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LIBERTY MEADOWS, BOOK ONE: EDEN (IMAGE, 2010 - )


Liberty Meadows: Eden

イタズラ好きな動物達が上へ下への大騒ぎ!

あらすじ

 動物保養地 Liberty Meadows では様々な理由で精神を病んだ動物達がリハビリに努めながら平穏な日々を過ごしていた。そんなLMへ新たに獣医としてやって来た Frank は勤務初日からカウンセラーの Brandy に一目惚れ。何とかして彼女のハートを射止めようとするものの、その前にまずは動物達の引き起こすドタバタをかい潜らなければならず…?


良質なコメディが満載な作品

 セクシーヒロインのカバー絵が度々物議を醸すアーティスト Frank Cho の商業デビュー作にして出世作。
 以前にも日曜特別(サンデー・ストリップス)版の合本を紹介したが、今回は平日に掲載されていた通常版のモノクロ作品を集めた合本第1巻。日曜版のエピソードと繋がっているエピソードもちらほらあって、本来はこちらから読み始めるべきだったというか、2つ併せて読むのが正解かと。


 さて実際の中身に関しては、今更ながらまず絵が上手なことは本作の大きな特徴だろう。
 マーベルなどのアートを見慣れているせいか読み始めた当初は気づかなかったものの、その後他の作品と比較してみると、一般的にコミック・ストリップの絵は個性が強くデフォルメのきつい絵柄が基本。線もラフだったり歪んでいるようなものが多い(勿論、それが魅力である場合も多いのだけれど)。

 それらに比べると Cho のアートはファニーアニマル達こそいかにもアメリカン・カートゥーンな絵で描いている一方、人間(特に女性)は Dave Stevens などに影響を受けたかなりリアル調な絵柄で、1本1本の絵もすっきりしていて見やすい。


 そしてそんなキャラクター達がコマの中で引き起こすギャグも秀逸だ。
 笑いはギャップを楽しむものだという見方がある。例えば予想の斜め上をいく展開であるとか、ボケとツッコミの温度差、あるいは単純に常識を逸したキャラクターの言動など、そういった落差がコメディの本質であるというわけだ。
 
 そういう視点で読むと、成る程確かに本作はギャップを作り出すのがとても上手い。 
 キャラクターが2人いれば大抵テンションの高い方とそうでもない方とがいるし、1人の時でも軽く意表を突く行動を繰り出す。先程述べたカートゥーン調の動物とリアル調の人間というのもギャップを作る仕掛けだろう。 Cho が多用するパロディもこういった落差を生み出しやすい手法だ。

 ただこういったギャップを使うネタ、特にそれを人(やこの場合は動物)に適用する類はどうしても誰かを貶めるリスクを孕む。実際、最近のお笑いやスタンドアップコメディにはその手のチープな笑いがゴマンとあり、必ずしも見ていて気持ちの良いものばかりではない。

 本作もこういった誰かを揶揄するようなネタがゼロではないものの、(動物に代弁させているからということもあるのかもしれないが)不思議と読んでいて嫌な気分にはならない。むしろ何度も読みたくなるようなギャグが豊富にある。

 いつでも手にとって開けるよう手元に置いておいておきたい作品だ。


こんな人にオススメ

・良質なコメディが読みたい

・往年のアメリカン・カートゥーンが好き

・道徳臭くないコミック・ストリップが読みたい


Liberty Meadows 1 (Liberty Meadows (Graphic Novels))(こっちの方が入手しやすい)




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