新企画でござい。
DUDSとは不発弾のこと。諸々の理由から私が購読断念を余儀なくされた作品に関して、それでもせめて他の誰かに読んで貰えることを願い、コラムとしてこれらを紹介するものです、はい。
なお購入をやめた理由については私の嗜好や予算の都合といった極めて個人的な理由で、作品のクオリティ自体はどれも一定以上のものを厳選したつもりなのでご安心を。
語るに足らない作品は語らない主義っす。
1.EXIT STAGE LEFT: SNAGGLEPUSS CHRONICLES(DC/HANNA-BARBERA)
カバー画像なし
何気に他社版権作品のクオリティが高いと定評がある DC 。2016年から始まった往年のハンナ・バーベラ作品をリメイクしたラインナップ HANNA-BARBERA BEYOND も読者から高い評価を受けており、度々話題にのぼる。最近も『 SCOOBY APOCALYPSE 』が世間をざわつかせてましたな。
さて、そんなハンナ・バーベラから今年1月新たにリメイクされて世に送り出されたのが”スナグルプッス”。元々のカートゥーンは役者志望なピンク色のピューマが繰り広げる騒動を描いたコメディだったが、本作は打って変わったかなり硬派な内容。人間と獣人が共存する1950年代米国を舞台に、大物役者であるスナグルプッスが密かに同性愛者であることを知られて政府の赤狩りの標的になる姿を描く。
おそらく社会派な風刺コメディに含まれるのだろうが、そっち方面に感性が疎い私には合わなかった。ブラックコメディとか好きな人には合うかも。
ただ Ben Caldwell によるカバーはすごく気に入っているので合本を入手する機会があれば買おうかと思ったり。
2.ICE CREAM MAN (IMAGE)
不思議なアイスクリーム販売車の運転手(アイスクリームマン)を狂言回しに、その行く先々で起こる人間模様を皮肉たっぷりに描いた1話完結の連作。#2まで購入。
#1は致死性の毒を持つ蜘蛛を飼う少年が引き起こす騒動、#2は麻薬中毒患者のカップルの辿る顛末を描いている。サスペンス物かと思ったら超常的要素も少なからず含まれており、これぞノージャンルといった感じ。
どちらも物語の完成度が高かったので是非続きをと思っていたが、同じ時期に新作が相次いで刊行されたことから、そちらに枠を譲るため泣く泣く落とすことに。良くも悪くも1話完結って話が繋がってない分、諦めやすくて…。
現在#4まで出ているが何とかして追いつきたい作品。
3.COME INTO ME (BLACK MASK STUDIOS)
カバー画像なし
メッセージ性の強い上質なオリジナル作品を数多く世に送り出している BLACK MASK STUDIOS 。創立当初は作品ごとでクオリティの振れ幅が大きい印象だったが、最近は安定したラインナップになってきて、たまにあっと驚くような作品も。現在マーベルで活躍している Matthew Rosenberg など今後の活躍が期待されるようなクリエイターも少なからず輩出している。
さて、そんな BLACK MASK STUDIOS から今年3月に刊行されたのがこのホラー作品。謎の肉塊を使って人間の意識を交換する新技術で中身を入れ替えた男女が陥る恐怖の体験を描くという内容。
刊行当初は全然レーダーに引っかかってなかったのだけれど、 Scott Snyder や Jeff Lemire が SNS でオススメしていたのを見つけて購入。
クローネンバーグ的な演出や鬱陶しくない程度に社会批評を盛り込んだ作品性など自分好みの要素がふんだんに盛り込まれていたものの、これまた予算の都合で泣く泣くカット。まだ#2までしか出てないので機会を窺って続きを追いたい。
なお巻末に伊藤潤二の『富江』を紹介するコラムが掲載されており、それを読んだ私は次の日に早速本屋へ走り上下巻購入しましたとさ。
4.ISOLA (IMAGE)
日本の漫画やアニメでは思春期の少女が主人公の作品など珍しくもなんともないが、アメコミでこの手の作品はまだ少ない。
そんな中、 BATGIRL(DC) や MOTOR CRUSH(IMAGE) など、10代後半から20代前半頃の女性を主人公にした作品を数多く手がけていることで知られるライターの Brenden Fletcher とアーティストの Karl Kerschl 。2人が GOTHAM ACADEMY(DC) でも組んだことのあるアーティスト MSASSYK らも迎えて新たに送るファンタジー『 ISOLA 』は、虎の姿をした女王(元は人間?)に仕える若き戦士イソラの冒険を描く作品だ。
本作は宮崎駿作品を強く意識しており、イソラの身に着ける衣装が成る程言われてみりゃナウシカっぽい。
海外のコミックレビューなどを見る限りでは各方面べた褒めの良作だったので後々後悔しないようにと私も手に取ってみたが、残念ながらファンタジー、特にこの手のハイファンタジーは苦手なため没頭しきれなかった。
絵柄も親しみやすければ話のテンポも悪くないので、この手のジャンルが好きな人は是非手に取ってみると良いかと。
5.EXILES (MARVEL)
2000年代に好評を博し、現在も数多くのファンがいるチームの新シリーズ。パラレルワールドを渡り歩く闇鍋版アベンジャーズとでも言おうか。
オリジナル・メンバーはテレポーテーション能力を有するミュータント、ブリンクのみ。他のメンバーはディストピアの未来で反乱軍を率いるカマラ・カーン(Ms.マーベル)とか、ヤング・アベンジャーズと出会わなかったアイアンラッドとか。#3からはキャプテン・アメリカのシールドを継いだペギー・カーターが登場するとか。
こういった別バージョンのヒーローとかが好きな人にはオススメ。
ストーリーもキャラクターも結構唆られたものの、『フレッシュ・スタート』も控える中でバイウィークリー(2週間に1回)という刊行ペースについていく自信がなかったためカット。
ただ旧シリーズの合本とかには手を出してみたくなった。
…と、以上が今回の5作品。どれも良作の予感がする作品ばかりだったので、興味を唆られるものがあったら是非とも手にとって頂ければ幸いです。
ここ数ヶ月は各社から相次いで新作ラッシュが続いたので不発弾もたくさん出たが、普段からそうぽんぽん出るものでもなく。そんなわけで次はいつできるかわからないけれど、また5作品くらい貯まったらこの企画をやろうと思います。