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『 COPRA 』今マーベルより DC より熱い!ネオ復讐作品を徹底ガイド!

野心家。
ならず者。
ミスフィット。
ごろつき。
つまはじき。

異端の彼らにある共通点は2つ。

任務。

そして復讐だ。

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Michel Fiffe, Image Comics 1


断言します。

過去10年に登場した中で最もエキサイティングな作品です。少なくとも私の中では。


概要

COPRA は2012年にクリエイターのミシェル・フィーフェが自費出版で刊行したアクション作品。

アートもライティングも両方こなすという人はそれなりにいるものの,レタリング、果ては製本まで自分でやってしまうというのはプロだと中々見当たらないかと。

その時点で並々ならぬこだわりを感じます。


ぱっと見て頂ければ「あれ、何かマーベルと DC に似たようなキャラいない・・・?」と思うかもしれませんが。

それは気のせいです。

繰り返します。

それは気のせいです。


・・・まあ、冗談は置いておくとして。

実際本作はフィーフェが猛烈なファンである80年代のスーサイド・スクワッド、その二次創作同人誌『 DEATHZONE !』という作品に由来しており、アマンダ・ウォーラーデッドショットに容姿や能力が似たキャラクターが登場。

マーベルからもドクター・ストレンジパニッシャーを始めとしたキャラクターを彷彿とさせる人物が登場します。


では本作は単にマーベルや DC を模倣しただけのパスティーシュ的作品なのか?

否!

本作は確かにマーベルと DC を連想させる要素が数多く登場するものの、単なるオマージュに留まるものではありません。

そうした作品群の影響下にありながら、それを独自の表現で昇華させ、全く新しいエンターテイメントに仕上がっています。

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 2

はっきりいいましょう。

私は1年分のマーベル作品を貰えるか COPRA の新刊を1冊貰えるか選べと言われたら迷うことなく後者を選ぶでしょう。

称賛しているのは私だけではありません。

ブライアン・マイケル・ベンディスエド・ブルベイカーマット・フラクションをはじめとしたコミッククリエイターはもちろんのこと、『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』でピューリッツァー賞を受賞したことで知られる作家ジュノ・ディアズなど、業界の内外から高く評価されているのが本作『 COPRA 』です。


あ、ちなみにいわゆる”スーパーヒーロー”は登場しません。


あらすじ

極秘政府機関 COPRA(コプラ)

世界各地から集められたスネに傷ある者達からなる特殊部隊。

野心家ソニア・ストーンの指揮の下、彼らは今日も極秘任務へ繰り出す。


ある日、フィールド・リーダーのマンヘッドはチームを率いてとあるアイテムの回収へ向かう。

それは、オカルトに傾倒していた小村の農家が誤ってこの世に招いてしまった謎の破片。


撤収作業を終え帰路に着いていたチームは、しかし待ち伏せしていたかつての仲間、ヴィータス率いる傭兵達からの奇襲を受ける。

戦いの最中、回収したアイテムが突如暴走。

村を含めた周囲一体は焦土と化す。


辛うじて生還したのはチームの半分。

ソニアと合流したマンヘッドらが事態を説明していたところ、彼らは自分達がテロリストとして指名手配されていることを知る。


身の潔白?


そんなことはどうでもいい。

マンヘッド・・・ベニチオ・サンドヴァルの頭の中にあることはただひとつ。

ヴィータスへの報復だけだった。

キャラクター

 マンヘッド

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 3

本名はベニチオ・サンドヴァル。
チームのフィールドリーダー。

故郷の親戚から急ぎの連絡を受け、ソニアに無断でチームを回収任務にあたらせる。

しかし、帰路でかつてチームの一員だったヴィータスからの襲撃を受けたことで回収した破片が暴走。

辛くも生還するも、二次被害で故郷や家族を失い、以後復讐のためヴィータスを追う。

超人的能力は持たないものの、肉弾戦のエキスパート。

また寡黙ながら思慮深く、リーダーとして癖のあるメンバーをまとめ上げる。

ソニア含めチームからの信頼も厚い。

ソニア・ストーン

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 4

COPRA の創始者にして、チームの司令塔。

権謀術数でワシントンDCを成り上がってきた傑物であり、その行動力やコネを駆使して、様々な特殊能力者をチームに引き入れては危険な極秘任務へ送り出す。

本人に超人的な能力はなく、普段は戦闘に参加せず後方からチームを指揮する。

銃を向けられても眉一つ動かさない胆力の持ち主である。

ロイド

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 5

両腕に装着した銃を使用する COPRA 屈指のマークスマン。

本編開始前にソニアへの”借り”は返したとして一線を退いていたが、復讐を希望するベニチオに請われてチームに復帰する。

息子の1人をとある組織に誘拐された末に殺害されている過去を持ち、残された妻ともう1人の子供とは離れて暮らしている。

誘拐犯である” CCT ”という組織を追っており、それに関係する人物は喩え仲間であろうと容赦しない。

ワー

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 6

本名はパトリック・デール。

普段は冴えないオタク青年といった風だが、任務では愛用のマシンスーツを身に着ける。

家庭の事情から荒んだ生活を送っていたところ、見兼ねた発明の天才であるおじにスーツの開発を手伝うよう言われ、立ち直る。

おじが死亡した後、譲り受けたスーツと共に再び足を踏み外しかけたところをソニアに COPRA 入りを持ちかけられた。

チームでは武器庫兼パワーハウスとして活躍する。
グシーに気がある様子。

グシー

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 7

記憶喪失で放浪中、誤って COPRA が所有する敷地内に侵入したところをソニアに発見される。

見た目は地球人の女性だが超人的なパワーとスタミナを備え、高所からの落下にも耐えた。

実は”オチゾン( OCHIZON )”という異次元出身の貴族。

繁栄のため強制的な進化を自身へもたらす一族の儀式に反発してこの世界に逃亡してきた。

肉弾戦に優れているものの本人は銃器を好んで使用する。
また、戦闘時にはワーと組むことが多い。

ラックス

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 8

COPRA の世界とは別の世界からやってきた元警官。

犯罪組織のボス、ディディを追う中で逆に捕らえられてしまい、次元と次元の間にある”アンチゾーン”という場所に放り込まれてしまう。

偶然にも開いていた通路を抜けて COPRA の世界にやってきた。

正義感が強く曲がったことが大嫌いだが頑固過ぎるきらいもあり、ソニアらと反目することも少なくない。

持ち主の意思に反応する特殊なベストを着ており、周囲に発生するエネルギーを身に纏って戦うが、大きすぎる力に振り回されることも。

ちなみに本編開始時にチームが回収した欠片は、彼が着ているベストのプロトタイプの一部。

グレイシー

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 9

キューバ生まれのマイアミ育ち。
子供時代から多彩な才能を発揮し、体操アスリート、モデル、アクション女優と転向を重ねる。

不倫による離婚や薬物スキャンダルに見舞われて窮地に陥っていたところ、 COPRA に誘われた。

超人的能力はないものの、体術を駆使し、数多くの窮地を切り抜けてきたチームの古参。

カスティージョ

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 10

かつて COPRA のトレーナーをしていたが、家族を殺されたのを機に引退。
サイボーグの傭兵集団と組んで賞金稼ぎをしていた。

指名手配となったソニアから連絡を受けるとすぐさま求めに応じたが、運悪く隠れ家で COPRA と傭兵仲間らが鉢合わせてしまい戦闘に陥り、仲裁に入るものの結果として傭兵仲間からは裏切り者と見做されて刺されてしまう。

回復後、本格的に COPRA に復帰。
ソニアに次ぐチームのナンバー2として、新メンバーのトレーナーを務める傍ら、数多くのミッションをこなした。

体の大部分を機械化しており、胸のロゴも単なるスカルマークではなくかつての仲間の頭部パーツを有効活用したものである。

ゼニア

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 11

魔術を学ぶ若き魔導師。

師であるヴィンセントの助手兼弟子であるが、それ以上の感情を抱いているフシも。

彼の元恋人であるソニアが指名手配されてやってきたことから、一連の騒動に巻き込まれる。

後に戦闘で件の破片を飲み込んでしまい、圧倒的な力を得るものの、代わりに心の平穏を失ってしまった。

ヴィータス

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 12

かつて COPRA の一員だったが、後に離脱。

力に溺れるようになり、ベニチオ達が回収した謎の破片を奪おうとする。


注目ポイント

本作の魅力は、コミックの熱心な研究家でもあるフィーフェによる見たことのないアートと、懐かしくも新しく予想外に満ちたストーリーです。

60年代のアート

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 13

フィーフェはあらゆる年代のアーティストから影響を受けた上で、それを独自の絵柄に昇華させており、ひと目見れば本作のアートが他に類を見ないことはわかっていただけるでしょう。

中でも影響が色濃いのはスティーブ・ディッコ。

スパイダーマンやドクター・ストレンジをはじめとした数多くのキャラを生んだ人物として知られる、60年代を代表するアーティストでしたが、ある時期を境に業界から退いてしまいます。

フィーフェはそんな晩年のディッコと手紙などを通じて親交を深め、アートなどコミックに関する様々な話題について語り合い、多くのことを学んだと語っており、本作でも往年のディッコを思わせるトリッピーな描写が散りばめられています。

本作に登場するラックスというキャラクターもディッコが生み出したシェイドというキャラクターから着想を得ているものかと。

また、影響を受けているのはディッコだけではありません。他にもジャック・カービィやジム・ステランコといった名匠を思わせる構図やコマ運びもあり、どのページも60年代のシルバーエイジを現代にアップデートしたかのようでじっくりと眺めていたくなるような仕上がりです。

70年代のバラエティ

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 14

70年代のスーパーヒーローコミックといえば新メンバー編成となった X-MEN やティーンタイタンズをはじめ、ジャック・カービィの FOURTH WORLD サーガ、ルーク・ケイジのような一風変わったヴィジランテなど、キャラクターのバラエティが大きく花開いた時期でもあります。

本作がそれを意識しているかどうかはわかりませんが、豊富なキャラクターのバラエティからはそんなブロンズエイジを思い出させるものがあります。

喧嘩屋、マークスマン、魔術師、サイボーグ・・・と、人種性別問わず様々な出自の登場人物が次から次へと登場。

数十にも及ぶキャストが登場する中、魅力的な群像劇が展開します。

とりわけ主要キャラクター6人にスポットライトを当てた単行本の ROUND THREE (#13から18)は人物によってアートのスタイルを変えており、必見です。

80年代のストーリー

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 15

80年代はコミックにとってストーリー面における大きな転換期という見方があります。

グリム・アンド・グリッティという言葉で形容されるような暗く重いストーリーはやりすぎることもありましたが、 WATCHMEN などによってコミックが大人の鑑賞にも耐えうるものなのだと知れ渡るようになったのもこの時期です。

80年代はドラマやアクションで現在にまで強く影響を及ぼしています。

フィーフェが愛読するスーサイド・スクワッドもこの時期に生まれたものです。

その二次創作から始まった本作も”復讐”を大きなテーマとしていることからもわかるとおり、80年代の影響色濃いストーリーが随所で展開されます。

しかし、本作はG&Gが苦手という人も心配無用。

あれの欠点だった”くどさ”を削ぎ落とすことに成功しており、アドレナリンラッシュを促す読書体験のみを維持しています。

90年代のアクション

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Michel Fiffe, Image Comics, Bergen Street Press, 16

フィーフェが常日頃から SNS などで愛を語るのが90年代の作品。

ロブ・ライフェルドやトッド・マクファーレンといったアーティストによって描かれたタフガイ同士のぶつかり合いに、やたらでかい銃の撃ち合い。

本作でもこれでもかというほどド派手なアクションシーンが展開されます。

海外のコミックはもちろんのこと、日本の漫画でも見たことのないような全く新しいシーンの数々はどこかアートのようにも描かれており、いつまでも見入ってしまうこと請け合いです。


読み方

本作を読む上で多少ハードルを高くしてしまっているのが読む順番。

同人誌としてデビュー

イメージから新シリーズ

各号は同人誌、単行本はイメージ(今ここ)

・・・という経緯を辿っているため、ナンバリングなどがやや煩雑になります。

とは言え電子版であれば#1から最近の#39までナンバリングが揃っているので今から読み始めるのであれば、電子版で買うのがおすすめです。

電子版は KINDLE COMIXOLOGY で購入することができます。

6話ずつ含まれている単行本は各号買うより若干安いものの、特別編の#25がどれにも含まれていないことと、現在電子化されているのは#31まで収録した ROUND FIVE (5巻目)までであることに留意する必要があります。


なので具体的な集め方としては

①単行本で ROUND ONE から ROUND FIVE まで購入


② #25を購入


③ROUND SIX 以降の単行本の刊行および電子化を待つ
OR
③#32(あるいは VOL.2 #1 と表記されることも)以降を各号購入

という形になると思います。
③については、なるべくフォーマットを揃えて集めたい方は上、最新のストーリーに追いつきたいという方は下の方法を選ぶと良いでしょう。


正直、紙での購入はおすすめしません。

というのも、確かに電子版より紙の方が最新号の刊行がはやいことは事実ですが、同人誌時代とイメージ時代とで紙の質やサイズが異なっていること、コロナの余波などから入手が難しい巻や号も少なくないこと、また現在は再び同人誌形態に戻っているため#38以降は購入にやや手間がかかるなどの問題があるためです。

よほどのこだわりがない限り、電子で集めるのがいいでしょう。




・・・まあ、私はこだわり強いですから!

というわけで、私は刊行が発表された #40 を買いにいくのでこの記事はここまで!


最後に COPRA はシルバーエイジ以降のスーパーヒーロー作品を凝縮したような魅力と、ミシェル・フィーフェの技能により、これまで誰も見たことのない最高のエンターテイメントに仕上がっていることを言っておきましょう。


もう一度断言します。

COPRA は過去10年に登場した中で最もエキサイティングな作品です。

以上!


では、本日もよいコミックライフを!!