Eternals (2006-2007) #1 (of 7)(第3シリーズ)
海外メディアによると、マーベル・スタジオのトップ、ケヴィン・ファイギがMCU最新作として『ETERNALS』が製作初期段階にあることを認めたという。
www.cbr.com
記事はCBRより。
そこで今回はこの”エターナルズ”と呼ばれる存在がいかなる種族なのか、公開される映画への展望と合わせて解説したい。
(追記: 劇場公開が11月5日に決まったとの報道が出たので大幅改訂しました)
1.”エターナルズ”とは
ファンタスティック・フォーやアベンジャーズの生みの親であるクリエイター、ジャック・カービィ。
彼の手によって生み出されたマーベルの超人不死種族がエターナルズだ。
1970年代に一時マーベルを離れた彼はライバル社の DC で宇宙を舞台に”ニュー・ゴッズ”と呼ばれる超人的種族を作り出した(ダークサイドやミスター・ミラクルなど)。
Fourth World by Jack Kirby Omnibus
『 FOURTH WORLD 』と称されたこのサーガはカービィによる現代神話ともいうべき世界観だったものの、あまりに時代を先取りしていた内容は当時の読者に受け入れられず、DCは話半ばでの打ち切りを余儀なくされる(後に完結編が作られた)。
やがてマーベルに戻ってきたカービィがこの世界観を再び描こうと試みて1976年に世へ送り出したのが『 ETERNALS 』というシリーズだ。
Eternals (1976-1978) #1(第1シリーズ)
カービィはエターナルズやセレスシャルズについて、自らの『 FOURTH WORLD 』サーガの他、エーリッヒ・フォン・デニケンの「古代宇宙人来訪説」やアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』に登場する”オーバーロード”などからインスピレーションを得たと語っている。
残念ながら『 ETERNALS 』も19号(+年誌1冊)で打ち切られてしまったが、エターナルズ自体はマーベル・ユニバースの世界観で重要な位置を占めるようになった。
ちなみに打ち切りによって回収されなかった一部の伏線は、その後エターナルズとソーが共闘する THOR: THE ETERNALS SAGA にて回収された(後述)。
2.オリジン
Eternals: To Slay A God: v. 1 (Eternals (2008-2009))(第4シリーズ)
エターナルズとは、宇宙の原初的存在であるセレスシャルズによって生み出された超人種族のことである。
地球で人類の祖先に進化を引き起こす実験をする過程で生まれた彼らは、生みの親であるセレスシャルズが去る際に地球と人類(プライムともいう)の守護者となるよう命じられた。
以来、エターナルズは同じ実験の過程で生まれたもう1つの種族デヴィアンツなどの脅威に立ち向かうようになった。
内紛などの影響でエターナルズは宇宙のあちこちに散らばってしまったが(後述)、地球に残って人類の一員として生きている者も少なくない。
長らく社会に潜伏していたエターナルズ達だったが、人類に裁定を下すべく迫りくるセレスシャルズを阻止しようとするデヴィアンツの活動が活発化する中、イカロスを筆頭に再び姿を現す。
なお、エターナルズは地球だけの存在ではない。
セレスシャルズが関与した惑星にはそれぞれのプライム、エターナルズ、デヴィアンツがいて、各惑星に特有な発展を遂げている。
例えば地球ではプライム=人類が栄えたが、映画『キャプテン・マーベル』に登場したスクラル人は彼らの故郷である惑星スクラロスのデヴィアンツにあたる。
詳しくは以下の記事参照。
www.visbul.com
ちなみに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』に登場したエゴはセレスシャルズの1人。
3.能力・弱点
エターナルズは不死に近い寿命を持ち、さらに怪力やコズミックエネルギーを自由に操るといった様々な超人的な能力を備えている。
マーベル・ユニバースで超人的能力を持つ種といえば X-MEN のようなミュータントことホモ・スペリオールもいるが、ミュータントと異なり、エターナルズは種の全員が同じ能力を使うことができる。
ただし、その発達具合には個体差があり、例えば飛行能力に長けたものや、あるいは強いテレパシー能力を備える者などがいる。
さらにエターナルズは集団で精神を合体させた”ユニ=マインド”と呼ばれる存在になることでさらに強力な力を発揮できるようになる。
エターナルズの不死性は単に寿命が長いというだけではない。
物理的な攻撃はもちろんのこと、毒や病などおよそあらゆる危害を受け付けない強靭な肉体構造を持ち、仮に何らかの方法で傷を負ったとしてもすぐさま治癒できる。
その上、分子レベルで肉体をバラバラにされても”ザ・マシン”というセレスシャルズ由来の装置(地球そのものだという説もある)によって蘇生される。
ただ1つエターナルズの弱点と言われるのが”マード・ウィリィ(Mahd Wy'ry)”と呼ばれる精神的な病。
”エターナルズの隠された呪い”とも称されるこの病は人間でいうところの老化による痴呆であり、不死の肉体を持つ一方で人間のような思考を持つことに起因する狂気だとされている。
ひとたびこの病に陥ると基本的に治療法はなく、他のエターナルズに伝播する前に肉体を破壊する他なくなる。
先に述べた”ユニ=マインド”は、エターナルズに精神的な安定を与え、この病を防ぐ機能もあったことが後に明かされる。
4.デヴィアンツ
セレスシャルズが人類の祖先に手を加えた際に進化の過程でエターナルズ、プライム(人類)と枝分かれした種族で、エターナルズの宿敵ともいうべき存在。
突然変異による個体差が著しく、喩え直系の血縁関係にあるもの同士であっても全く異なる容姿をしている。
人間の価値観からすると美しい容姿をしているエターナルズと違い、醜いとされるデヴィアンツは、後の神話などに登場する怪物の元になったとも言われている。
”ドリーミング・セレスシャル(夢見るセレスシャル)”という存在を信仰しており、これに地球を授けられた自分達こそ正統な支配者で、人間は他のセレスシャルズの裏切りによって覇権を与えられたに過ぎないと信じている。
かつては人類を遥かに凌駕する文明で世界を支配していたが、じきにエターナルズとの戦争に突入。
最終的にエターナルズに呼び出されたセレスシャルズの手によって滅ぼされ、僅かな数が現代まで生き延びた。
その後、再びセレスシャルズの接近を感じ取るとデヴィアンツの将軍クロに率いられたデヴィアンツはこれを阻止しようと活動を開始。
人間の恐怖心を煽ってセレスシャルズを攻撃させようと、ニューヨークなどに攻撃を仕掛け始めた。
突然変異によってもたらされた超人的能力を備える者も一定数いるが、ほとんどの場合、エターナルズの能力には遠く及ばない。
また、一説によるとデヴィアンツはセレスシャルズが惑星を訪れた際におやつ感覚で摂取するために生み出されたとも言われている。
5.ソーとエターナルズ
エターナルズはこれまで幾度もアベンジャーズを始めとしたマーベル・ユニバースの面々と行動を共にしている。
とりわけエターナルズと関係が深いのは同じ神的な立場にあるソーだ。
かつてセレスシャルズが人類に3度目の裁定を下すため1000年前の地球へやってきた際、ソーの父オーディンは彼らが人類、ひいてはアズガルドに災いをもたらすことを憂慮し彼らを迎え撃とうとしたが、エターナルズの制止に加え、圧倒的な力量差を前に矛を収めた(なお、ソーもこの時エターナルズと遭遇しているが覚えられては不都合だからと記憶を消されていた)。
時は移って現代、セレスシャルズが人類に4度目の裁定を下すため現代の地球へやって来た。
オーディンはこの日のために用意していた”デストロイヤー”の鎧に精神を移すと、剣”オーバーソード”を手に取り、改めてセレスシャルズを迎え撃つ。
このときばかりはエターナルズも人類に対する愛情からオーディンに協力し、精神を融合したユニ・マインドとしてかつての主人に反逆を試みた。
・・・が、セレスシャルズはこれを赤子の手を捻るがごとく撃退。
オーディンやエターナルズは全滅してしまう。
戦いに遅れて駆けつけたソーも一矢報いようと果敢に立ち向かうが敗北してしまう。
そんな彼の前に現れた1人の女性。
彼女は地球の女神”ガイア”を名乗り、全人類の中から選りすぐった12人をセレスシャルズに献上する。
結果、セレスシャルズは人類の進化と地球の発展に満足し、4度目の裁定を終え去っていった。
ちなみにガイアの正体はアズガルドより古の時代に存在した神々の最後の生き残りであり、強い息子を欲しがったオーディンと男女の契りを交わしたソーの真の母親(とされている。今のところは)。
6.サノスとエターナルズ
MCU 最大の敵役としてヒーロー達を圧倒してみせたサノス。
土星の衛星タイタン出身の彼だが、実はエターナルズの血を引く。
もっといえば、その家系は地球に遡ることができる。
かつて地球のエターナルズは人類の処遇などを巡って2つの派閥に分かれ、内戦状態に陥っていた。
それぞれのリーダーにして兄弟でもあるクロノスとユラノス。
やがてクロノスが勝利すると、ユラノスと彼の配下は地球を去りタイタンへやってくると新たな居住地を築く。
(後にタイタンに根ざしたユラノス派の一部が再び地球を襲撃しようとしたところ、渡航中にクリー人と遭遇したり、天王星に逃げ延びたり、捕まったエターナルズに実験したクリー人がそのデータを元に地球へ行ってインヒューマンズを作ったりするがそれはまた別の話)
一方、地球のエターナルズはクロノスが治めていたが、科学者でもあった彼はある日実験に失敗し肉体を失ってしまう。
ユニ・マインドによって新たな統治者としてクロノスの息子ズラスが選出されると、もう1人の息子で統治者候補でもあったアラースは父の代のような同族の内紛を避けるためタイタンへ移住した。
そこでアラースが出会ったのがスイ=サン。
彼女はかつてタイタンへやってきたユラノス派の血を引いていたが、同族は内戦により全滅。
彼女1人だけが生き残った。
アラースとスイ=サンは恋に落ち、二人はタイタンの再興に務める。
やがてスイ=サンはアラースとの間に子をなし、生まれたのがサノスである。
ただ、サノスはエターナルズの中にあったデヴィアンツの遺伝子が発現してしまったため、醜い容姿をしていた。
母スイ=サンは慄きサノスを殺害しようとするも、アラースによって止められる。
サノスは長らく平和主義者だったが、徐々に過激な思想に取り憑かれていき現在に至る。
7.エターナルズの今
近年、天敵である"ホード"という存在に侵食されて正気を失ったセレスシャルズ、通称”ダーク・セレスシャルズ”が地球に襲来。
その中でエターナルズは自分達の役目が人類の進化を見守り保護するのではなく、人類をホードに有効な生物兵器として使用するための管理栽培であったことを知らされる。
守護者であることを誇りに思い、人類を愛するようになっていたエターナルズの面々はこの事実に絶望。
狂気のあまり自決し、全滅してしまう。
(詳しくはこちらで)
だが、エターナルズに死は存在しない。
ザ・マシンによって蘇生したエターナルズは精神も矯正され、安寧を取り戻したかのように見えるが・・・。
8.代表的なエターナルズ
イカリス
シリーズ通しての案内役兼主人公。
考古学者のダニエル・ダミアンと彼の娘マーゴにカメラマンを装い接近し、セレスシャルズの遺跡を発掘。
コズミック・ビーコンを作動させ、セレスシャルズを地球に招くと同時、それを妨害しようとするデヴィアンツから人類を守った。
他のエターナルズが記憶を失った中、ただ1人記憶を一部保持しており、同族を復活させるため奔走した。
飛行能力に長けており、他の追随を許さない。
総合的実力についてもズラスに続くナンバー2だと言われている。
ちなみにギリシア神話に登場する”イカロス”は自分の息子で、彼が死亡した後、自らも改名した(元の名前はダイダロス)
ズラス
同族で最大の実力を有するエターナルのリーダー。
父でありかつての統治者だったクロノスが事故で肉体を失った後、精神融合体ユニ・マインドを形成する力を証明。
新たな”エターナル・プライム”に選出された。
セレスシャルズが現代の地球へやってきた際には、人類を憂うオーディンに同調し他のエターナルズとユニ・マインドとしてかつての主人に戦いを挑むが敗北する。
他のエターナルズがすぐに肉体を取り戻す中、自身は娘のセーナにリーダーの座を譲り、思念体として同族を見守っていたが近年になり肉体を取り戻す。
サノスの父であるアラースとは兄弟関係にあるため、サノスのおじにあたる。
セーナ
ズラスの娘。
イカリスと共にニューヨークをデヴィアンツの攻撃から救うため奔走した。
オーディンと共闘してセレスシャルズに立ち向かった結果肉体を失ったズラスからエターナル・プライムの座を継ぐが、父を失った悲しみやクロに仕掛けられた装置などの影響から同族をまとめきれず、最終的にイカリスに称号を譲った。
デヴィアンツの将軍クロと一時恋愛関係にあり、二人の子供を産んだものの、脳内にデヴィアンツのインプラントを仕掛けられていたと知り激高した。
セルシ
頭脳明晰なエターナルズ。
物質操作に長けている。
アベンジャーズの一員として活動した時期もあり、同じくチームメイトのデイン・ウィットマンことブラック・ナイト、それにインヒューマンのクリスタルと三角関係になった。
しかし、やがてエターナルズ特有の病であるマード・ウィリィに侵されてしまい、心の安定を失ってしまう。
イカリス達は彼女の肉体を一度破壊することでこれを治癒しようとするも、セルシやアベンジャーズに拒絶される。
後に、彼女の狂気はプロクターというヴィランによる精神攻撃のせいだと判明。
解放された後もその影響を恐れたセルシは別次元の世界へ渡ることを決意し、彼女に連れ添うことを決めたデインと共に世界を後にした。
後に戻ってくる。
ちなみにデイン・ウィットマンことブラック・ナイトは『アベンジャーズ / エンドゲーム』でも一時登場するのではないかと話題になったが、さて今回の『エターナルズ』では・・・?
スプライト
少女の姿をしたエターナルズのトリックスター的存在。
知恵が回り、幻影を見せるなどの能力に長ける。
子供の姿のままでいることに不満を抱き、ザ・マシンを壊そうとした罪で幽閉されていたが、最近解放された。
その時の記憶は失っているようだが・・・?
9.これから読む方へ
エターナルズに関するマーベル作品を読みたいのであれば、大きく分けて3つの入口がある。
1976年版
ジャック・カービィによる最初のシリーズ。
エターナルズの活躍を原点から読みたいという方はこちらから。
本シリーズ自体はあまり他のマーベルキャラクターと関わらない。
打ち切りもありストーリーも中途半端に終わるものの、後に THOR の THE ETERNALS SAGA (上記)で伏線回収されるため、ソーとの絡みを読みたい方も本シリーズから読むのがおすすめ
2006年版
ニール・ゲイマンとジョン・ロミータJRによるシリーズ。
何者かにより記憶を消されていたエターナルズ達が再び人類の守護者として目を覚ます。
煩雑になってしまった設定の再構築を試みた本作によりエターナルズの再評価が進んだ。
MCU の映画もここからインスパイアされるのではないかと目されている。
2021年版
今年1月に始まったばかりのキーロン・ギレンとエサド・リビックによる新シリーズ。
ダーク・セレスシャルズ襲来により主人の欺瞞と自分達の真の役割を知って絶望のあまり自死したエターナルズ。
ザ・マシンによって復活したものの、目的を失った彼らの今後は・・・。
1976年版、2006年版と比べ、比較的マーベル・ユニバースの一部としての面が強調されてるかも。
以上、エターナルズに関する紹介でした。
映画が待ちきれないという方は是非原作コミックをチェックしてみて下さい。
それでは本日も良いコミックライフを!
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