VISUAL BULLETS

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

ストレンジ・アドベンチャーズ

ワーナー・ブラザーズ・メディアとディスカバリーの合併により設立されたワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー、そのトップに就任したデヴィッド・ザスラフの方針によりほとんど完成していたバットガールの映画を始めとした HBO MAX の目玉企画がごっそりお蔵入りする羽目になったという話に関して。

映画監督のケヴィン・スミスとコメディアン兼俳優のラルフ・ガーマンの週刊ポッドキャスト HOLLYWOOD BABBLE-ON によると他にも色々とお蔵入りしたと推測される DC 関連の企画がいくつかあるようで、とりあえず箇条書きにしてみます。


・ワンダーツインズ: ハンナ・バーベラ制作の DC カートゥーン THE ALL-NEW SUPER FRIENDS HOUR でデビューした、互いに触れながら呪文を唱えることでスーパーパワーを発揮する双子ワンダーツインズの HBO MX での実写化計画が白紙に。

・スーパーガール:ドラマ版と関係あるかどうかはわからないものの、映画化企画が進んでいたらしいのですがこれも白紙。

・グリーン・ランタン: ジョン・スチュアートが主役になるのではないかと噂されていたグリーン・ランタンの実写ドラマ版も制作中止。

・ストレンジ・アドベンチャーズ :スーパーマンやバットマンやワンダーウーマンといった有名キャラではない、 DC の比較的マイナーなキャラクターにスポットライトを当て、各話異なるクリエイティブチームを迎えて送るアンソロジー。デッドマンやラグマンといったキャラクターの話を想定し、 HBO MAX で配信予定だったようですが、これも音沙汰なくなったそうで。


ストレンジ・アドベンチャーズについてはケヴィン・スミス自身も1エピソード打診されたようで、ドラマ版スーパーガールなどでタッグを組んだエリック・コロスコと共に、ジミー・オルセンとペリー・ホワイトが登場する話を考案していたとか。
以下(もう没になったからいいよねと)スミス自身の口から語られたあらすじ。

ひょんなことから異次元に飛ばされてしまったジミーとペリー。

そこで出会ったのはスーパーマン……ではなく古いスーパーマンコス(ジョージ・リーブス風?)を着た謎の人物。

スーパーマンのいるメトロポリスを再現したようなその街では誰もがスーパーマン大好き!

……かと思いきや、実はスーパーマンの活躍に憧れた異次元の神(さっきのスーパーマンコスの人物)に無理やりそう振る舞うよう強いられており、密かに叛逆の機を窺っていた。

少しずつ明らかになる偽スーパーマンの異常さ、街の至るところに描かれた逆さSマーク……。

(ここまでくればわかる人はわかると思いますが本エピソードは偽スーパーマンことビザーロ君のオリジンストーリーです)

やがて遂に人々が蜂起する中、混乱に乗じて元の世界に帰還するジミーとペリー。

一緒にこちらの世界にやってきてしまった偽スーパーマンことビザーロだったが、ひょんなことから街を救いヒーローに……。

しかしビザーロはいずこへと飛び去ってしまう。

物語のラスト、いずことも知れぬ場所で座り込むビザーロの傍に赤いブーツが映り込み、本物のスーパーマン本人が「友人になろう」と手を差し伸べる。

といったあらすじになった筈だとか。

……これは観たかった!

でもこれもお蔵入りでーす……。

ちなみにビザーロ役にはニコラス・ケイジを想定していたそうな(ケイジは過去に制作中止となったスーパーマン映画でスーパーマン役になりかけたことがある)。


こうした企画が全部今回の方針転換が理由で没になったのかもわからないし、実際に出来上がったら期待していたのとは全然違うということも十二分にあり得ますが、企画自体は面白そうなだけに非常に勿体ない。

折角実写版 DC の世界観を大きく押し広げられたかもしれないチャンスだったのに。

というか、ビジネスではよくある話とはいえ、傍から見るとクリエイター軽視というかやや配慮に欠けている印象を受けるので企業的にもあまりイメージよくないですよね…。

実際、株価下がったみたいですし。


ポッドキャストによると HBO MAX 自体を終了させてディスカバリーと統合させた新しい配信プラットフォームを作るという噂もあるんですが、そうなるといよいよ HBO MAX が日本に来なそうですし、なんともはや……。

今のところなんだか良い方向に動いていないなーという印象のワーナー・ディスカバリーです。

ポッドキャストの公開収録から抜粋した以下のビデオから話を聞けるので是非。
(ストレンジ・アドベンチャーズの話は7分あたりから)

youtu.be