今月から4週連続で刊行されるミニシリーズ『ジャスティス・リーグ:ノージャスティス』。
『ダークナイツ:メタル』でその世界観を大きく広げたDCユニバースにとって新たな幕開けとなるこの作品は、これまでDCを読んでこなかった人も大歓迎の特別篇。
そこで今回は応援する意味も込めて、このDCの最新ビッグウェーブに関してざっと解説してみたいと思う。
以下、説明の都合上『ダークナイツ:メタル』等のネタバレも含むのでご注意を。
1. さらに広がったDCユニバース
まずは現状を確認しよう。
これまで「DCユニバース」という世界観は、52のそれぞれ独立したマルチバースと呼ばれる世界が銀河の果てにある「ソース・ウォール(根源の壁)」という境界に包まれた球状構造をしていると思われてきた。
ソース・ウォールを最外殻にした球が52のマルチバースを内包している図の一部
だが先日の『ダークナイツ:メタル』において、マルチバースには反転状態のダーク・マルチバースと呼ばれる闇の世界群が存在していることが判明した(なおマルチバースとダーク・マルチバースは互いに共鳴し合う関係にあるらしく、例えば”アース1”と”アース−1”には共通点が多い模様)。
Dark Nights: Metal: Deluxe Edition
このダーク・マルチバースの軍勢によって壊された世界を元の姿に戻すため、バットマンらヒーロー達は装着者の思いのまま物質を破壊・生成できる特殊な金属を用いて世界を再構築したが、それと同時に自分達の深層心理に隠れていた暗部までをも解き放ってしまった。
のみならず、再構築の力がマルチバース全体に及んだことでソース・ウォールが壊れ、その向こう側にもっと大きな世界が広がっていることまで明らかとなったのである。
つまり今回の一件により、内側に新たな脅威を抱え、外側に未知の領域が広がる新世界が誕生したというわけだ。
2. ミニシリーズの概要
上のような状況が生まれたことから内外の脅威に備える必要性を感じたジャスティス・リーグはメンバーを増やすことを決め、今回のミニシリーズ『ジャスティス・リーグ:ノージャスティス』はその直後に起こった事件となる。
現在DCから発表されているあらすじによると…
突如地球にやって来た機械生命体ブレイニアック。彼はジャスティス・リーグに対し、ミステリー(謎)・ワンダー(不思議)・ウィズダム(知恵)・エントロピー(熱力学的不可逆性?)という宇宙の4大エネルギーから成る4つの存在が地球を侵食するべく向かってきていると警告する。ことの重大さを鑑みたヒーロー達は4つのチームに分かれてこの脅威に立ち向かう。
…という、何やらギャラクタスな内容になるようだ。
DCの公式発表:
HOLLYWOOD REPORTERが行ったクリエイターへのインタビュー(各号のカバーアートを見ることができる):
3. 4つのチーム — 各チームのメンバー編成と見どころ —
この4つの恐るべき存在に対抗するため、ヒーロー達はジャスティス・リーグ、ティーン・タイタンズ、そして諸々のアンチ・ヒーロー達を集めて4つの混成チームを作る。
まずはCBRが公開した各チームの立ち絵をご覧あれ:
チーム”ミステリー”
・スーパーマン
・マーシャン・マンハンター
・スターファイアー
・シネストロ
・スターロ
全員が宇宙人というメンバー編成からしてこのチームの活動が大気圏外を主とすることはほぼ間違いない。
まず、New52では長らくジャスティス・リーグから不在だったマーシャン・マンハンターことジョン・ジョーンズが本格的にチーム復活を果たすのは嬉しい。
一方、地球のことなどどうでも良さそうなシネストロとスターロがどのような理由から共闘に応じているのかわからず不安要素となりそうだ(前者はグリーン・ランタンの不在と何か関係があるのかも)。
とりわけ『ダークナイツ:メタル』において復活した上、パワーアップまでしたスターロの存在が異彩を放っている。ジャスティス・リーグの初めての敵であるこいつがいかなる番狂わせをもたらすのか気になるところだ。
チーム”ワンダー”
・ワンダーウーマン
・ザターナ
・デーモン
・レイヴン
・ドクター・フェイト
オカルトや魔術といったミスティック方面に長けている5人。『ダークナイツ:メタル』でやられたと思っていたフェイトもひとまず復活しているらしい(追記:後から『DK:M』#6読み返したら既に復活してましたわ)。
最近大人たちに混じって活躍することが目立ってきたレイヴンや、牙を剥いて詩を吟じるデーモンといった個性的な面々がどんな立ち回りを演じるのかが気になるところ。
あと、ワンダーウーマンとザターナの存在によるものか、ぱっと見4チーム中最も安心感が漂うチームでもある。
個人的にザターナのデザインはグッジョブだと思います。
チーム”ウィズダム”
・フラッシュ
・ハーレイ・クイン
・ロビン
・アトム
・サイボーグ
科学系チーム。実は天才心理学者としての顔も持つハーレイ・クイン含め、全員が頭脳派な5人。不協和音とかほぼなさそう。
今回メイン・ライターを務めるスコット・スナイダーは、自身も科学に対して造詣が深く、それをベースにした知的アクションをこれまで度々描いてきた。『ノージャスティス』でも専門用語が飛び交い、パズルを解くような戦略的活躍が期待できそうだ。
ロビンが誰になびくかという点にも注目したい。
チーム”エントロピー”
・バットマン
・ロボ
・デスストローク
・レックス・ルーサー
・ビースト・ボーイ
胃が痛くなりそうな職業的プロフェッショナル集団。プライドの高そうな大人連中がそれぞれの正義感を振りかざし互いにいがみ合う展開は必至で、ビースト・ボーイの明るさが身に沁みることでせう。どうしてこうなった…。
チームプレーをしている姿は全く想像できず、あるとすればどこぞの公安9課みたいに「スタンドプレーから生じるチームワーク」だけかと(逆にそれがいいという見方もあるけど)。
そういう意味でも唯一全員と(辛うじてだが)やっていけそうなビースト・ボーイがどんな役割を果たすのかに期待したい。
この4つのチームがDCユニバースの各地へ散らばった先でどのような戦いを見せてくれるのかは勿論のこと、新たな脅威が一体全体いかなるものなのか、そしてただ警告しに来ただけとは思えないブレイニアックの真の目的が何なのか — 直球のスーパーヒーローストーリー『ジャスティス・リーグ:ノージャスティス』を見逃すな!