ヴェノムー、ヴェノムー。
お前を生んだのは、ダレー(↑)。
…というわけで、いつか記事にしようとネタだけ用意しておいて資料を集めているうちに有耶無耶になってしまった「ヴェノムの生みの親」に関する話を雑文版として書いていきます。
まず、基本エディ・ブロックことヴェノムというキャラクターの”生みの親”と「称される」のは当時 AMAZING SPIDER-MAN 誌を担当していたデヴィッド・ミクライニーと、ヴェノムを初めて絵にしたトッド・マクファーレン。
ただミクライニーはマクファーレンのデザインあってのヴェノム人気は認めつつ、大本となるアイデアを出したのは自分だとしてマクファーレンと並列的に”生みの親の1人”として語られるのは嫌がっている模様。
これについては当時 THE SPECTACULAR SPIDER-MAN 誌のライターを担当していたピーター・デヴィッドもマクファーレンが参加する以前からヴェノムのアイデアについて打ち合わせで聞いていたと補足(ただしデヴィッド自身はこの問題について特定の立場は取っていないみたい)
一方のマクファーレンも大本のアイデアと”でっかくて黒い奴”という大雑把なデザインのアイデアはミクライニーだと認めつつ、そこに”不気味さ”を象徴する口などを加えたのは自分だとして自らも間違いなく”生みの親”であることを主張。
アーティストのエリック・ラーセンも既存のアイデアを流用したありきたりなキャラクターでしかなかったミクライニーのアイデアに輪郭を与えてストーリーに使用可能なレベルにまで作り上げたのはマクファーレンだと援護射撃。
ここらへんは当時も盛り上がっていたライター・アーティスト間のいざこざとか、後にイメージを作ることになるアーティスト同士の関係性とかも色々絡んでいるかもしれません。
ところで。
実はマクファーレンが作ったデビュー時のヴェノムは確かに口が付いていたものの、ニタニタ笑う程度という感じでサイズもやや小さく、今の私達が知るキャラクターとはかなり印象が異なっていました(後に大きくなりました)。
何よりあの怪物じみた長ーい舌がありません。
ヴェノムの口といえばあのベロが大きな特徴ですが、それをデザインに加えたのは上でマクファーレンを援護したエリック・ラーセンだったりします。
以下、ファンの質問に答えたラーセンのツイートからの引用。
Venom's tongue sprang from my memory of a @Todd_McFarlane TPB cover. I saw the cover but didn't buy the book--because I had the issues. I thought, "Todd's giving Venom a tongue now" and I gave him an even bigger tongue. Years later I saw that it was just an open mouth--no tongue. pic.twitter.com/CRhBGRQx0f
— Erik Larsen (@ErikJLarsen) April 14, 2019
マクファーレンの描いたヴェノムを店頭で見かけたラーセンが「わあ、トッドの奴、ヴェノムに舌まで付けたのか」と空目して自分が描く時にもっと大きな舌を付けたようです。
後に勘違いだったと気づいたとか。
そしてこれまた話をややこしくするのがマクファーレンの提出したヴェノムのデザイン。
あれについて、もとを辿れば過去にスパイダーマンが着ていたものに口をつけただけと言われれば必ずしも否定はできません。
ちなみにそのスパイダーマンの黒コスチューム。
実はマーベルが公募企画でファンから募集したもので、発案者はイリノイ州出身の当時22歳だったランディ・シューラー青年。
マーベルはシューラーから220ドルだかでアイデアの権利を買い、その設定やデザインを多少弄った上でデビューさせています。
そんなわけでヴェノムの生みの親は
1)アイデアの大本を出したミクライニー
2)デザインの原型を出したマクファーレン
3)最大の特徴であるおっきな口をつけたラーセン
4)そもそもスパイダーマンの黒コスを発案したシューラー
5.6.7...)その他それまで何らかの形でスパイダーマンに関わって寄生体スーツのアイデアを出したりしたライターやアーティストの皆さん
等々ということになります。
共同作業が常なこの業界ならではといいますか、うん。
まあこんな例は他にもいくつかあります。
嗚呼、ヴェノムー、ヴェノムー。
お前を生んだのは、ダレー(↑)。
細かいところ間違っているかもしれません。あしからず。