Rumble Vol. 1: What Color Of Darkness
そのカカシ、凶暴につき。
あらすじ
都会の片隅にある寂れたバーに突如大剣を携えて出現した大男。店で働く青年 Bobby は客を襲撃するその怪人物を何とか撃退するものの、警察に通報して戻ってみるともぬけの殻、しかも襲撃者がただのカカシであると知り困惑する。やがて残されて大剣を担いで帰宅する彼の前に異様な生物が立ちはだかる。窮地に陥った彼の前に再び姿を現したのは、件のカカシだった…。
異形狩りは正義?悪?
最近はもっぱら Mike Mignola と共に B.P.R.D. のライティングを務めている John Arcudi 。彼がそこで出会ったアーティスト James Harren 、そしてカラーリストの Dave Stewart らと共に IMAGE から発表したオリジナル作品は、1万年の時を越えて復活した古代戦士がカカシの体でモンスターをばったばったとなぎ倒していくアドベンチャーファンタジー。
とにかく”痛快”という言葉が似合う作品だ。
まず James Harren の作画にすごく好感が持てる。彼のカートゥーン寄りな絵柄で描く不気味で格好いいカカシの Rathraq や、気持ち悪くもどこかひょうきんな異形 Esu などのデザインはどれも個人的なツボにはまる。毛色はだいぶ異なるが、水木しげるの描く妖怪なんかとよく似た刺激で、長時間眺めていても飽きない。
加えてそんなキャラクター達による戦闘シーンも迫力満点だ。 Rathraq が大剣を軽々と振り回して怪物を真っ二つにするシーンはキレが良く、なおかつバーバリアン・アクションらしい重量感があって気持ちがいい。
Dave Stewart のカラーも相変わらずの手腕。彼は基調となる色を決めてシーンごとの雰囲気を作るのがとにかく上手く、本作でも暖色系で戦闘シーンを、寒色系で不気味なシーンをぐっと引き立てている。
また、本作は設定が中々面白い。
カカシとなって蘇ったバーバリアン戦士 Rathraq が目の敵にする怪物たち Esu は確かにかつて人間に世界を譲り渡すのを拒否して戦争を起こしたものの、今ではすっかり人間社会の中に混じって暮らしており、別に何らかの危害を加えているわけではない。
一方で既に自分の部族は遥か昔に死に絶えており、戦う大義を失った Rathraq は半ば私怨で大剣を振るっている。
言ってみれば妖怪であれば誰彼構わず襲撃してくる暴走鬼太郎みたいな存在で、Esuにしてみればいい迷惑、彼らの戦闘は謂わば正当防衛というわけだ。このややもすると敵味方で善悪逆転してしまいかねない関係が本作独特の魅力となっている。
両者の争いに巻き込まれた人間 Bobby はこの辺りに薄々勘付いており、今はまだ渋々Rathraqを手伝っているという風だが(友人の Del はノリノリ)、今後これがどう物語を動かしていくか気になるところだ。
アートもストーリーも第1章からがっちり心を掴んでくる。久々に大当たりな作品だった。
こんな人にオススメ
・派手な戦闘のあるコミックが読みたい
・キモかわいいクリーチャーが好き
・バーバリアンアクションが好き
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