VISUAL BULLETS

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KA-ZAR THE SAVAGE: THE OMNIBUS ①

はい、そんなわけで先日から度々言及していたオムニバスの話。

まずは質問。

みんなー、”ケイ=ザー”って知ってるかなー?

マーベル・ユニバースには南極の近くにサヴェッジランドという、(異星人の影響などで)特殊な環境下に置かれた常夏の島があります。

ケイ=ザーは本名をケヴィン・プランダーといい、幼い頃に英国紳士で科学者だった父とこのサヴェッジランドにやってきたものの、原住民に父を殺害され、以来セイバートゥースのザブーと共に成長しました。

今ではサヴェッジランド最強の漢として大地を駆け抜け、森を飛び交い……。

……え、何?

「要はマーベルのターザンだろ」って?

……。

……。

違うんです!違うんです!

ケイ・ザーはマーベルのターザンじゃないんです!!


はい、今回のオムニバスはそういう作品。

いや、まじで。


本書に収録されているのは1981年に刊行された KA-ZAR THE SAVAGE というシリーズ。

そもそもケイ=ザーは1965年の X-MEN #10 に初登場したキャラクターで(面倒くさいのでパルプ時代のデヴィッド・ランドについては割愛)、70年代に何度かミニシリーズのような刊行作はあったものの、長期連載はこれが初めて。

話の大半を後に INCREDIBLE HULK の連載などでその手腕が高く評価されたライターのブルース・ジョーンズが手掛け、ペンシルには X-MEN 最大の名作とも呼ばれる GOD LOVES MAN KILLS の作画を担当したブルース・アンダーソンなどが参加している他、ちらっとインカー時代のマイク・ミニョーラみたいな名前も。

まあ早い話が後にビッグになる連中がビッグになる直前の原石の状態でごろごろ転がっているのが本作なんですが、たまに巨匠ギル・ケーンみたいな人もアートやってたりしてクリエイター陣には恵まれている印象。


そんな本シリーズ、物語最初のシーンは狼の群れに襲われる古代サイを見下ろすケイ・ザーが「俺、こんなんでいいんだろうか……」と自問自答するところから始まります。

はい、これ。

このシリーズにおけるケイ=ザーは基本このスタンスです。

無理もありません。

そもそも何も知らないベビィの状態で森の中に落とされたターザンと違ってケイ=ザーはある程度物心ついてからサヴェッジランドに来ています。

しかも後から作中で判明することなんですが、どうも米国から定期的に雑誌とかを飛行機で運んできているみたいなんですよね。

自分の住んでいるど田舎とはまるで異なる派手派手な都会のきらめきを日常的に摂取しているわけで。

無理やり喩えるなら SNS で都会に住む陽キャリア充のアカウントを眺めている地方勢みたいな。

「俺、こんな田舎で一生終わりたくない!」って思うのも頷けるといいますか。

海外コミックでは珍しく(?)意識が外に向いているんですよね。

そんなもんだから何かあればすぐに野蛮人生活に疑問を投げかけ、”ケイ=ザー・ザ・サヴェッジ(野蛮人ケイ=ザー)”としての自分を皮肉ります。

ちなみにケイ=ザーと行動を共にするシャナは元々都会でバリバリ働いていたのがスローライフと自然愛に目覚めてサヴェッジランドにパラシュート降下でやって来ているのでむしろイキイキしています。

(……少なくとも冒頭は)


こうしたケイ=ザーの姿は刊行当時かなり賛否両論だったようで。

というのも、多くの読者が望んでいたケイ=ザーは彼がターザンみたいな活躍を次から次へとノークエスチョンでこなしていく姿でありまして。

アクションが足りないとかそういうわけではないんですが、一方で自省的で皮肉屋な彼の姿に「これじゃない」感を抱いた人も多かったみたいです。

(長くなったので続く)


補足:”Ka-Zar”の読みは色々あり大きく分けて”ケイ=ザー”(あるいは”ケイ=サー”)派と”カ=ザー”派がいるようなんですがどうも前者が正しい模様。

日本語のウィキでは何故か”カイ・ザー”になってます。