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X-FACTOR by PETER DAVID vol.1

ライターのピーター・デヴィッドといえば80年代から90年代にかけてのハルクの連載で有名ですが、その他にも当たりか大当たりしか作らないクリエイターとして、現在も第一線で活躍しています。

そんないくつも代表作がある彼の人気作の1つがこの X-FACTOR 。

X-FACTOR というチームは元々サイクロップスを始めとした元祖 X-MEN チームがちょっと本隊から距離を取って色々やろうぜということで始動したチームなんですが、デヴィッドの連載から大きく方向転換。

新たにミュータントに関連する事件に対処する政府組織としてハヴォックをリーダーに再出発します。

面子は

・最強クラスの衝撃派遣い、超優等生なのに何故か兄貴への劣等感を抱えるアレックス・サマーズことハヴォック

・チームの重鎮、マグニートーの娘でありハヴォックとは付かず離れずの関係にある磁力のサラブレッド、ローナ・デインことポラリス

・ニュー・ミュータンツ出身の多感な半人半獣、レイン・シンクレアことウルフスベイン

・衝撃を受けるといくらでも分身する究極の1人っ子、ジェイミー・マドロックスことマルチプルマン

・一度見たら忘れない満面な笑みとラウンド形サングラス、打たれりゃそれだけ強くなるガイド・カロセラことストロングガイ

・チームに途中参戦する超速超問題児ピーター・マキシモフことクイックシルバー

・チームの発起人にして政府との板挟みに悩むガンバレ官僚、ヴァレリー・クーパー

といった感じ。


デヴィッドのライティングは真っ当な展開に心理学的な要素を盛り込むことで深みを与えているのが大きな特徴。

おそらくこのテクニックが最も映えるのは#87の各メンバーがカウンセリングを受けるエピソードなんですが、アクション要素が皆無であるにも関わらず全員のイメージが一変するアクロバティックな内容で、シリーズ全体でも屈指のエピソードとして知られています。

こうした”心の機微”みたいなものを重視する姿勢は日本の漫画とも共通項が多く、個人的には作画を変えたら普通に少年誌として通用すると思います。


これについては上で述べた”真っ当な展開”というのも関わっていて、やもすると X-MEN という作品はやれ銀河帝国だのマルチバースだのと「ミュータントに対する差別」という下地にある筈のテーマから脱線しがちなのに対して、本作ではミュータント絡みのミッションに X-FACTOR チームが真正面からぶつかっており、なんというかこう何も知らない人が「なんとなくイメージする X-MEN 」ってこんな感じじゃなかろうか。

下手に X-MEN の有名ストーリーをおすすめするくらいより、自分なら X-FACTOR を推すかもしれません。


作画ですが、ジェイ・リーであったりジョー・ケサーダであったりと中々有名どころがぽつぽつ参加しているものの、ケサーダなんかはデジタル・アナログの差によるものか今の絵より若干荒削りな感じは否めないかも。

むしろ注目すべきなのは前半部分の大半でペンシラーを務めているラリー・ストローマンのアートで、いかにも90年代らしいディテールの細かさに対して大袈裟で特徴的なシルエットという面白い組み合わせの作画で、ぱっと見はちょっと戸惑いましたが、慣れてくると本作にぴったりというか時間をかけて味わい深くなっていきます。

すぐに目を惹くアートではないことは認めつつ、個人的には結構好きです。


本書 VOL.1 に収録されているのは90年代版の連載ですが、この X-FACTOR は後に2005年頃ジェイミー・マドロックスことマルチプルマンの下で新たに私立探偵事務所として再始動し、こちらもオムニバスとしての続刊が既に予定されています。

今からとっても楽しみ。