FAR SECTOR の感想も書いてなかった……。
というわけではい、 YOUNG ANIMAL (失礼、 DC's YOUNG ANIMAL ですね)から刊行された現段階で最後の作品 FAR SECTOR の感想です。
まず、本作は見て分かる通りグリーンランタンの本です。
もっと言うなら”新しい地球出身の”グリーンランタンの本です。
この時点で「うー…」ってなる人もいるかと思いますよ。
かくいう私も本作について最初にきいた時は「何人目よ……」という文句が頭を過りました。
それでもまあ物は試しと読んでみたんですが、するとあら意外と面白い。
割としっかりしたお話。
物語の舞台はタイトルにもある通り”銀河の果て”に位置する超都市型惑星ザ・シティ・エンデューリング(日本語訳すると「存続する都市」)。
動物系、植物系、それに電子系それぞれの人形種族が共存しており、争いを避けるために全人口が感情を廃しており、故に長らく戦争はおろか傷害事件さえ起こらなくなった場所です。
そんな場所に出現した他殺死体を捜査すべく、ろくな訓練も受けてない新人グリーンランタンのジョー・ムリーンが馳せ参じるというのがあらすじ。
ライターにはヒューゴ賞受賞 SF 作家として知られるN.K.ジェミシンが就任、アートは NAOMI を手掛けたジャマル・キャンベルが、レターはアイズナー賞などのノミネート歴があるデロン・ベネットが担当しています。
グリーンランタンって宇宙を舞台にしてるんですが、どうも SF から離れがちというか。
”意志”とか”仲間”みたいな精神論でゴリ押しする宇宙ファンタジーみたいな話になることがままあるんで(それはそれで好きだけれど)、 SF っぽい社会風刺要素とかを求めて読むと空振り感を抱くこともあるんですが。
本作に関していえば物語の舞台は遥か銀河の向こう側であるものの、現実に存在している大衆運動や SNS みたいな要素が(歪曲された形で)たくさんでてくるソーシャルフィクション SF として成立しています。
現代社会の風刺がワラワラ出てきて、そういった要素がパタパタとまとまっていく様子を見るのは面白かったです。
キャンベルの色使いがまたいいんですよね、 NAOMI の時は片田舎が舞台だったんで少しこのカラーパレットには戸惑ったんですが、今回見たいな未来都市が舞台になるとすごく映える。
レターも物語を邪魔しないよう、しかしフォントを種族ごとに使い分けるなど芸が細かい。
ジョーというキャラクターについては正直なところ不慣れな場面とベテランみたいな雰囲気の移行がややぎこちなかったんですが、それさえ目を瞑ればこれまでのランタンとは異なるタイプですし、今後のポテンシャルも感じるキャラクターです。
個人的には今激推しのランタンですね。
グリーンランタンのことをほとんど知らなくても読むことができ、 SF 小説を1冊読む感覚で楽しめる本作。
残念ながら今年のアイズナー賞はノミネートされたものの逃してしまいましたが、もっと評価されるべきで作品であることには変わりないし、今のような不安定な時代だから読んでおきたい、希望に満ちた物語だと思います。