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DC: THE NEW AGE OF HEROES 全作品の#1をまとめてレビュー!

 今日刊行された『THE UNEXPECTED』をもってようやくラインナップが全て揃ったDC『THE NEW AGE OF HEROES』
 そこで今日は各作品の#1を読んでみた感想を記事にしてみようかと。

 まず以下がラインナップ一覧(多分刊行順)。

1.DAMAGE


Damage Vol. 1: Out of Control (New Age of Heroes)

あらすじ: 
 イーサン・エイブリーという名の兵士を改造して作った生物兵器”ダメージ”が突如脱走。彼を生み出した軍の特殊部隊が差し向けた追手と戦闘状態に陥る。

 一言で言えばDC版ハルク。
 ぶっちゃけ情報量という点においてはラインナップ中最も低い。ただこの手の物語は「怪物VS軍隊」という最低限の構造さえ提示できれば十分なので、その分派手なアクションを詰め込む方向に大きく振り切ったのはむしろ賢い選択かと。
 個人的には「そうそうこういうハルクが見たかったのよね」という破壊シーンを見せつけてくれて大変満足。かゆいところにようやく手が届いた感じ。

2.THE SILENCER


The Silencer Vol. 1: Code of Honor (New Age of Heroes)

あらすじ:
 元リヴァイアサン(リーグ・オブ・アサシンズから分裂したタリア・アル・グール率いる暗殺者集団)の一員で現在は家族と共に平穏な日々を送るオーナー・ゲスト(Honor Guest)。だが組織の内紛に巻き込まれ彼女は再び戦いの日々に引き戻される。

 今回のラインナップ中、個人的には一番高評価な作品。
 #1の時点で主人公に関する5W1Hが全て提示されている上に戦闘シーンが2度もあり、教科書にしても良いほどの完成度。家庭を持つ女性というバックグラウンドや周囲に無音フィールドを作り出す能力というのも目新しく興味が持てた。掴みとしてはばっちりかと。
 またアートについてもロミータJr.の描く戦闘シーンはどれも好きだけれど、ことキャラクターが頭を使ってぱっぱと動く戦闘は殊の外、見栄えが良い。

3.SIDEWAYS


Sideways Vol. 1: Steppin' Out (New Age of Heroes)

あらすじ:
 ゴッサムにチャレンジャーズ・マウンテンが出現した際(『DARK KNIGHTS METAL』)、謎のエネルギーと接触し、空間内に裂け目を生み出しそこから好きな場所へ瞬時に移動する能力を手に入れた青年デレク・ジェームズ。彼は親友に作ってもらったコスチュームを身に着けて”サイドウェイズ”としてネットで有名になろうとするが……。

 手に入れた能力で有名になろうとしたら墓穴を掘るというパターンのDC版スパイダーマン。
 ケネス・ロカフォート(Kenneth Rocafort)とダニエル・ブラウンによるアートは今回のラインナップ中で最もお気に入り。主人公デレクの親友アーニーが大変かわいい。
 一方でスピーディに進んだ物語にはアクションこそあれ、まだ戦闘シーンを見ることができなかったのはヒーロー物としてちょっと残念だったかも。
 

4.THE TERRIFICS


The Terrifics Vol. 1: Meet the Terrifics (New Age of Heroes)

あらすじ:
 自分の研究が悪用されていることを察知し実験を阻止しに来たミスター・テリフィック。だが彼は実験に利用されていたメタモルフォ、そして行動を共にしていたプラスチックマンと共にダーク・エネルギーを介して異世界へ飛ばされてしまう。さらに3人はそこに囚われていた少女、ファントム・ガールことリニャ・ワッゾと出会う。

 名前からも察することができるDC版ファンタスティック・フォー。最近はチームが一同に会するまで何冊もかける作品が多い中、#1からメンバーを勢揃いさせることができたことはそれだけで十分評価に値する。
 スーパーヒーロー物というよりは冒険ものといった風で、戦闘シーンはややあっさりだが派手なシーンはたくさんある。アクションとドラマのバランスが良く、アートもストーリーも見栄えが良い。
 またメンバーそれぞれにスポットライトが当てられており、読み終える頃にはメンバー全員に好感が持てるようになっている。『DARK KNIGHTS METAL』でプラスチックマンに興味を持ったような人は本作でさらに彼の自由自在な变化を見ることができるので大変オススメ。

5.THE IMMORTAL MEN


The Immortal Men Vol. 1 (New Age of Heroes)

あらすじ:
 不思議な存在と秘密の学び舎が登場する夢に悩まされる青年ケイデン・パーク。ある日、夢で見た謎の男を目にした彼はその後を追いかける。一方、歴史の影から人類を守護してきた不死者の集団”イモータルメン”はかつてない存亡の危機に晒されていた。

 ジム・リー(Jim Lee)のアートによるものか、設定はそれなりに違うものの読後感は90年代のX-MENを彷彿とさせるというか。
 だからこそというわけではないが、創刊号からアートが切り替わってしまったのは(かなり似た絵柄とは言え)やや気になった。ストーリーについても色々起こってはいるが肝心な情報が提示されていないため煮え切らない印象。
 一方で『DARK KNIGHTS: METAL』で大好評だった”ある人物”なんかも登場するので、彼のその後が気になる方は試しに手に取ってみるというのもありかもしれない。

6.THE CURSE OF BRIMSTONE


The Curse of Brimstone (2018-)

あらすじ:
 かつて炭鉱で栄えたものの今や過疎地となってしまった町に住む青年ジョー・チャンバーレイン。困窮した生活から何とか脱出しようと苦慮する彼の前にある日、不審な男が現れ「町を再び注目の的にしてやる」と契約をもちかけるが……。

 悪魔と契約して火だるまに……という、何となくゴーストなライダーを連想させる作品。
 この手の「何かを犠牲に何かを手に入れようとする」対価系ホラー(勝手に命名した)は決断に”仕様がなく”至るまでのプロセスが重要なのはわかるものの、願わくばもう少しアクションが見たかったかも。
 ただ派手なシーンを犠牲にして主人公のジョーを丁寧に描いた分、彼自体には好感が持てるようになった。

7.NEW CHALLENGERS


New Challengers (New Age of Heroes)

あらすじ:
 死を目前にした状況から引き抜かれ集められた4人の男女。彼らの前に姿を現した謎の男”プロッフ”は彼らを新たな”チャレンジャーズ・オブ・ザ・アンノウン”のメンバーに任命する。命と引き換えに危険なミッションに送り込まれることを強いられた彼らは早速”ある品”を回収するよう命じられる。

 うーん……ちょっと評価に迷う。必要な情報はしっかり提示されているし、各々のメンバーについても掘り下げようとしている姿勢が伺える。チャレンジャーズらしい巨大生物との対峙もあり、物語としての完成度は高い方だと思う。
 ただ一方で読んでいるこちらを直に興奮させてくれるような要素に乏しく、いまいちのめり込みきれない。今風の絵柄で昔の話を読んでいるような感じ。いっそホラーにでも舵を切った方が良かったのではと思わんでもない。
 今後の展開によっては冒険活劇ものとして大化けする匂いもする。
 

8.THE UNEXPECTED

(カバー画像なし)

あらすじ:
 軍需産業の実験体にされたことで24時間に1度戦わなければ死なない体となってしまったファイアーブランド。彼女の心臓を狙う”バッド・サマリタン”から襲撃を受ける彼女の前に、2人の超人を引き連れたネオンという謎の人物が姿を現す。

 正直あんまり期待していなかった(どころか今日刊行されるということもつい数日前に知った)ものの、読んでみると意外や意外。何気に面白いぞ、これ。キャラクターがとかストーリーがとかじゃなく、謎の臭わせ方が。
 ファイアーブランドの素性だけ手っ取り早く紹介してさくさく物語を進行させつつ、言葉の端々に伏線をちら見せするようなやり方はあからさまだけどかなり有効です。
 それなりに「え、まじ?」と思うような展開もあり、今後が気になってしまった時点でクリエイターの勝ち。


 以上が各作品に関する私個人の感想でした。

 今後リーフで集めるも良し、単行本が出るまで待つのも良し。今後興味を持った作品を読んでみる際の参考にして頂ければこれ幸い。