VISUAL BULLETS

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DESCENDER, VOL.1: TIN STARS (IMAGE, 2015 - )


Descender #1(キンドル分冊)

 10年ぶりに目覚めた少年ロボットに秘められた謎とは?

あらすじ

 技術発展により栄えてきた銀河連合議会(UGC)は、だがある時出現した9体の巨大ロボットから攻撃を受け壊滅状態に陥る。それから10年後、銀河各地でロボットが激しい弾圧を受けるようになった中、1人の少年ロボット Tim-21 が目を覚ます。彼はまだ知らなかった。自分がかつてUGCを襲った正体不明のロボット達と深く関わっていることを…。

宇宙版 SWEET TOOTH

 このブログでも結構お馴染みなってきたライター Jeff Lemire と、 BATMAN: L’IL GOTHAM などで知られるアーティスト Dustin Nguyen によるオリジナルSF作品。
 10年前に出現した正体不明の大量破壊ロボット、その謎の鍵を握る少年ロボットを巡る争いが銀河全体を巻き込んだ騒動に発展していく物語の第1巻。

 一読した印象はスペースオペラ版 SWEET TOOTH とでもいったところだろうか。壊滅した世界を舞台に大事件の鍵を握る被差別民の少年を描くという物語の風景はほぼ一緒。違いと言ったら Jepperd が青い肌のネーチャンになってるとかその位ですかね。アメコミ版鉄腕アトムみたいだとも思った。
 
 物語をサクサク進めながら細やかな心の機微にも配慮する Lemire の手腕には相変わらず感心させられる。 SF 系は”ストーリー”ではなく”プロット”を追うような作品が多くなりがちな中、本作はその限りではない。非常に丁寧に物語を紡いでいるのが見て取れる。

 また、これも Lemire の作品に多いパターンで序盤における主要キャラの性格がアンバランスなところも面白い。
 主人公の Tim-21 は児童書から引っこ抜いてきたような純粋無垢だし、彼の友人で元切削用ロボット Driller は言動の荒っぽい正直者といった風にテンプレ的な性格をしている者もいる一方、彼を回収しに来た UGC の高官 Telsa やロボット工学者 Jin Quon はそれなりに心の闇を抱えた複雑なキャラとして描かれている。
 1人1人に焦点を合わせると子供向けアニメのキャラを深夜アニメにぶっこんだような不自然さがあるのに、物語全体を見渡すと上手い具合に溶け合っている。

  Dustin Nguyen のアートによる作用も大きいのだろう。 Lemire の情緒重視なストーリーは通常のアメコミ絵だと絵が尖りすぎていてやや相性が悪い。だが Nguyen の親しみやすいキャラクター造形や水彩画風のカラーは作品全体に柔らかい印象を与えて、この話のエモーショナルな雰囲気を引き立てている。
 普段アメコミを読まないような日本人にもかなりしっくり来る絵柄かと思う。

 上でも述べたとおり1巻目の本巻では正直まだ SWEET TOOTH と似た部分が多すぎて語れるところがあまりない。ただ Lemire 作品の1巻目は大概まだ地ならしで本格的に物語の魅力が見られるのは2巻3巻からだ。
 今後このシリーズがどのような目新しさを見せてくれるのか期待している。

こんな人にオススメ

・ Jeff Lemire の SWEET TOOTH が好きな人

・スペースオペラ系SFが好きな人

・初めてアメコミのオリジナル作品を読みたい人


Descender 1: Tin Stars(合本)




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