイトルを監修しているジョナサン・ヒックマンとかも参加を表明しており「あれ、 X-MEN はどーすんの?」などという点も含めて話題を呼んでいるところです。


さて、クリエイターの創作的経済的自由を高めるという点で歓迎する声も多く聞かれる一方、比較的新しい流通スタイルなので当然っちゃあ当然なんですが将来性を疑問視する声も存在します。

あと、サブスタックからニュースレターを配信している著名人の中には過去に LGBT に対する差別とも取れる発言をするなどして問題を起こした人物であるとか、ネットでハラスメント行為を働いたと言われる人も少なからずおり、そうした発信者を放置してたり歓迎してたりするプラットフォームってどうなの?という声もあり。

加えて上述のとおりタイノンやヒックマンについては BATMAN や X-MEN の連載が道半ばのようでもあるのでそれを途中で投げ出すのか、などの懸念も。


まあ、なんにせよ先週あたりから界隈をざわつかせているというわけです。


インフルエンサーの処置どうこうという話については(上記のような放置が事実なら無責任だなという印象は抱きつつ)ぱっと調べた限りでは詳しいところまでわからないのでひとまず置いておくとして。


うーん、正直これについて諸手を挙げて歓迎するのは個人的にちょっときついなー…というのが正直なところ。

というのもこれ、プランの内容にしろ価格設定にしろ明らかに財布に余裕があってウェブで金銭をやり取りするのに抵抗がない中年読者をターゲットにしてますでしょう?


そーゆーことしてる場合じゃないだろー、という。


ちょっと前から新規出版社の乱立ムーブが落ち着いて、新たに”流通面へのニューアプローチ”がここ最近業界で流行りつつある中( BAD IDEA とか TKO STUDIOS とか)、今回の動きもその1つだと個人的には認識してるんですが。

どうも迷走している感が否めないというか。

どっち向いているんだかよくわからんというか。


今業界が力をいれなきゃならないことは外からの人間を呼び込むことであって、既存のファンをさらに囲い込むような今回の動きはあんま肯定的に捉えられないというのが正直なところです。



確かにクリエイターの権利関係とか流通についてのどーのこーのとか問題山積みの業界なのは事実で、おそらくそういうのに対する問題意識とかからこうした動きは起こっているのだと思います。


それはそれで早々に対処する必要があることは重々承知しているつもりですが、それでもいま外の読者さんに門戸狭めるような真似してどうすんの、と。

業界の閉鎖性に起因してセクハラ問題とかパワハラ搾取とかが横行している中で、関係者がいま最優先しなきゃならないのは若年層をはじめとした「あまりコミックに親しみのない読者予備軍」に向けたアプローチですよ。

実際、児童向けコミックとか日本の漫画とかが米国で大きく盛り上がってるのはここらの新規読者層が全然開拓されてなかったからという一面もありますし、そこはまだまだ盛り上がる余地がたくさんある領域です。

そして凝り固まったコミック業界を打破するのにも、こうしたニューカマーの存在は欠かせません。


重視こそすれ排除することは絶対避けなければならない筈なのに、トップクリエイターがこぞって既存の中年読者しか眼中にないようなアプローチしてどーすんだよぅ、という。


子供がウェブで金銭のやり取りをおいそれとできると思っちゃいけません。

親の許可をとるのも結構心理的ハードル高いんです。

新規読者は会員登録1つ求められるだけで逃げちゃうことも少なくないんですよ。

今やらなきゃならないのは海賊版ダウンロードと同じくらい手軽に作品を入手でき、その上でしっかりと収益を確保できるビジネスモデルの模索なのに、サブスタックは前半部分をまるで考えてないどころか むしろそれに逆行しているじゃないですかぁ。


いや、一応誤解のないように言っておくと、大人向けの作品とか既存の読者の存在も等しく重要ですよ?

自分も別に既存の読者をないがしろにしてまで新規読者に媚びろと言っているわけではなくて。

ただ、その保守性閉鎖性が問題視されている現在のコミック業界に必要なのは若い読者と外からの読者をたくさん引き寄せて風通しを良くすることなのに、今これをやる意味ってあるんですかね、と。

新作は後に紙としての刊行もあるとはいってるけれど、そんなのいつになるかもわからないし。


今のコミック業界の息苦しさを打破するには、ファン層から弾き出される未成年読者とか巷に溢れている読者予備軍のことを常に最優先に想像を巡らせるくらいでようやくちょうど良いくらいなのに。

既存の読者をさらに囲い込んで閉鎖的にするような真似してどうするんだろう。

現状においてこうした囲い込みはファン層の保守化と格差を生むだけじゃないかと思います。

今回の動きを好意的にクリエイター主導による新手の販路開拓だと捉えたとしても、業界を牽引するほどのビッグネームが”今””一斉に”やるべきことじゃないでしょう。



それに今回の囲い込みは多かれ少なかれファンの少数先鋭化をもたらすものであって、現状で参加を表明している著名クリエイターくらい読者層が分厚ければこそ上手くいくものであって。

中堅とか駆け出しのクリエイターが同じことをやって成功するかというと正直あまり期待できないかと。


別にこういう流通スタイル自体を否定するわけではないし、むしろ日本で行われてる FANBOX とかファンティアみたい試みはどんどんやってみてほしいと思ってます。

ただ、日本におけるこうしたスタイルの成功は圧倒的な漫画人口が背景にあるわけで。

コミック人口がそこまでの規模でない海外で同じアプローチをしたところで使いこなせるのは一握り。


確かに今のコミックショップばかりに依拠する販売スタイルとか、卸売業者が数社に限定されている流通形態とかは大問題で、今回のアプローチは業界を牛耳る大手へ揺さぶりをかけたように見えなくはないんですが。

実際はただ顔を背けただけで、それ以外については無駄に新規読者へのハードルを上げて閉塞感を押し上げているだけでむしろ逆効果に見えるというか。

業界全体に及ぼす好影響はあったとしても限定的じゃないかと思います。

ホント、なんじゃらほいって感じです。


幸いなことに現段階では自分の興味あるプランとかはないので関係ないっちゃないんですが。

著名なクリエイターが数多く参加しているだけにがっかりというか。

業界の行く先を結構声高に憂いたりしているようなクリエイターなんかもいるので、なんかもやっとしてしまった、というか。

逆を返すと今回サブスタックに参加を表明した人達は一線を退いて過去作で築いたファンベースを糧にする”昔の人”になる選択をしたのか、と寂しさと呆れが半々というのが正直なところです。

あの面子なら他にもっとやれたことあったじゃん?

これにより新しいクリエイターの活躍の場が広がることを期待すると無理やり好意的に捉えるしかないのかな。


あんまりこういうネガティブな発言を発信するのは好きじゃないんですが。

最近どっち向いてんだからわからない”新しいスタイル(笑)”が度々登場するんで、流石にそろそろ一言言わせて貰いたくて今回は愚痴らせて頂きました。

事実誤認とかあったらごめんなさい。

後に評価をひっくり返すかもです。あしからず。

さいごに。

今回改めて会員登録不要、なんなら作品を無料で入手することも可能な PANEL SYNDICATE ってすげえなあ、と思い知らされましたです、はい。


こちらからは以上です。