VISUAL BULLETS

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U.S.S. STEVENS

折角話題に出たので、ドリュー・フォードがドーバー・パブリケーションで復刊に尽力したサム・グランズマンの U.S.S. STEVENS を紹介。

戦争もので特に海洋ものといえばこの人ありと謳われたクリエイター、サム・グランズマン。

船を舞台とした戦記やホラーなど数多くの作品を発表した彼ですが、特に代表作と言われるのがこちら。

第二次世界大戦に従軍した経験のある彼が終戦後、自身が搭乗していた駆逐艦 DD-479 ”スティーブンス”とその乗組員をモデルとして手掛けた作品群が U.S.S. STEVENS です。

元々は DC やマーベルが刊行していたアンソロジーに掲載されていた短編で、古いものでは70年からごく最近の2013年に作られたものまであります。

過去の作品だからと侮ることなかれ、現在読んでも全く色褪せることのないアートとストーリー。

迫力ある海洋戦とそこで展開される搭乗員達の人間模様に息を呑むこと間違いなしのクオリティです。

物語の大半はスティーブンス搭乗員の視点から語られるものですが、一方で物語としては”反戦”をテーマに極めて中立的な観点から描かれており、どのような出身立場であれ戦争に巻き込まれてしまった者達のそれでも精一杯な生き様を読むことが出来ます。

とはいえ内容は必ずしも暗いものばかりではなく、中には初めて赤道を越える船員が受ける珍妙な通過儀礼に関するエピソードなんかもあり飽きずに最後まで読み通すことができます。

なお、グランズマンはこれとは別に自身がスティーブンスに搭乗していた実際の体験を著した A SAILOR'S STORY という作品もあり、こちらもドーバーからドリュー・フォードの手で復刊されているので気になった方は是非手にとってみて下さい。