サイレントコミックの新境地。
あらすじ
飛来するミサイル。
無数の爆発。
荒れ果てた大地。
残された人類。
選ばれしパイロット。
これは1人の女性が宇宙で出会う神秘と可能性の物語。
感想
カートゥニストのジェシー・ロナガンがコンベンションなどで自費出版されていたものを、昨年秋にイメージから刊行した SF 作品。
自費出版だった頃は新聞サイズで頒布されていたらしく、刊行されたバージョンも通常より一回り大きいサイズ。
昨夏に刊行されてから静かに話題を呼んでいた56ページの短編です。
自分もコミックス・ジャーナルの記事とかユーチューブチャンネル STRIP PANEL NAKED などで取り上げられているのを見て最近入手しました。
あらすじをかなりあっさり書きましたが、それは本作がサイレント作品であるため。
台詞はもちろんのこと、背景の一部としての言葉やオノマトペさえ一切ない作品です。
全て1ページ縦7×横5コマというフォーマットで構成されています。
サイレント作品の醍醐味は文字情報がないぶん、想像の余地が大きいということです。
作家が思考を凝らした物語をどう読み解くか。
ちょっと高度なクイズを解いているかのようです。
読む者に能動的な読解力が求められるという点では、小説などを読む感覚に近いかもしれません。
正直話が進むにつれ「?」となるところもないではなかったものの、そこをどう解釈するか考えるのも含めて他では中々味わうことのできない読書体験でした。
ヘルゲやメビウスといったバンドデシネ作家の影響が指摘されていますが、個人的にはその他にもジャック・カービィとか映画『ファンタスティック・プラネット』なんかの影響も随所から感じられます。
ぱっと見、ややモダンアート風のピクトグラムとでもいったところ。
単純な SF としての面白さと、見たことのない表現からの刺激が堪らないです。
電子版は800円程度。
やや高めの同人誌を1冊買うくらいの値段です。
是非是非たくさんの方に読んで頂きたい作品。