VISUAL BULLETS ー今日もアメコミ三昧ー

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

『 SCUD THE DISPOSABLE ASSASSIN 』( IMAGE )

不満が積もってる?恨みが溜まってる?

なら最高の仕返しをしよう!

「スカッド:使い捨て暗殺者」を使えば最高の復讐が今すぐあなたのもとに!

暗殺任務を達成した後はすぐに自爆するので後腐れもなし!

さらにさらに!

新しいハートブレイカーシリーズは”嫌悪”が標準装備!

あなたの憎しみを相手に思い切りぶつけることができます!

さあ、今すぐ最寄りのスカッド専用自動販売機へGO!

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Rob Schrab, Image Comics 1

新コーナーです!

・・・といっても、まあ、今までの感想記事にもう少し情報付け足しただけなんですが。

実は以前から感想だけ書いている記事だとどうしても熱が一方通行になってしまいがちというか、あまり作品に興味を持って貰い難いなーというのを感じてまして。

じゃあ、もう少し情報量を解説記事並に増やしてみようということで、ちょっと仕様変更して様子をみることにしました。


で、本日ご紹介するのがこちら。

使い捨て暗殺ロボのハイオクアクション・コメディ『 SCUD THE DISPOSABLE ASSASSIN 』


あらすじ

使い捨て暗殺ロボットが自販機で売られるようになった2025年。

マネキン製造会社に務める従業員は工場内に潜むとある障害を取り除いてもらうため、使い捨て暗殺ロボット”スカッド”1373号を購入し、暗殺を命じる。

早速工場内に潜む”ジェフ”を見つけ、追い詰めていくスカッド。

だがその最中、彼は自分の背中に記載されている注意書きを読んでしまう。

「このユニットは対象の排除と同時に自爆します」

・・・マジかよ!?

窮地に立たされたスカッドはとっさの判断で相手を瀕死の状態にすると救急車を呼び、ジェフを生命維持装置に繋ぐ。

ホッとしたのも束の間、今のままでは入院費用が足りずジェフを生かしたままにはしておけない。

ジェフを、ひいては自らを生かすため、スカッドは費用を稼ぐため雇われ暗殺者として働き始める。

囚人、ならずもの、地獄の使いとなったベンジャミン・フランクリン・・・。

機転を活かし次々と強敵を退け、危機を打破するスカッド。

だがやがて、彼は世界を破滅させようとする陰謀に巻き込まれていく。

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Rob Schrab, Image Comics 2

概要

本作はエミー賞を受賞したコメディ脚本家としても知られるロブ・シュラブが手がけたオリジナル SF アクションコメディ(きっかけはシュラブが当時の恋人にフラレてしまったことだとか)。

94年に刊行開始すると作品は好評を博するようになり、97年にはゲームになった他、立ち消えとなってしまったものの映像化の話も何度か持ち上がりました。

しかし本編は98年に#20でストップ(こちらもまたフラれたことが原因だったそうな)。

物語はクリフハンガーで終わったまま10年近く放置されていましたが、シリーズ全てを収録した単行本がイメージから刊行されるのに併せ、2008年に完結を迎えました。

シュラブは現在米国で大人気のカートゥーン『リック・アンド・モーティ』のクリエイターであるダン・ハーモンとも親交があり、ハーモンも本作の一部脚本を手がけている他、スピンオフ LA COSA NOSTROID のライティングも担当しました。

『リック・アンド・モーティ』に登場する便利屋キャラクター、ミスター・ミーシークスはスカッドがモデルになっているとか。

コミカルな会話とハチャメチャなアクションからなる本作はクリエイターなどから高く評価されており、ネットを探すとライリー・ロスモスコッティ・ヤングといった著名アーティストによるファンアートも見つけられます。


キャラクター

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Rob Schrab, Image Comics 3

スカッド

本作の主人公である使い捨て暗殺ロボット「スカッド」のハートブレイカーシリーズ1373号。

マネキン工場に潜む”ジェフ”を退治するため工場の従業員の手で起動されたが、戦闘の最中に対象の排除と同時に自らも自爆してしまうことに気付くと、とっさにジェフを植物人間状態にすることで難を逃れる。

その後、ジェフに繋がれた生命維持装置の料金を支払うために雇われ暗殺者となる。


全身オレンジ色という出で立ちで、ボディに収納した2丁拳銃を愛用する他、あらゆる武器の扱いに長けている。
ちなみに弾切れの際は自分の指を弾丸にすることも可能。


持ち前の機転と不屈の精神によって数々の難を逃れるが、やがて自分が世界全体を巡る大きな陰謀の歯車であることを知る。


ジェフ

マネキン製造工場に潜伏し、従業員を捕食していたところ、スカッド1373号の標的となった怪物。

頭はコンセントプラグ、手はネズミ取り、胴体にはイカを巻き付けており、膝頭の口から支離滅裂な言葉を吐き散らす。

スカッドに半死半生の目に遭わされた後、生命維持装置に繋がれていたが後に復活する。

控えめに言って意味不明だが、その正体は・・・。


ドライウォール

スカッドの相棒として暗殺者派遣会社から遣わされた。

チャックだらけの袋にボタンの目を付けたような容姿をしている。

中身と呼べるものはないが、全身のチャックはある種の四次元ポケットのようになっており、武器や日用品などあらゆるものを大量に収納している。

子供のように無邪気な性格をしており、基本的にセリフは全て”||||||”と表記されるが、スカッドらとの意思疎通は成立している。



ススーディオ

任務中に街を破壊してしまったスカッドを排除するべく暗殺者派遣会社から差し向けられた暗殺者。

自身は人間の女性だが、ロボットに性的に惹かれるテクノセクシュアル。

当初スカッドとは敵対する立場だったが、共闘するうち徐々に惹かれ合っていくようになる。

学生時代には怪盗ブラック・オクトパスとして活躍していた。


オズワルド

スカッドより1つ前の型の使い捨て暗殺ロボ112263号。

長い耳のようなパーツと、歯を剥いて笑っているような口が特徴。

ミスター・タフガイ大会にてスカッドと出会う。

2年連続で大会に優勝したが”手が早い”ことを問題視されて感情のレベルを下げられていたが、スカッドを援助するため元に戻る。

製造会社のスポークスパーソンと恋人関係にあった。


ヴードゥー・ベン

ヴードゥー魔術を使用するベンジャミン・フランクリンその人。

マフィアとの抗争中に巻き込まれたスカッドと遭遇。

大量のゾンビを使役し、ある目的のために働く。


本作の注目ポイント

本作で注目すべき点はずばり、そのアメリカのカートゥーンを思わせるようなハチャメチャ感と、日本の少年漫画にも共通するドラマ性です。


ハチャメチャなアートとストーリー

本作を読んでまず印象的なのがそのおもちゃ箱の中身をぶちまけたようなハチャメチャ感とドタバタ感。

絵からストーリーから本作はとにかく派手な描写でごった返しています。


そのことはキャラクターデザインなどからも見て取れ、スカッドの宿敵であるジェフを始め、腰蓑に石槍のみを身に着けた半裸姿のヴードゥー・ベンなど奇天烈なキャラクターが次から次へと登場します。

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ジェフ Rob Schrab, Image Comics 4

主人公のスカッド自身は比較的シンプルな出で立ちですが、その行動面でまったく引けをとらない存在感を発揮。

力量差のある相手に対し、思い切りの良いアクションと機転の効いた戦略で立ち向かう様子は読んでいて痛快の一言です。


癖のあるキャラクター達が縦横無尽に動き回り、ぶつかり合う様子は『リック・アンド・モーティ』のファンはもちろん、マーベルのデッドプールや DC のロボなどといったキャラクターが好きな方にもおすすめです。


最後まで手を抜かないドラマ性

絵やストーリーがハチャメチャ過ぎると最後の方はエネルギー切れを起こすことがあります。

つまり、話を締めるために都合の良い展開になったり、プロットの一部を有耶無耶にしたり。

そういった作品はそれまでの興奮があっただけにことさら残念に感じてしまいます。


しかし、本作に限って言えばそんなことはありません。


インパクトのある幕開けで読者の興味を惹き付けると、そのまま派手なアクションや予想外の展開で捉えて離さず、ドラマチックなフィナーレに持ち込む。

決してストーリーやキャラクターにブレーキをかけることなく、むしろ終盤に思い切りアクセルを踏み込んでゴールに向かいます。

ミッションを重ねていくうちに感情が伴い、ドラマが生み出されている様子は日本の少年漫画などにも少し似ているかと思います。


本作は言ってみれば少年漫画の手法で描かれたカートゥーン。

アメコミを読んだことがないという人にも是非読んで頂きたい作品です。


今から読む方法

本作を読む場合、基本的にシリーズの本編#1−24+ドライウォールのオリジンを描いた短編 DRYWALL: UNZIPPED からなる単行本 THE WHOLE SHEBANG を読むことになります。


800ページ近くあるものの、アクションが中心で会話は一般的なコミック作品よりも少ない印象なので比較的さくさく進むかと。

紙の単行本は現在入手困難となっていますが、電子版であればアマゾンなどで手に入ります。
(追記:新装版が7月に刊行される運びとなったようです)

また、上でも述べたとおり本作の一部ライティングを手がけているダン・ハーモンがライティングを担当した LA COSA NOSTROID などいくつかスピンオフがあるものの、これらは2021年4月現在まで単行本の形になっていません(そのうちまとめてほしいところ・・・)。

ただ、それらは本編とほとんど関わってきませんし、一話だけあるクロスオーバーも該当話の冒頭に注釈があるのでご安心下さい。


以上、『 SCUD THE DISPOSABLE ASSASSIN 』の紹介でした。

興味がある方は是非手に取って見てください!


それでは、本日も良いコミックライフを。



・・・新コーナーとか言いながら名前付けるの忘れてた。