VISUAL BULLETS

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

プラネティーナへ愛をこめて

ネットフリックスで配信されている RICK & MORTY シーズン5第3話 A RICKCONVENIENT MORT を視聴しました。

以前本ブログで紹介した(今は当該記事引っ込めてます) SCUD THE DISPOSABLE ASSASSIN を手掛けたロブ・シュラブによる脚本なんですが。

いや、やられました…。

まず知らない方向けに説明すると RICK & MORTY という番組はアメリカのアダルトスイムでジャスティン・ロイランドダン・ハーモンが製作している大人向けカートゥーン。

アナーキストで天才科学者のリックと、彼の孫であるモーティが様々な冒険を繰り広げるという SF 作品で、ロイランドが映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドク&マーティを元ネタに自主制作したパロディ作品が元になっています。

主人公であるリック&モーティをはじめとした破天荒なキャラクター、随所に散りばめられたブラックユーモア、根底に流れる独特の思想などが人気を博し、米国で高い評価を受けている作品です。


さて、今回のエピソードではモーティが環境保護系スーパーヒーロー、プラネティーナ(90年代のカートゥーンヒーロー、”キャプテン・プラネット”が元ネタ)に一目惚れするところから始まります。


以下、あらすじ書くの面倒だし、配信されたばかりの作品についてあんま解説しすぎるのもあれなんで、観た人向けにネタバレ前提で書きます。



……で。

観ました?

あのエンディング。

あのランディング。


私はあれ観た瞬間思わずうめき声が出そうになりましたよ。

ロブ・シュラブすごいです。


シーズン3で姉のサマーを振ったネイサンを懲らしめた辺りから徐々に祖父に勝るとも劣らない一面を見せるようになったモーティ。

本エピソードでもプラネティーナを解放するために指輪の持ち主の(元)子供達をあっさり殺害してしまいます。

あそこからどんどんエコテロリスト化するプラネティーナにモーティがドン引きして破局に向かうところまでは私も想像できましたよ。

でも、正直もっとごちゃごちゃした感じで破局すると思ってたんですよね。

何かモーティもモーティでヘマ犯すとか、プラネティーナがもっとヤバい一面を露わにするとか。

シーズン3エピソード9のジェリーみたいな情けない痴話喧嘩みたいな、どう転ぶにせよ笑える感じに展開になると思ってたんですよ。


それがですよ。

蓋を開けてみたらあの。

誤解を恐れず言うなら、実に平々凡々とした破局ですよ。

なんか、普通のカップルみたいじゃないですか。


しかもですよ。

プラネティーナと破局したモーティを心配した母親のベスが様子を見に来たラスト。

目に涙を浮かべて母にすがりつくモーティと、そんな彼を慰めるベスと。


姉の元カレの肉体を裏返したり、祖父のガジェットで警官とやり合ったりするけど、モーティ・サンチェスはまだ14歳のガキンチョなんですよ!

忘れてたけど、モーティはまだ母親の胸の中で泣いてしまう子供なんですよ!


そして決定打がその時のベスの台詞。

” MOMMY'S HERE. ”

これ。

これですよ。

"I"でも”MOM”でもない。

”マミー”ですよ。


あのラストシーンでただベスがモーティを抱きしめるだけで誤魔化さなかった。

” MOMMY'S HERE. ”

でやり抜いた。


うわーってなりましたよ、ほんと。

14歳ってそういう年齢ですよ。

大人が考えているよりたくましく、自分で考えているよりはるかに脆弱。

それをあそこまで的確に描いた。

そんなフィクションで難しいと言われる子供、それも14歳という微妙な年齢の子供を描ききった!

ベスがモーティを”子供”として扱ったあの瞬間、モーティは作り手に都合よく美化された”14歳のキャラクター”ではない、ただの”14歳”として完成しました。


しかもほんの10分前にはジョン・ウィックばりの冷酷さと的確さで元子供達を始末するエクストリームぶりを発揮させた後でこれですよ!


忘れてました。

ロブ・シュラブはそうですよ。

自販機で売られた暗殺ロボを黙示録レベルにまでエスカレートさせた後、ごく身近な教訓の話にソフトランディングさせるという神業みたいな乱高下で読者の首を真綿で締めてくるタイプの作家でした。


ここ最近エスカレートするだけして瓦礫の山から這いずり出る話が多かった中(特に前回)で、エスカレートするだけして最後母親によしよしして貰う主人公の姿を見るとは思ってもみませんでした。

いやーすごいものを観た。



……

はい、そんなわけで勢いだけで書いたために配信を観た人にしかわからない(観た人でもわかるか?)ような記事を書きました。


気になる方は是非ネットフリックスで RICK & MORTY を観てみて下さい。

ハマる人はとことんハマりますよ。


以上!