今日はちょっと軽めの感想で。
ヘンシン 1 (IKKI COMIX)
(こちらは日本語版)
えー、本書はケン・ニイムラが2014年に小学館の IKKI COMIX から出した短編集の英訳版でタイトルどおり「変身」をテーマに紡いだ13編からなる1冊。先日、東京の某アメコミ屋を偶然訪れたところ、破格の値段で売られていたところをゲットしやした。
「実質、海外コミックじゃなくて英訳版漫画じゃないの?」という意見もちらほら聞こえますがケン・ニイムラは漫画とかコミックとかの垣根を超えた世界の宝なので大丈夫。
収録されている13編は時にエッセイ風だったり時に他作品と繋がっていたりとかなり自由な作風となっており、混じりっけなしのケン・ニイムラがエンジョイできる。個人的には3番目に収録されている泥酔して終電を逃した男が不思議な女性と遭遇する” LAST TRAIN ”とか林の中へピクニックに来ていた4人の男女(+おっさん)を描いた6番目の” WATERMELON IN SUMMER ”とかがお気にです。
日本語を英訳すると生じる翻訳もの独特のノリは正直得意じゃないんだけれど、本作ではそこまで気にならず結構良い読書体験。逆にそういうの全然平気という方や翻訳系漫画を読みこなれた海外読者にはかなり響くものがあるんじゃなかろか。オリジナルの日本語版も読んでみたくなりますね。
ケン・ニイムラってコミックという媒体をよく理解した上でふわふわした”描写”をはっきりと”演出”できる、数少ない魔術的リアリズムの使い手だと思うんだ。こういう方は業界でも重宝すべきだと思うし、このブログでも今後どんどん取り上げていきたい所存です、はい。
そうそう東京のアメコミ屋といえばその時ついでで他にもアメコミを売っていると言われているところをいくつか回ってみたんですが、やっぱリアル店舗に足を運ぶと色々見えてくるものがあるんですね。良くも悪くも溜飲が下がる思いがしました。
正直、マーベルやDCのスーパーヒーロー物と、インデペンデント系でも向こうで受けているものばかりを店頭に並べているだけでいいの?と思わなくもない。ヒーロー物がどうしてもメインになってしまうのは海外も同じ問題を抱えているからひとまず置いておくとして、もう少し日本で受けそうな作品を開拓してみてもええんじゃなかろか、と。
『 SAGA 』が向こうでメガヒットしてるからってこっちでもウケるとは限らないし、逆にあっちでくすぶっていたようなのが何かのきっかけでこっちでバカ売れする可能性もなきにしもあらず。というかそういう化学反応みたいなのを見たいというのが私の個人的願望なわけでして。
まだまだ海外コミックが日本に浸透しきっていない中好き勝手言っていることは認めつつ、やっぱり今後長い目で見るとそういう布石も必要なんじゃないかなと思ったりしました。