この作品、以前にも感想記事をアップしたつもりだったんですがいつの間にか消えてたんで書き直し。
まあ、最近読み直したことで新しい感想も湧いてきたしちょうど良いかと。
舞台は1983年米国メイン州に位置する島町。
護送中に囚人達が脱走したという一報を聞いて屋敷に立てこもる主人公。
直後、館内に何者かが侵入する。
命の危険に晒された彼女が咄嗟に手に取った斧。
それは刎ねた首を生かしたままにする、呪われたバイキングの遺物だった……というお話。
本ラインナップの幕開けを飾った作品で、ライターは HILL HOUSE COMICS 全体の監修者でもあるジョー・ヒル。
ジョー・ヒルはホラー小説の大家であるスティーブン・キングの息子としても知られています。
キングと舞台のメイン州という要素で「おっ」と思った方もいるかも知れませんが、本作にも小ネタとして囚人達が収監されていた場所として”ショーシャンク”の名前が登場するなど、微妙にキング要素が散りばめられています。
アーティストのレオマックスはヨーロッパのアダルト向けコミック出身の人物。
本作の主人公である少女ジューンもコケティッシュな魅力を放つデザインのキャラクターです。
……とはいうものの、彼女はただ逃げ惑うばかりのキャラではありません。
呪われた斧を威勢良く振るい、自分の命を狙った連中を逆に返り討ち。
刎ねた首をカゴの中に集め、少しずつ過去に自殺した別の少女にまつわる事件の真相に迫っていきます。
一応必死さは伝わってくるんですが、コミカルさもにじみ出るという作品。
ついさっきまで殺す殺されるの関係だった2人が、体を失って取り乱す相手にハンカチを差し伸べるような優しい(?)関係へと変貌します。
アートもあってか、首を刎ねるというバイオレンス物ながらそれほどグロさはなし。
むしろキャラクターには各々どこか愛嬌があってコミカル。
あと、良くも悪くも読んでいる時の感覚はゲームのコミカライズというか。
段取りが良すぎて、「1人敵を倒す度に謎解きのヒントが貰える」類の謎解き系アクションゲームみたいです。
テンポ良く首を飛ばしながら丁寧にカゴの中へ回収しつつ、町で自殺した少女にまつわる謎に迫っていきます。
真面目な話、これゲーム化すりゃいいのに、と思わないでもない。
ジョー・ヒルの小説作品を読んだことがある人は HORNS (ダニエル・ラドクリフが実写映画やったヤツ)とかのノリに近いかもしれません。
ホラー要素はあるんですが、それよりはむしろそれをギミックとして使用した謎解きが主になっているようなところはあります(それも含めてゲームっぽい)。
ちなみにこの作品のキーアイテムである”呪われた斧”の出自については SEA DOGS の方で明かされるので、裏事情など気になる方はそちらも手に入れる必要が出てきます。
まあ、なんにせよ HILL HOUSE COMICS のラインナップをどれかひとつ試してみたいという方はまず本作を手に取ってみるのがおすすめです。
以上。