「DCが新イベント『CRISIS』を予定しており、その中で世界観のリブートを行う」 - そんな噂が現在海外のアメコミファンの間で話題になっている。
出処
出処はおそらく海外コミックニュースサイト BLEEDING COOL 。”ニュース”サイトと今述べたがゴシップサイトとしての面も強く、公式にまだ発表されていないような話題もいち早く察知して報道する。その報道スタイルや歯に衣着せぬ姿勢から業界関係者の中には毛嫌いしている者も多いが、実際サイトを覗いてみると事実と噂はしっかり分けているし、ゴシップ自体についてもその的中率は必ずしも低くない。
そんな BLEEDING COOL が DC 関係者から匿名で寄せられた情報として昨日公開したのが上に述べた新イベントとリブートに関する噂である。また別の記事にはこのリブートを通じて(これだけでもショッキングだが)、現在のスーパーマンとロイス・レーンとの婚約、あるいはまだ正式に執り行われてもいないバットマンとキャットウーマンとの婚約も解消するかもしれないということも書かれており、ファンの間で物議を醸している。
Rumors of reboots are ridiculous. Just stop with the misinformation. Thanks and have a great weekend!
— Jim Lee (@JimLee) 2018年5月12日
既にジム・リーなど DC の代表がリブートをツイッター上で否定しているものの、不安が完全に払拭されたとはいい難く、現在ジェフ・ジョーンズとゲーリー・フランクが手がけている『ドゥームズデイ・クロック』に絡んでくるとか、 Tom King がライティングを担当するなど様々な憶測が飛び交っている。
これらについて、私は虚実綯い交ぜになっている可能性が高いと思う。
考察① イベント自体
まず『クライシス』というイベントの存在。
リバース以降は大型クロス・オーバーを避けてきたDCではあるが『ダークナイツ:メタル』の成功もあってイベントに自信を付けている筈だし、去年の暮れから行われてきた『ニュー・エイジ・オブ・ヒーローズ』が不発だったという声も少なくない中、手っ取り早く話題を集められるのは新たなイベントだ。そういう意味では選択肢として考えられる。
しかしこの手法はマーベルがここ最近多用しすぎてファンから批判される大きな原因となっている。『メタル』の余韻もまだ残っている中、1年や2年で世界観全体を巻き込むイベントを新たに行うのは愚策であり、最近の DC の堅実ぶりからはやや考えにくい。
ただし、これが例えば先の『ダークサイド・ウォー』のようにジャスティス・リーグ誌などで展開されるとすればあり得るかもしれない。6月から始まるジャスティス・リーグの新シリーズでライティングを担当する Scott Snyder は現在『ジャスティス・リーグ:ノージャスティス』でも宇宙規模の話を展開しているし、それが今後の連載に響いてイベント級のストーリーに発展しても何ら不思議はない。
考察② リブート
これも考えにくい。 DC は2011年にリブートして NEW52 を開始したが、2016年にそれをリバースで修正したばかり。 DC ユニバース全てを巻き込むリブートを行うにはあまりに時期尚早だ。
加えてリバースのメインディッシュともいうべきウォッチメン関連も『ドゥームズデイ・クロック』でまだ展開している最中。 JSA やリージョン・オブ・スーパーヒーローズを再び DC ユニバースに組み込むため多少世界観の矛盾を解消する必要があるとはいえ、わざわざそのために世界全てをリセットする意味はない。
上で述べたとおりジム・リーも否定していることだし、 DC ユニバースのリブートは十中八九ないだろう。
考察③ 結婚解消
次にクラークやブルースの結婚について。これについてもクラークとブルースに分けて考える必要がある。
クラーク・ケントとロイス・レーン
クラークについては現状のロイスとの夫婦生活はジョナサンという息子の存在も含めてファンからは概ね好意的に受け止められている。そのジョナサンもまた既にスーパーマンと離れたあちこちで活躍しており、これらの要素を一度のイベントできれいさっぱりなくしてしまうえばファンから怒りを買うことは必至。スパイダーマンの『ワン・モア・デイ』以上の非難を浴びることになると容易に予想がつくため、これについてはあり得ないだろう。
ブルース・ウェインとセリーナ・カイル
一方、ブルース・ウェインとセリーナ・カイルの婚約解消。こちらについては全くの嘘八百と切り捨てられもしない。
というのもスーパーマンとロイスの結婚と異なり、この2人はまだ結婚式が済んでないという事実を抜きにしても関係が盤石ではないからだ。
スーパーマンとロイス・レーンと言えばこれまで数多くのライターが描いてきたロマンス。一方でブルースにはセリーナの他にもダミアンの母であるタリアをはじめとした恋愛対象が他にも何人かおり、その各々の関係を支持するファン層がある。現在のブルースとセリーナの関係は、あくまでバットマンのメインタイトルを手がけているライター Tom King の選択であって、今後別のライターが手がけるにあたって相手が変わる可能性というのは十分にあり得るのだ。
またTom Kingというライター自体『ヴィジョン』などの過去作を見る限り悲劇、それも破滅的な悲劇を得意とする人物だ。クロス・オーバーイベントでそうするとは考えにくいが、彼の連載終盤で婚約を解消する展開は普通に考え得る(というか個人的にはそうなると思っている)。
考察まとめ
・『クライシス』というイベント自体、選択肢としてはアリだが、戦略的には愚策。
・リブートは状況証拠的にまずない。
・クラークとロイスの結婚解消も考えにくい。
・ブルースとセリーナの結婚解消はあり得るが、それはバットマン誌で行うのが自然。
こういったことから今回の BLEEDING COOL の報道に関しては当たらずも遠からずというのが私の現在の考えだ。今後の DC や BLEEDING COOL の出方次第で考えが変わるかもしれないが、まずは落ち着いて動向を見守ろうと思う。