……と書くとクレヨンしんちゃんとか子連れ狼とか想像してしまいそうですが。
それは双葉社の『週刊漫画アクション』。
ここで言ってるのは英国は IPC から刊行された週刊アンソロジーコミック誌の ACTION 。
昨日、ブリティッシュ・コミックの話が出たので短命ながらその後の業界に大きな影響を与えたと言われるこの 2000AD の前身について(忘れない内に)書き留めておこうかと思いまして。
ACTION は IPC という会社から76年の2月から77年の11月まで刊行された週刊アンソロジー誌です。
後に 2000AD を手掛けることになるパット・ミルズを筆頭にジョン・ワグナーなどがその制作に携わりました。
本誌のコンテンツはとにかく『過激』、その一言に尽きます。
掲載された作品の多くは(独自の視点からアレンジされていたものの)当時流行していた映画や小説にインスパイアされた、悪い言い方をすれば”二番煎じ”ものでしたが、そこにこれでもかというほどのバイオレンスを詰め込むことで独自色を生み出しました。
『ジョーズ』にインスパイアされた HOOK JAW では巨大なサメが人間たちを食い荒らし、『ローラーボール』から着想を得た DEATH GAME 1999 では近未来を舞台に囚人たちが殺し合いのスポーツゲームを繰り広げました。
特に過激だとされたのは KIDS RULE OK! という、疫病により大人たちがいなくなった世界を舞台に子供たちが暴れまわるという内容の作品でこちらは版元であった IPC 自体から何度も修正と発禁処分を受けたといわれています。
その圧倒的な暴力描写と怖いもの知らずな作風で良くも悪くも注目を集めた ACTION ですが、その終わりは予想外の形でやってきました。
76年の9月に刊行された32号目。
KIDS RULE OK! が表紙を飾ったそのイラストには鎖を振り回した少年を筆頭に押し寄せてくる子供たち、それにおののく1人の大人、そしてかつての文明社会を彷彿とさせる”残骸”などが描かれています。
これが思わぬ誤解を生むことに。
実はこの破壊された”残骸”の中には車や標識の他に警察官の帽子が転がっています。
そして少年たちの暴走に恐怖する大人が着ているスーツの色は青。
青といえば警察官の制服の色です(ただし形は明らかに警察官のものではない)。
転がった帽子。
おののく大人。
襲いかかる少年。
これらは直接的に関わり合うものとして描かれたものではありません。
しかし、結果としてこの表紙は「警察官が暴力的な少年に襲われている」様子が描かれているという誤解を生み、「反体制的な出版物だ」として ACTION は世間から大きな批判を浴びることになります。
元々問題視されていた本誌ですが、これを機に糾弾の勢いは増し、議会で取り上げられるは店に販売を拒否られるわ。
結果として ACTION は1ヶ月の休刊に追い込まれます。
やがて復刊に漕ぎ着けはしたものの、新しい ACTION はすっかり牙を抜かれてしまい、最早以前の過激さは微塵も残っておらず、以前とは別物になってしまいました。
当然ながら売上は激しく落ち込み、この一時大きなセンセーションを巻き起こした雑誌は静かに消えていきました。
後にパット・ミルズは ACTION のことを振り返り「あまり作品が現実世界に即していると非難されやすくなる」という教訓から 2000AD は SF 作品を中心にすることにしたとか(それが良いかどうかは判断がわかれそうですが)。
このことについてはブリティッシュ・コミック系ブログ BLIMEY! の以下の記事などが詳しいです。
以前本ブログで紹介したパット・ミルズの著書なんかも参考になるかと。
長くなったので自分の考えとかは別の記事で書きまーす。